障害者雇用で使える助成金・補助金|障害者採用・職場環境整備の支援制度ガイド2025
障害者を雇用する事業主には、採用時の費用補助から職場環境整備、職場定着まで、目的別にさまざまな助成金・補助金が用意されています。2024年4月に法定雇用率が2.5%へ引き上げられ、2026年7月にはさらに2.7%への引き上げが予定されている中、制度を正しく理解して活用することが企業にとって重要な課題となっています。本記事では、2025〜2026年度版として最新の助成金制度の種類・金額・申請方法・注意点を具体的な数値とともに解説します。
制度の全体像|障害者雇用納付金制度とは
障害者雇用の助成金・補助金の多くは、「障害者雇用納付金制度」を財源としています。これは、障害者を雇用することは事業主が共同して果たすべき社会連帯責任であるという理念のもと、事業主間の経済的負担を調整するために設けられた仕組みです。
常時雇用する労働者数が100人を超える事業主が法定雇用率を未達成の場合、不足する障害者数1人につき月額50,000円の納付金を納めます。この納付金を原資として、障害者を雇用している事業主に対して調整金・報奨金・各種助成金が支給されます。
令和6年4月1日からは、多くの助成金の管轄が独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に移管され、申請先は各都道府県支部の高齢・障害者業務課となっています。また、令和7年4月1日からは電子申請にも対応しています。
| 区分 | 対象 | 金額 |
|---|---|---|
| 障害者雇用納付金 | 常時100人超・法定雇用率未達成の事業主 | 不足1人につき月額50,000円を納付 |
| 障害者雇用調整金 | 常時100人超・法定雇用率超過の事業主 | 超過1人につき月額29,000円(年120人月超は23,000円) |
| 報奨金 | 常時100人以下・一定数超過雇用の事業主 | 超過1人につき月額21,000円(年420人月超は16,000円) |
対象者の範囲|どの障害が助成金の対象になるか
障害者雇用率制度では、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の所持者が算定対象となります。一方、助成金については手帳を持たない方でも対象となる場合があります。
- 身体障害者手帳の所持者
- 療育手帳の所持者
- 精神障害者保健福祉手帳の所持者
- 手帳非所持の統合失調症・そううつ病(そう病・うつ病を含む)・てんかんの方
- 発達障害者(一部コースで対象)
- 難治性疾患患者(一部コースで対象)
法定雇用率の変更スケジュール
2024年4月:民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げ。雇用義務の対象は常用雇用労働者数40人以上の事業主。2026年7月:さらに2.7%に引き上げ予定。対象も常用雇用労働者数37.5人以上の企業に変更。
主要な助成金の種類と金額一覧(2025年度)
障害者雇用に活用できる主な助成金は、採用時・職場環境整備・職場定着の3つの場面に分けて整理できます。企業規模(中小企業か否か)によって支給額が異なる点が特徴で、中小企業の方が高い補助率・補助額に設定されています。
| 助成金名 | 主な対象 | 支給額(中小企業) | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 障害者を継続雇用として雇い入れた事業主 | 短時間労働者以外:120〜240万円 | ハローワーク・労働局 |
| 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | 発達障害者または難治性疾患患者を雇い入れた事業主 | 120万円(大企業は50万円) | ハローワーク・労働局 |
| 障害者トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | 精神障害者をトライアル雇用した事業主 | 月最大8万円×3か月、その後月最大4万円×3か月(最長6か月) | ハローワーク・労働局 |
| 障害者トライアル雇用助成金(精神障害者以外) | 精神障害以外の障害者をトライアル雇用した事業主 | 月最大4万円×最大3か月 | ハローワーク・労働局 |
| 障害者短時間トライアルコース | 短時間でトライアル雇用した事業主 | 月最大4万円×最大12か月 | ハローワーク・労働局 |
| 障害者作業施設設置等助成金(第1種) | 作業施設を整備した事業主 | 1人につき最大450万円(同一事業所・同一年度上限4,500万円) | JEED都道府県支部 |
| 障害者作業施設設置等助成金(作業設備) | 作業設備を整備した事業主 | 1人につき最大150万円 | JEED都道府県支部 |
| 障害者介助等助成金(職場介助者の配置) | 職場介助者を配置した事業主 | 上限月額15万円(支給期間10年間) | JEED都道府県支部 |
| 障害者介助等助成金(職場介助者の委嘱) | 職場介助者を委嘱した事業主 | 委嘱1回あたり上限1万円(年間限度額あり) | JEED都道府県支部 |
短時間労働者の場合
障害者作業施設設置等助成金において、短時間労働者(週所定労働時間20時間未満)を雇用している場合の支給上限額は、通常の半額となります。雇用形態を確認したうえで申請額を試算してください。申請フロー|採用から受給までの流れ
助成金の種類によって申請先・タイミングが異なります。特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金で代表的な流れを確認します。
特定求職者雇用開発助成金の流れ
- ハローワークに求人を申し込み、対象となる障害者を紹介してもらう
- 雇用開始(ハローワーク経由の採用であることが必須要件)
- 雇用開始から6か月ごとに支給対象期を区切り、期ごとに支給申請書を提出
- 初回支給は雇用開始から6か月後が目安(支給決定から口座入金まで一定期間を要する)
トライアル雇用助成金の流れ
- ハローワークでトライアル雇用の対象者を紹介してもらう
- トライアル雇用開始日から2週間以内に実施計画書をハローワーク・労働局に提出
- トライアル雇用終了後、2か月以内に支給申請書を提出
- 審査・支給決定
JEED系助成金(作業施設・介助等)の流れ
- JEED都道府県支部に事前相談・受給資格等認定申請を行う
- 認定を受けた後、施設整備や介助者配置を実施
- 各助成金ごとに定められた期間内に支給請求手続きを行う
令和7年4月から電子申請が可能に
令和7年4月1日から、一部の助成金について電子申請での手続きが可能になりました。窓口に出向く手間が省けるため、事前に対応している助成金の種類をJEEDまたはハローワークで確認してください。地域別の補助金制度(都道府県独自の支援)
国の制度に加えて、各都道府県が独自に補助金・助成金制度を設けているケースがあります。国の制度と併用できる場合もあるため、所在地の都道府県の制度を必ず確認してください。
| 都道府県 | 制度名 | 概要 |
|---|---|---|
| 東京都 | 中小企業障害者雇用支援助成金 | 国の特定求職者雇用開発助成金の助成対象期間が満了した後、都独自に賃金助成を実施。都内の中小企業が対象。 |
| 神奈川県 | 精神障害者職場指導員設置補助金 | 精神障害者を雇用し職場指導員を設置した中小企業(常時40人以上100人未満)に、1事業所あたり1年目は月額3万円、2〜3年目は月額2万円を支給。 |
| 愛知県 | 中小企業応援障害者雇用奨励金 | 2017年度創設の独自制度。障害者雇用を促進する中小企業を対象に奨励金を支給。 |
助成金以外の支援制度・サービス
金銭的な助成金だけでなく、障害者の職場定着を支援する現物給付型・サービス型の制度も活用できます。
| 支援制度 | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| ジョブコーチ(職場適応援助者)支援 | 職場にジョブコーチの派遣を受け、業務遂行能力・コミュニケーション能力の向上支援や職場環境改善の助言を受けられる | 無料 |
| 機器の無料貸出 | 障害者雇用の開始時・拡大時に活用できる機器の貸出。貸出期間は基本6か月以内(最大6か月延長可) | 無料 |
| 在宅就業障害者支援制度 | 従業員100人未満の企業が在宅就業障害者に仕事を発注する場合、報奨金の支給対象となる | — |
| 地域障害者職業センター | JEEDが運営する専門機関(全都道府県に1か所)。職業評価・職業準備支援・職場復帰支援を提供 | 無料 |
申請時の注意点とよくある失敗パターン
申請期限の厳守
助成金の申請は期限を1日でも過ぎると受け付けられません。たとえばトライアル雇用助成金では、雇用開始日から2週間以内に実施計画書を提出しなければならず、これを怠ると助成金全体が不支給となります。雇用開始前にスケジュールを確定してください。ハローワーク経由採用が必須の場合がある
特定求職者雇用開発助成金など一部の助成金は、ハローワーク経由での採用が支給要件です。自社の採用サイトや求人媒体で直接採用した場合は対象外となります。採用活動を始める前に要件を確認することが不可欠です。その他の主なチェックポイント
- 書類の事前整備:就業規則・労働条件通知書・雇用契約書など多数の書類が必要。支給要領を事前に確認し漏れなく準備する
- 雇用継続期間の確認:多くの助成金は継続雇用が前提。途中で雇用を終了すると支給が打ち切られるだけでなく、返還を求められるケースがある
- 合理的配慮の義務化:障害者雇用促進法・障害者差別解消法により、合理的配慮の提供は事業主の義務。助成金を活用しながら適切な配慮を行う必要がある
- 職場定着の取組み:支援担当者を置いて相談しやすい環境を整える、定期的に配慮の適切性を評価するなどの取組みが定着率向上に有効
- 地域の補助金の確認:国の制度だけでなく、都道府県独自の補助金制度も併せて確認する
2025〜2026年度の主な制度変更点
2024年度以降、障害者雇用に関わる制度は複数の重要な変更が行われています。
| 時期 | 変更内容 |
|---|---|
| 令和6年4月 | 法定雇用率を2.3%から2.5%に引き上げ。人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)を「障害者能力開発助成金」に改名しJEEDへ移管。職場支援員配置助成金について、週10〜20時間未満の精神障害者の支給限度額を月7,500円(中小企業は月10,000円)に改正。 |
| 令和7年4月 | 助成金の電子申請が開始。 |
| 令和8年7月(予定) | 法定雇用率を2.5%から2.7%に引き上げ。雇用義務の対象が常用雇用労働者数40人以上から37.5人以上に変更。 |
| 今後の検討課題 | 手帳を持たない難病患者の雇用率算定への組み込み検討。精神障害者の「重度」区分新設の検討。障害者雇用の質向上に向けた指針策定。 |
まとめ|障害者雇用助成金活用のポイント
- 障害者雇用の助成金・補助金は採用時・職場環境整備・職場定着の各段階で活用でき、目的に応じて複数制度を組み合わせることが可能
- 中小企業は大企業より高い補助率・補助額が設定されており、特定求職者雇用開発助成金は最大240万円、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースは最大120万円が支給される
- 2024年4月から法定雇用率は2.5%、2026年7月にはさらに2.7%へ引き上げ予定。対象企業も37.5人以上に拡大されるため、早期の対応が重要
- 特定求職者雇用開発助成金などはハローワーク経由の採用が必須要件。採用活動を始める前に申請要件を確認する
- 申請期限の厳守が最重要。トライアル雇用助成金は雇用開始から2週間以内に実施計画書の提出が必要
- 国の制度に加え、東京都・神奈川県・愛知県など都道府県独自の補助金制度も存在するため、所在地の制度を確認する
- 令和7年4月から電子申請が可能となり、手続きの利便性が向上している
- 不明点はハローワーク、JEED都道府県支部、地域障害者職業センターに相談することで適切な案内を受けられる
参考情報
本記事は以下の公的機関・情報源をもとに作成しています。最新の支給額・要件は各機関の公式情報を必ずご確認ください。
- 厚生労働省「障害者を雇い入れた場合などの助成」 (公式サイト)
- 厚生労働省「障害者雇用対策」 (公式サイト)
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度」 (公式サイト)
- JEED「助成金」 (公式サイト)
- 東京都「中小企業障害者雇用支援助成金」 (公式サイト)
- 神奈川県「障がい者雇用に取り組む事業主への支援制度」 (公式サイト)
- 愛知県「中小企業応援障害者雇用奨励金」 (公式サイト)
その他の補助金・助成金については、補助金の検索ページからキーワードや条件を指定して検索することができます。また、補助金ガイド一覧では関連する制度解説記事をまとめています。
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