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AI・DX 経営者向け

トランプ氏、国連演説でAIを「スーパーインテリジェンス(SI)」に改称と宣言――国際的なAI規制の枠組みも拒否。日本の中小企業が押さえるべき影響と3つの行動

国際会議場の大理石の台座に据えられた金色に輝く回路模様の脳の彫刻と、その前で古い銘板を外し新しい金色の銘板に付け替える人々を描いたイラスト

トランプ米大統領は2026年9月22日(米国時間)、ニューヨークで開かれた第81回国連総会の一般討論演説で、人工知能(AI、Artificial Intelligence)を今後は「スーパーインテリジェンス(Super Intelligence、SI)」と呼ぶと述べ、米国の公式文書でもこの呼称を使うと宣言しました。理由は「『人工』という言葉では知能が偽物のように聞こえる」ためだといいます。同じ演説でトランプ氏は、AIを規制する国際的な枠組みづくりを「全面的に拒否する」とも表明しました。

呼び名の変更は話題性が先行しがちですが、経営者にとって本当に重要なのは「米国がAIの国際ルールづくりから距離を置き、開発を後押しする姿勢を改めて鮮明にした」点です。本記事では発言内容と事実関係を整理し、日本の中小企業への影響と取り得る行動をまとめます。

⚡忙しい人向けの30秒まとめ

  • ✓トランプ氏は国連演説でAIを「スーパーインテリジェンス(SI)」に改称し、米国の公式文書でも使うと宣言。ホワイトハウスが公開した演説要旨にも「以下、公式に『Super Intelligence』と呼ぶ」との文言がある。
  • ✓同じ演説で、AIを規制する「グローバリスト(国際協調を重視する勢力を批判的に指す言葉)の枠組み」を全面的に拒否し、「抑え込まず、後押しする」と表明。AIのリスク警告を地球温暖化の警告になぞらえて退けた。
  • ✓PBSなどのファクトチェックは「現在のAIは超知能(あらゆる分野で人間を超える能力)の定義に当たらない」と指摘。名称ではなく中身で判断する姿勢が、ツール選定や自社の情報発信でも重要になる。

1. 何が起きたか――「人工」をやめて「スーパー」へ

複数の報道によると、トランプ氏は演説の中で「今後、米国のすべての文書、そして願わくば世界の文書も、『人工(artificial)』ではなく、はるかに正確な『スーパー(super)』という言葉を使うよう改める」と述べました。略称は「SI」で、「より聞こえが良いし、より正確だ」と説明しています。ホワイトハウスが公開した演説の要旨にも、「今話題の人工知能――以下、公式に『Super Intelligence』と呼ぶ――を管理しようとするグローバリストの枠組みを構築するいかなる試みも、米国は全面的に拒否する」という一文が掲載されています。

朝日新聞の報道によると、トランプ氏は演説に先立つ9月19日、自身のSNSで「スペリアー(Superior)インテリジェンス」「エキストリーム(Extreme)インテリジェンス」「スプリーム(Supreme)インテリジェンス」の3案を示して人気投票を行い、「スペリアー」が最も票を集めていました。最終的に採用された「スーパー」は、投票の選択肢には含まれていませんでした。

AI政策に関する主な発言は次のとおりです(報道からの要約・抄訳)。

テーマ 発言の要旨
呼称「人工」では知能が偽物のように聞こえる。今後は「スーパーインテリジェンス(SI)」と呼び、米国の文書で使う
国際規制AIを管理する「グローバリストの枠組み」を全面的に拒否する
産業政策「産業革命より大きくなるものの成長を妨げるつもりはない」「抑え込まず、後押しする」
米中競争「SIを制する者が勝つ」「中国に大きく先行しており、それを維持する」
監視司法省を通じて注視していく
リスク論「温暖化で12年以内に人類が滅ぶと言った人々が、今度はAIが人類を滅ぼすと言っている」

出典:The White House「President Trump at the United Nations: "While Others Have Talked, I Have Acted"」(2026年9月) / 朝日新聞(Yahoo!ニュース)「AIは『SI』に改称、トランプ大統領が宣言『フェイクに聞こえる』」(2026年9月) / AFPBB News「トランプ氏、AIを『超知能』に改称 地球温暖化になぞらえリスク一蹴」(2026年9月23日) / Fox Business「Trump vows to reject 'globalist scheme' to rein in AI, superintelligence」(2026年9月22日)

2. 発言の事実関係――「超知能」の定義とのずれ

米公共放送PBSのファクトチェックは、演説のAI関連の主張を次のように評価しています。

  • 「現在のAIはスーパーインテリジェンスだ」:誤り。専門家の間で超知能(superintelligence)は「ほぼすべての作業・分野で人間を超える能力」を指し、現在のAIは得意・不得意の差が大きい(jagged)とされる。
  • 「中国に大きく先行している」:一部正しいが誇張。モデル性能で米国は先行しているものの、業界関係者の間では中国は数か月遅れにすぎないとの見方がある。
  • 「温暖化を警告した人々がAIの危険を唱えている」:誤解を招く。AIへの警鐘はむしろAnthropic、OpenAI、Google DeepMindなど業界のトップ自身から出ている。PolitiFactもこの主張を「誤り(False)」と判定した。

つまり今回の改称は、技術的な分類が変わったわけではなく、政治的な呼び名の変更です。トランプ政権はこれまでもメキシコ湾を「アメリカ湾」と呼ぶなど、名称変更を政策メッセージとして使ってきました(AFP)。

出典:PBS News「Fact-checking Trump's speech to the 2026 United Nations General Assembly」(2026年9月22日) / PolitiFact「Live fact-check: President Donald Trump speaks to UN General Assembly in New York」(2026年9月22日) / AFPBB News(2026年9月23日)

3. 背景――改称と「国際規制の拒否」はセット

AFPによると、国連の場では欧州を中心とする20か国以上が、AIの安全対策や規制基準の策定を求めてきました。一方で米国と中国はこれを支持していません。今回の演説は、この議論に対して米国が改めて「規制より開発競争」を選ぶと宣言したものといえます。

ここからは筆者の分析です。「人工知能」を「スーパーインテリジェンス(超知能)」と言い換えることは、AIを「管理すべきリスク」ではなく「勝ち取るべき国家の力」として位置づけ直すメッセージとして読めます。「SIを制する者が勝つ」「中国に先行している」という発言と組み合わせると、改称は国際規制の拒否と一体の主張です。Fox Businessは、ベッセント財務長官が米中間のAI「ホットライン」合意案を大統領に示す予定だとも伝えており、米国は多国間の規制ではなく、二国間の取り決めや国内の監視(司法省)で対応する方向性を示しています。

なお、「米国の公式文書で新しい呼称を使う」という宣言が、法令・大統領令・政府調達の文書にどこまで反映されるのかは、まだ分かりません。本記事執筆時点(2026年9月23日)では、具体的な指示文書を確認できていません。法律上の定義がすぐに変わるわけではない点に注意が必要です。

出典:AFPBB News(2026年9月23日) / Fox Business(2026年9月22日) / The White House(2026年9月)

4. 経営者への影響――名称より「ルールの分断」に注目

日本の中小企業にとって、呼び名が「AI」か「SI」かで業務が変わることはほぼありません。影響があるのは次の3点です(筆者の分析)。

論点 想定される影響 影響を受けやすい企業
国・地域ごとのルールの違い米国は開発促進、欧州は安全基準重視という違いが続き、国際的に統一されたルールが遠のく。取引先の所在地によって求められる対応が異なりやすい欧米に製品・サービスを提供する企業、海外企業の下請け
米国製AIツールの提供条件米政府は規制を緩める一方、国家安全保障を理由とした輸出規制などは別の流れで進む。提供条件の変更が政治の影響で突然起きる可能性がある特定の米国製AIに業務を依存している企業
「スーパー」「超知能」の宣伝文句呼称が広まると、実態以上に性能をうたう売り込みが増えるおそれがある。自社の宣伝でこうした表現を使えば、過大表示と受け取られるリスクもあるAIツールを導入・販売する企業、AI活用を宣伝する企業

特定のAIへの依存リスクは、2026年6月に米政府の輸出規制でAnthropicの一部モデルの提供が止まった事例でも表面化しました(関連記事)。「規制緩和」と「安全保障上の規制」が同時に進むのが米国のAI政策の実態であり、名称変更の話題だけで「規制がなくなる」と判断するのは早計です。

5. 取り得る行動――今できる3つのこと

  1. 取引先ごとのAIルールを確認する:欧州や米国の企業と取引がある場合、契約書や調達条件にAI利用の条項(入力データの扱い、生成物の開示など)が入っていないかを確認します。国際的なルール統一が遠のくほど、個別の契約条件が重要になります。
  2. 業務で使うAIツールの選択肢を複数持っておく:主要業務が1社のAIに依存している場合、代わりのサービスや手作業に戻す手順を用意しておきます。政治的な判断で提供条件が変わる可能性を前提にします。
  3. 「名称」ではなく「中身」で評価・発信する:「超知能搭載」などの売り文句に対しては、何ができて何が苦手かを試用で確かめます。自社のサービス紹介でも、根拠のない「スーパー」表現は避け、具体的な機能と効果で説明する方が信頼につながります。

AI活用を事業計画に組み込む際は、ツールの利用料や代替手段の費用も含めて試算しておくと判断しやすくなります。開業や事業計画の数字を確認したい方は開業シミュレーターも活用してください。

まとめ

トランプ氏は国連総会演説でAIを「スーパーインテリジェンス(SI)」に改称し、米国の公式文書でも使うと宣言しました。ファクトチェックでは、現在のAIは超知能の定義に当たらないとされています。改称は、AIを国家間競争の武器と位置づけ、国際的な規制の枠組みを拒否する主張と一体のものです。日本の中小企業にとっては、呼び名そのものよりも、国ごとにAIのルールが分かれていく流れと米国製AIへの依存リスクに備えることが実務上のポイントになります。

参考資料

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