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「AIをこれだけ使ったのに、リターンが見えない」――Uber幹部の本音と、AI投資の「揺り戻し」

「AIをこれだけ使ったのに、リターンが見えない」――Uber幹部の本音と、AI投資の「揺り戻し」

「AIをどんどん使おう」という掛け声のもと、企業のAI支出は2025年から2026年にかけて爆発的に増えました。ところがここに来て、その流れに静かなブレーキがかかり始めています。きっかけは、配車サービス大手Uberの経営幹部が公の場で漏らした「これだけ使っているのに、見合うリターンが見えない」という本音でした。AIブームの「初期段階の終わり」を象徴するこの出来事は、中小企業がAIに投資するうえでも見逃せない教訓を含んでいます。本記事で、その中身を読み解きます。

発端――「2026年分の予算を、4ヶ月で使い切った」

話の出発点は、UberのCTO(最高技術責任者)であるPraveen Neppalli Naga氏の発言です。同氏は専門メディアThe Informationの取材に対し、「Uberは2026年分のAIコーディングツール(Anthropic社のClaude Code)の予算を、わずか4ヶ月で使い切ってしまった」と明かしました(Fortune)。

背景には、社内でのAI利用の急拡大があります。Uberが約5,000人のエンジニア組織にこのツールを開放したところ、月次の利用率は2026年2月の32%から3月には84%へと一気に跳ね上がりました。エンジニア1人あたりの利用料は月500〜2,000ドル(約7〜30万円)に達し、Naga氏自身もデモで2時間に1,200ドルを消費したといいます。同氏は「必要だと思っていた予算が、もう吹き飛んでしまった。振り出しに戻った」と語っています(Cybernews)。

なぜこうなるのか — この種のAIツールの多くは「使った分だけ課金される(トークン従量制)」料金体系です。便利だから皆が使う → 使うほど請求が膨らむ。「役に立つほど高くつく」という、これまでのソフトウェアにはなかった性質を持っているのです。

出典: Fortune: Uber burned through its entire 2026 AI budget in four months / Cybernews: Uber spends entire 2026 AI budget in 4 months, sees no ROI

COOの告白――「その“つながり”は、まだそこに無い」

この事態を受けて、UberのCOO(最高執行責任者、日々の運営を仕切るトップ)であるAndrew Macdonald氏が、踏み込んだ発言をしました。社内のシニアエンジニアたちと「AIの生産性向上で、どれだけのプロジェクトが前に進んだのか」を議論したところ、たどり着いたのは不都合な事実でした。

本人の言葉です。「そのつながりは、まだそこに無いんですよ」。続けてこう述べています。「暗黙にはより多くのものがリリースされているのかもしれない。でも、『AI使用量が上がったから、消費者向けの機能が25%多く出せている』というふうに、一本の線で結ぶのはとても難しい」(Gizmodo)。

つまり、「AIの使用量(コスト)」は確実に増えているのに、「ユーザーに届いた成果」がそれに比例して増えている、とは証明できない。Macdonald氏は「ユーザーに届ける機能の量に直接の線を引けないのなら、その取引(投資)は正当化しづらくなる」とも語りました。

さらに同氏は、AIの「タダのように感じる」感覚にも触れています。使う側に立つと、次々と使い道を思いついて楽しくなり、まるで無料のように錯覚してしまう。しかし最終的にその請求書を支払うのは会社です。Uberでは、CEO(最高経営責任者)のDara Khosrowshahi氏が決算説明会で「AI投資を吸収するために採用を絞っている」と明言し、新たにコミットされたコードの約10%はすでに自律型AIエージェントが書いている、とも説明しました(AOL/Reuters)。

出典: Gizmodo: AI Investment Is 'Harder to Justify' as Productivity Returns Lag, Uber COO Says / AOL/Reuters: Uber CEO says the company is slowing hiring as it invests in AI

Uberだけではない――広がる「揺り戻し」

注目すべきは、これがUber一社の悩みではないという点です。2026年に入り、「とにかくAIを使え」という空気に対する見直しが、各社で同時多発的に起きています。

Microsoftは、Windowsやオフィス製品を担う「Experiences + Devices」部門で、外部ツールであるClaude Codeのライセンスを2026年6月末までに打ち切り、自社のGitHub Copilot CLIへ切り替えると社内に通達しました。理由は皮肉なもので、Claude Codeがあまりに人気を集め、従量課金でコストが膨らんだためと報じられています。自社ツールは1席あたり月39ドルの定額、一方の従量制ツールは「使うほど高くなる」――この差が判断を分けました(Windows Central)。

学習アプリのDuolingoでは、もっと根の深い問題が表面化しました。同社はいったん「人事評価に従業員のAI使用量を組み込む」と決めましたが、現場から「これは使うために使うことになっていないか?」という疑問が噴出し、方針を撤回したのです。CEOのLuis von Ahn氏はこう振り返ります。「実際の成果で評価する代わりに、AIをとにかく押し付けようとしているように感じた。中には、明らかに合っていないケースもあった」(Fortune)。

tokenmaxxing(トークン最大化)の終わり — 「AI使用量を最大化すること自体が正義」という風潮は、業界でtokenmaxxingと呼ばれていました。Uber・Microsoft・Duolingoの動きは、その風潮が「使う量」ではなく「生んだ成果」を問う方向へと、揺り戻しに入ったことを示しています。

出典: Windows Central: Microsoft cancels Claude Code licenses, shifting developers to GitHub Copilot CLI / Fortune: Duolingo CEO backs off from evaluating employees on their AI usage

中小企業が学べること――「使った量」ではなく「成果」で測る

「Uberや巨大IT企業の話でしょう」と思われるかもしれません。しかし、ここにある教訓はそのまま中小企業のAI導入に当てはまります。むしろ、潤沢な予算を持たない中小企業こそ、この「揺り戻し」から学ぶべきことが多いのです。

最大のポイントは、Macdonald氏の言う「使用量」と「成果」を混同しないことです。AIの導入を検討するとき、つい「どれだけAIを使っているか」を成果のように感じてしまいます。けれど本当に問うべきは、「それで売上が増えたか」「残業が減ったか」「顧客の満足度が上がったか」という、ユーザーや経営に届いた結果です。

つい見てしまう指標(使用量) 本当に見るべき指標(成果)
AIツールの利用回数・契約数 削減できた作業時間・人件費
生成した原稿・資料の本数 実際に成約・販売につながった数
「とりあえずAIを使ってみた」件数 顧客満足度・リピート率の変化

もうひとつの注意点は、従量課金(使った分だけ課金)の料金体系です。AIツールは「役に立つほど高くつく」性質があり、定額のつもりで導入したつもりが、利用が広がるほど月額が膨らむことがあります。導入前に料金体系を確認し、「いくらまでなら、どんな成果が見込めるか」の目安を先に決めておくことが、Uberのような「予算の早期枯渇」を防ぎます。

  • 目的を先に決める — 「AIを使うこと」ではなく「何の数字を改善するか」を導入前に明確にする
  • 料金体系を確認する — 定額か従量制か。従量制なら上限の目安を決めておく
  • 小さく試して成果で判断する — まず一業務で導入し、成果が出たら広げる。出なければ潔くやめる

まとめ

Uberは2026年分のAIコーディングツール予算をわずか4ヶ月で使い切りました。にもかかわらずCOOは「AIの使用量とユーザーに届く成果を、まだ一本の線で結べない」と告白。MicrosoftはコストからAIツールを切り替え、Duolingoは「AI使用量での人事評価」を撤回しました。「とにかく使え」というtokenmaxxingの風潮は、いま「成果を問う」方向へ揺り戻しています。

この記事を書いた人

松田信介
松田 信介 Shinsuke Matsuda

X-HACK Inc. 代表取締役 / PARKLoT CTO

Microsoft for Startups Founders Hub 採択

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