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経営者向け AI・DX トレンド

AIが調査・提案・契約まで担う時代、人間の仕事はどこに残るのか──米国の起業家・投資家6人の答え

多数のAIエージェントが働くオフィスを、一人の経営者が壇上から見守るイラスト

AIが取引先候補の事業内容を調べ、効率化の提案書を書き、営業して契約を取り、導入後も伴走して改善を回す。少し前なら遠い未来の話でしたが、2026年の今、これを「そのうち来る」と語る経営者・投資家は珍しくなくなりました。そのとき人間は何をするのか。この記事では、米国でこの問いに向き合っている起業家・投資家・エンジニアの発言を整理し、日本の中小企業経営者にとっての意味を考えます。結論を先に言えば、「席がゼロになる」のではなく「席の数と中身が変わる」というのが、賛成派と慎重派の双方が収束しつつある見方です。

1. 何が起きているか──「まずAIに聞く」が当たり前になった

「Shark Tank」で知られる投資家 Kevin O'Leary 氏は2026年6月、自身が出資する企業の間で「以前は多くのコンサルタントを使っていた会社が、まずAIに聞くようになった」と語りました。流通戦略や組織設計の検討など、かつて外部に高い費用で依頼していた分析を、経営陣が生成AIで自分たちで回すようになったという現場感覚です。この変化はここ2年ほどで一気に進んだと同氏は述べています。

コンサルティング業界の側にも数字が出ています。McKinsey は2023年の約45,000人から約40,000人へ人員を減らす一方、社内で約12,000のAIエージェントを運用し、AI関連が売上の約4割を占めるようになりました(2025年8月時点の報道)。「まずAIに聞く」のは顧客だけでなく、コンサル会社自身もそうなっているわけです。

日本でも土台は整い始めています。帝国データバンクが2026年3月17日から31日に実施し、全国10,312社から回答を得た調査では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%でした。規模別では大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%と差はあるものの、活用企業の86.7%が「業務に効果が出ている」と答えています。用途の1位は「文章の作成・要約・校正」(45.1%)、2位は「情報収集」(21.8%)で、まさに「調べる・書く」という調査・提案の入口がAIに移り始めています。

出典:VARINDIA「Kevin O'Leary says startups are replacing consultants with AI」(2026年6月22日) / TechRepublic「Elon Musk Weighs In On Consulting Industry's 'Existential' AI Shift」(2025年8月4日) / 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日)

2. 米国の論者はどう見ているか──6人の立ち位置

「AIが調査から契約・伴走まで担う」という未来を、米国の著名な起業家・投資家・エンジニアはどう語っているのでしょうか。前向きに描く人から、強い懸念を示す人まで、6人の発言を並べます。

人物 要点
Kevin O'Leary
投資家
出資先はコンサルより先にAIへ相談する。分析・戦略検討はすでに置き換わりつつある。
Chamath Palihapitiya
起業家・投資家
組織図そのものが変わる。多層の人間の階層ではなく、少数の人間がモデルとエージェントの群れを監督する形になる。
Sam Altman / OpenAI
OpenAI CEO
AIエージェントを長時間自律的に働く「仮想の同僚」と位置づけ、週次レポートや計画立案などの業務を丸ごと任せる製品を展開。
Jensen Huang
NVIDIA CEO
「将来、すべての企業が大量のエージェントを持つ」。NVIDIA は社員約4万人に対し、将来は40万、400万のエージェントが常時稼働すると語る。
Elon Musk
xAI CEO
CEO がコンサルを使う本当の理由は「決めていたことを第三者に裏書きさせ、失敗時に責任を転嫁するため」で、その役割はまだAIには代替できない
George Hotz
ハッカー・エンジニア
コーディングエージェントの全面採用は「この分野で最も高くつく間違いの一つ」になる。もっともらしく見えて中身に欠陥がある成果物を、弱い組織ほど見抜けない。

Palihapitiya 氏の2025年7月の投稿は、今回のテーマに最も近い指摘です。同氏は、今日の企業の組織図は「人間とソフトウェアを組み合わせて仕事を進めるための最適配置」を表しているにすぎず、今後は「人間・モデル・エージェントの協調と実行を監督する仕組み」が会社の生き残りを決めると述べています。会議で足並みをそろえる「調整」ではなく、AIの働きを見張る「監督」が人間の仕事になる、という見立てです。

個人レベルでは、作家・起業家の Nat Eliason 氏が AI エージェントに決済権限まで与えて事業を立ち上げさせ、約2か月で20万ドル近い売上を出したと報じられています。「一人会社」の限界が、人手ではなく監督できるエージェントの数で決まる時代の実験例です。

一方で慎重派の指摘も見過ごせません。Musk 氏の「責任の引受先」という論点は、AIが正しい答えを出せるかどうかとは別の問題です。Hotz 氏の批判も「AIは使えない」ではなく、「見た目がよい成果物を検証なしに受け入れる組織が危ない」という運用への警告です。Fortune は2026年3月、コンサル業界が消えるどころか、AI導入に伴う組織変革や統合の需要で仕事が増えている面を報じています。

出典:Chamath Palihapitiya の X 投稿(2025年7月20日) / TechCrunch「OpenAI is building AI agents for everything」(2026年8月24日) / The Motley Fool「40,000 Employees Today and 4 Million Agents Tomorrow」(2026年9月12日) / The Decoder「George Hotz says coding agents will be one of the most costly mistakes」(2026年5月) / Mixergy「How Nat Eliason's OpenClaw earned $177,417」 / Fortune「AI was supposed to be the end of consultants. It's not happening」(2026年3月17日)

3. 「席がゼロになる」のではなく「席の中身が変わる」──電話対応の実例

抽象的な未来論を、現場の一つに落として考えてみます。中小企業で最も人手が張り付いている業務の一つが電話対応です。一次受付、夜間や休日の対応、外国語での問い合わせ、通話後の要約と顧客管理システムへの入力。これらは「戦略」ではなく「実行」の仕事ですが、AIが席を奪うと言われるとき、実際に最初に変わるのはこの層です。

具体例として、株式会社X-HACKが提供するAIコールセンター支援サービス「ContactX」を見てみます。2026年7月23日に英語・中国語・韓国語など50以上の言語でのリアルタイム書き起こしと日本語要約に対応しました。ここで注目したいのは機能よりも人とAIの分担の線引きです。

AIが担う 定型的な一次受付と振り分け、書き起こし、要約の下書き、管理システムへの入力案の作成、確信度が低い項目のフラグ付け
人が確認・判断する 本人確認、契約に関わる判断、例外対応、クレーム対応、法務・医療などの機微な判断、AIが作った入力内容の最終確認

同サービスは「完全自動化ではなく、人が確認して進める運用」を前提に設計されていると明言しています。つまり電話対応の席をゼロにする製品ではなく、席の数と中身を変える製品です。10本の電話を10人で受けるのではなく、AIが受けて整えた記録を、少数の担当者が確認し、判断が必要なものだけを引き取る。これは Palihapitiya 氏の「少数の人間がエージェント群を監督する」という組織像の、コールセンター版だと言えます。

そして残る人間の仕事は、本人確認・例外・クレーム・契約判断・最終承認です。米国の論者が語る「目標設定、判断、関係性、例外処理、監督」と、ほぼ同じ場所に線が引かれています。業界も製品も、答えの方向は一致し始めています。

出典:PR TIMES「外国語の電話、AIが受けて日本語で記録。AIコールセンター「ContactX」50以上の言語に対応」(2026年7月23日) / ContactX 公式サイト

4. 中小企業経営者にとっての意味──残す仕事を先に決める

日本の中小企業にとって、この話は「人を減らす」文脈ではなく「人が採れない」文脈で読むのが現実的です。帝国データバンクの2026年7月調査(全国10,518社回答)では、正社員が不足していると答えた企業は51.3%で、7月としては4年連続で半数を超えました。AIに席を渡すかどうか以前に、そもそも埋まらない席が半分の会社にあります。

そのうえで、米国の論者と現場の製品が示す方向をまとめると、経営者が考える順番は次のようになります。

  • 残す仕事を先に決める — 目標を決める、最終判断を下す、顧客や取引先との関係を持つ、例外とクレームを引き取る、AIの成果物を確認する。この5つは人に残す前提で設計します。
  • 渡す仕事は「定型で、検証できるもの」から — 調査、下書き、要約、入力、一次対応。結果を人が短時間で確認できる業務ほどAIに向いています。
  • 確認の手順を先に作る — Hotz 氏の警告どおり、危ないのはAIではなく「もっともらしい成果物をそのまま通す運用」です。誰が、何を、どこまで確認するかを決めてから任せます。
  • 「責任の引受先」は残ると割り切る — Musk 氏の指摘するとおり、判断の責任を負う席はAIに移せません。それは経営者自身の席です。

「AIが調べ、提案し、契約を取り、伴走する」未来で、人間が何をするのかという問いに、まだ完全な答えはありません。ただし、残る席の中身については、賛成派も慎重派も、米国の投資家も日本の現場も、ほぼ同じ場所を指しています。未解決なのは、その判断の席が何人分残り、その仕事が十分に意味を持つかという次の段です。ここは経営者一人ひとりが、自社の業務で答えを出していくことになります。

出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(2026年8月17日)

まとめ

「まずAIに聞く」はすでに米国の投資先企業でも、日本の3社に1社でも始まっています。O'Leary、Palihapitiya、Altman、Huang の各氏は、AIが調査・提案・実行の多くを担い、少数の人間がその働きを監督する組織像を描いています。

一方、Musk 氏は「責任を引き受ける役割」が、Hotz 氏は「成果物を検証する目」が人間に残ると指摘しています。AIコールセンターの実例でも、本人確認・例外・クレーム・契約判断・最終確認は人の側に線が引かれていました。

中小企業経営者にできることは、残す仕事を先に決め、検証できる定型業務から渡し、確認の手順を用意することです。席はゼロにはなりません。ただ、その数と中身は変わります。

参考資料

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