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ナフサ危機が中小企業を直撃、食品企業4割が打撃を受ける実態

ナフサ危機が中小企業を直撃、食品企業4割が打撃を受ける実態 - ニュース - 補助金さがすAI

中東危機に端を発したナフサ(粗製ガソリン)不足は、単なる一時的な価格上昇ではありません。プラスチック容器やフィルムの供給が物理的に途絶える事態が起きており、食品企業の4割がすでに業績への打撃を受けています。この危機がサプライチェーン全体にもたらす影響と、中小企業が今すぐ実行すべき対策をまとめました。

ナフサ危機とは何か、なぜ今これが起きているのか

ナフサ(粗製ガソリン)は、石油から生成される基礎化学原料です。プラスチックやゴムの製造に不可欠な素材であり、プラスチック容器、食品包装、ビニール袋、自動車部品など、あらゆる産業で使用されています。

2月28日に中東での軍事衝突が始まったことをきっかけに、世界的なナフサ供給が逼迫しました。シンガポール市場のナフサスポット価格は2月27日の約614ドル/MTから、3月25日には1,000ドル/MTまで急騰。4月1日時点でも917ドル(約14万5,800円)と、わずか5週間で60%以上の価格上昇を記録しています。

重要な点は、これが「価格の問題」ではなく「供給の問題」だということです。高い値段を出しても、物理的にナフサが市場に出回らないため、代替手段がほぼ存在しません。

なぜナフサの代替となる材料が存在しないのか

「価格が上がるなら別の原料に切り替えればいい」と思うかもしれません。しかしナフサからの脱却は、技術・コスト・産業構造という3つの壁に阻まれており、短期間での代替は事実上不可能です。今回の危機が「供給の問題」となっている根本理由でもあります。

1. 日本の石油化学はナフサに極端に依存している
米国はシェールガス由来の安価なエタンを、中東は天然ガスを原料にエチレンを生産しています。一方、日本のエチレン生産はその大半をナフサに依存している構造で、米国・中東・中国とは原料調達の前提が大きく異なります。エタン原料に切り替えるには専用クラッカー、低温貯蔵タンク、輸入受入インフラが必要で、転換には数千億円規模の投資と数年単位の工期がかかります。

2. エタンに切り替えても「副生成物」が足りなくなる
ナフサを分解するとエチレンに加えて、プロピレン・ブタジエン・芳香族化合物(ベンゼン・トルエン・キシレン)が同時に得られます。これらは合成ゴム、ペットボトル、塗料、医薬品、繊維など幅広い用途で使われますが、エタン分解ではほとんど生成しません。エタン化は「エチレン以外の基礎化学品の供給がさらに細る」という別の問題を生んでしまうため、単純な置き換えにはなりません。

3. バイオナフサは価格が1.5~2倍、生産量も限定的
植物油や廃食用油から作るバイオナフサ(リニューアブルナフサ)は技術的には実用段階にあります。しかし製造コストは従来ナフサの1.5~2倍とされ、世界全体の生産能力も需要のごく一部にとどまります。緊急の供給不足を埋められる量ではなく、商用化に向けた製造設備の整備もまだ途上です。

4. 紙やバイオプラスチックなどの代替素材も短期では使えない
紙容器やバイオマスプラスチックも候補にはなりますが、耐水・耐油・耐熱性能、食品衛生法への適合、加工機の改修、原料となるトウモロコシ・サトウキビの調達量など複数の制約があります。日本のバイオプラスチック普及率は数%程度にとどまっており、一斉に切り替えれば原料側の供給が破綻します。短期間で容器の供給ギャップを埋めることはできません。

つまり、ナフサ危機は「価格が上がれば自然に代替に流れる」という通常の市場原理が働きにくい構造的な問題です。供給回復までの数か月~1年は、企業が在庫戦略・値上げ交渉・調達多元化などの自衛策を講じる以外に選択肢がほぼ存在しないというのが、専門家の共通する見方です。

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数値で見る危機の規模:価格上昇と供給制限

業績への影響は深刻です。調査対象122社のうち約4割が業績予想の下方修正を検討・実施しており、純利益の減少額は合計1,250億円に達するとも試算されています。

製品カテゴリ 価格上昇幅 実施時期
業務用ラップ 35%以上 5月納入分から
プラスチック容器 30%以上 6月納入分から
汎用合成樹脂 3割上昇 3月比
ポリエチレン製品 30%以上 2026年5月下旬

家計への波及も深刻です。4人家族の年間負担額は2万2,500円~3万5,100円増加すると試算されており、増加幅は25%~38%にも及びます。

容器が不足する食品企業の対応も緊迫しています。プリンなどの容器不足により、5月上旬から販売休止を検討する企業も出現し始めました。

中小企業への直接的な影響

ナフサ不足は日本標準産業分類の21の産業分類に直接的な影響を与えています。特に打撃を受ける業種と影響度をまとめました。

最もリスクが高い業種(優先順位順)

  • 食品・飲料・外食企業 → 容器がなければ出荷不可。最悪の場合、販売停止に至る
  • 小売・卸売企業 → 仕入コストの急上昇を吸収できず、利益率が急低下
  • 製造業全般 → 自動車部品、家電部品などの供給源が途絶える危険
  • 建設・リフォーム業 → 資材調達の遅延と費用倍増に直面

さらに深刻な問題は「値上げできない構造」です。原料高の局面では、価格改定にタイムラグが生じます。需要が弱い時期には、値上げしたい製造業と受け入れたくない顧客の綱引きが強くなり、結果として中小企業が全てのコスト増を吸収することになります。

在庫の古い仕入値と新規仕入の高値が混在する期間、操業率低下、物流コスト上昇、電力コスト増加が同時に押し寄せ、利益率は急速に悪化していきます。

今後影響が波及しそうな製品・業界

ナフサは石油化学のほぼ全領域の起点となる原料です。容器・包装に続いて、以下の分野でも数か月以内に値上げや供給制限が顕在化する見込みです。自社が直接ナフサを扱っていない中小企業でも、原材料・部材・設備のいずれかの形で影響を受ける可能性があります。

分野 影響を受ける主な製品 想定される影響
自動車・モビリティ タイヤ(合成ゴム・カーボンブラック)、内装樹脂部品、塗料、シート素材 海外大手が夏・冬タイヤ約5%の値上げを先行発表。国内タイヤ各社の追随や補修部品の価格改定が見込まれる
医薬品・医療機器 注射器、輸液バッグ、透析回路、医療用手袋、PTPシート 厚労省・経産省が3月末に確保対策本部を設置。4月半ば~8月に一部品目の出荷難化の懸念
建設・住宅・リフォーム 塩ビ管、断熱材、シーリング材、塗料、接着剤、防水シート、配線用樹脂 塗装工事費が約5~8%増。新築・リフォームの工期遅延と追加見積りリスク
アパレル・繊維 ポリエステル衣料、ナイロン、不織布、合成繊維のカーペット・寝具 秋冬物の調達コスト上昇。低価格帯ブランドの値上げや一部SKUの欠品が現実味
電機・電子 樹脂筐体、コネクタ、ケーブル被覆、絶縁材、半導体封止材 家電・産業機器の部材コスト増。特殊樹脂は調達リードタイムの長期化リスク
日用品・消費財 洗剤・化粧品容器、紙おむつ、ウェットティッシュ、文具、ボトル飲料の容器 店頭価格の改定が夏~秋にかけて段階的に進む見込み
農業・畜産 マルチフィルム、ハウス用ビニール、結束資材、農薬容器、飼料袋 作付けシーズンの資材コスト増。生鮮品価格への二次的な波及の可能性
物流・印刷・サービス ストレッチフィルム、結束バンド、緩衝材、印刷インキ、粘着テープ 梱包資材費の上昇が運賃・印刷費に転嫁。BtoB取引の価格改定要請が増加

帝国データバンクの試算では、国内製造業の約3割でナフサ関連の調達リスクが想定され、二次流通までを含めると4万社超に影響が及ぶ可能性があるとされています。自社が直接ナフサを使っていなくても、サプライチェーンのどこかで石油化学製品に依存していないかを棚卸ししておくことが重要です。

短期と中期の見通し

短期(5月~8月)
汎用樹脂の供給調整が本格化します。ポリエチレンやポリプロピレンを用いた食品袋、トレイ、ペットボトルキャップなどの供給が2~3ヶ月以内に制限される見通しです。

懸念される連鎖反応:

  • ・5月上旬:プリン等の容器限定品が販売休止開始
  • ・5月下旬:ゴミ袋・食品保存袋の値上げが小売店に波及
  • ・6月~7月:外食チェーンの弁当・総菜容器不足が深刻化

中期(9月~2027年3月)
政府は石油備蓄の放出を決め、ホルムズ海峡以外からのナフサ調達を進めています。ただし、供給量が回復しても価格の高止まりは避けられません。化学企業の減産体制が解除されるまでに相応の時間を要し、業界内での「買い占め」競争も激化する可能性があります。

今すぐ取るべき5つの対策

経営を守るための実行リスト

  • 1. 容器・包装材料の在庫戦略を見直す
    2~3ヶ月先の需要を先読みし、新規注文を前倒しして発注。供給制限に備えた緊急在庫を確保する
  • 2. 顧客との値上げ交渉を先制する
    「不可抗力」という位置づけで、実績ベースの値上げ申請を検討。証拠となる仕入レート表を準備する
  • 3. 代替素材の研究を急ぐ
    紙製容器、バイオマスプラスチック、段ボール素材など。納品先に先んじた提案を準備する
  • 4. サプライヤーの複数化
    単一の容器メーカー依存から脱却。2~3社以上の調達先を確保し、リスク分散を図る
  • 5. 生産スケジュールの柔軟化
    容器着荷の遅延に対応できる仕組みを構築。サイズ・仕様の簡素化も検討する

政府の支援制度の確認も重要

経済産業省では、原料高に対応する中小企業向けの補助金や低利融資制度を検討しています。各地域の商工会議所・商工会に相談し、利用可能な制度がないか確認しておくことをお勧めします。

この記事を書いた人

松田信介
松田 信介 Shinsuke Matsuda

X-HACK Inc. 代表取締役 / PARKLoT CTO

Microsoft for Startups Founders Hub 採択

X-HACK Inc. 代表取締役。システムコンサルタントとして中小企業の基幹システム構築・業務設計に携わったのち、自ら起業。小規模ビジネスの立ち上げから黒字化までを複数回経験し、採用・資金調達・補助金申請の実務にも精通。「補助金さがすAI」の開発・運営を通じて、経営者が本当に必要とする情報を現場目線で発信しています。

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