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経営者向け ビジネス映画

ソーシャル・ネットワーク|共同創業者の追放と株式希薄化、創業者が学ぶ資本政策の現実

ソーシャル・ネットワーク|共同創業者の追放と株式希薄化、創業者が学ぶ資本政策の現実 - コラム - 補助金さがすAI

2010年公開の映画『ソーシャル・ネットワーク』(監督:デヴィッド・フィンチャー、脚本:アーロン・ソーキン)は、世界最大のSNS「Facebook」がハーバード大学の寮の一室から生まれるまでを描いた作品です。アカデミー賞3部門を受賞したこの映画の本当のテーマは、サクセスストーリーではありません。共同創業者だった親友が会社から追い出され、持株を限りなくゼロに近いところまで薄められていく——その生々しい経緯です。マーク・ザッカーバーグ、最初の資金を出した親友エドゥアルド・サベリン、そして外から現れた起業家ショーン・パーカー。創業期の「お金」と「持分」をめぐる物語は、中小企業の経営者にとっても他人事ではありません。

1. あらすじ——寮の一室から始まった世界最大のSNS

2003年、ハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグは、学内の女子学生をランク付けする悪ふざけのサイトを作って大学から処分を受けます。その騒動が学内で注目を集めたことをきっかけに、彼は学生向けの交流サイト「TheFacebook」を立ち上げます。最初の資金1,000ドルを出したのが、同級生で親友のエドゥアルド・サベリンでした。

サイトはハーバードから他大学へ、そして全米へと爆発的に広がります。サベリンはCFO(最高財務責任者)兼ビジネス担当として広告営業や資金管理を担いました。一方、ザッカーバーグはサービスの拡大に没頭します。

そこに現れたのが、音楽共有サービス「Napster」の創業者ショーン・パーカーです。シリコンバレーの空気を吹き込むパーカーに魅了されたザッカーバーグは、会社の拠点を西海岸へ移し、外部投資家からの資金調達へと舵を切ります。ニューヨークで広告営業に走り回っていたサベリンとの距離は、急速に開いていきました。

映画は、後に起こされた2つの訴訟の証言録取(デポジション)のシーンを軸に進みます。ひとつは、「アイデアを盗まれた」と主張するウィンクルボス兄弟の訴訟。もうひとつは、「持株を不当に希薄化された」と主張するサベリンの訴訟です。親友同士で始めた事業が、なぜ法廷で争うことになったのか。物語はその答えを少しずつ明かしていきます。

(出典: IMDb「The Social Network - Plot」Wikipedia「Eduardo Saverin」

2. 親友が追い出される——株式希薄化のカラクリ

映画でもっとも痛烈に描かれるのが、サベリンの持株が薄められていく場面です。創業当初、サベリンはFacebookの約30%を保有する共同創業者でした。ところが会社が法人として再編される過程で、彼の知らないうちに新株が発行され、彼の持分だけが極端に小さくなっていきます。

カラクリはこうです。会社が新しい株式を発行すると、既存株主の持株比率は薄まります(これを希薄化/ダイリューションと呼びます)。通常、創業者やザッカーバーグら他のメンバーには希薄化を防ぐ仕組みが用意されていた一方、サベリンの株にはそれがなく、彼だけが一方的に持分を削られていったのです。映画では、彼の持株がわずか数パーセントまで落ち込んだことを示す書類を突きつけられ、サベリンが激高する場面が描かれます。

「お前にサインさせた書類で、俺の株だけが希薄化されるようになっていた」

— 映画でのサベリンの主張(趣旨)

もうひとつの引き金が、サベリンによる会社の銀行口座の凍結でした。映画では、ショーン・パーカー主導の経営方針に不信感を抱いたサベリンが、自分が管理していた会社の口座を凍結し、それが決定的な対立を生んだと描かれます。資金繰りを止める行為は、急成長中の会社にとって致命傷になりかねません。お金の管理権限を一人が握っていたことが、後の追放劇の伏線になっていました。

(出典: Wikipedia「Eduardo Saverin」Screen Rant「The Social Network True Story」

3. 史実はどうだったか——訴訟と和解の現実

映画はあくまでドラマであり、脚色も少なくありません。実際の経緯はどうだったのでしょうか。

史実によれば、サベリンとザッカーバーグは創業時にそれぞれ1,000ドルを出資し、その後さらに各1万8,000ドルずつを追加で投じました。サベリンは正式にCFO兼ビジネスマネージャーを務めています。2005年、彼の持株を希薄化する株式の発行をめぐって両者は法的に対立。2009年に法廷外で和解し、サベリンは「Facebook共同創業者」としての肩書を保持したうえで、和解内容についての守秘義務契約を結びました。

創業時の出資 ザッカーバーグとサベリンが各1,000ドル、後に各1.8万ドルを追加
サベリンの当初持分 約30%(再編・新株発行で大幅に希薄化)
サベリンとの和解 2009年に法廷外で和解、共同創業者の肩書を保持
ウィンクルボス兄弟との和解 2008年、現金2,000万ドル+株式4,500万ドル分(計6,500万ドル相当)

注目すべきは、映画で「0.03%まで薄められた」と描かれる数字が、和解前の一時点を強調した演出だという点です。最終的にサベリンは持分を回復し、2012年のFacebook上場時には数十億ドル規模の資産を手にしたと報じられています。一方、ザッカーバーグが「アイデアを盗んだ」と訴えたウィンクルボス兄弟も、2008年に6,500万ドル相当(現金+株式)で和解しました。この株式の価値は、その後のFacebookの成長で大きく膨らんでいます。

そしてショーン・パーカーの紹介により、Facebookは投資家ピーター・ティールから50万ドルの初の外部出資を受けます。この出資は会社価値を約490万ドルと評価するものでした。外部資本の受け入れは、創業者間の力関係を一変させる転換点でもありました。

(出典: Wikipedia「Eduardo Saverin」Market Realist「Eduardo Saverin Settlement」Wikipedia「Sean Parker」

4. スピードと信頼——急成長が壊したもの

この物語が普遍的なのは、「悪人が善人を騙した」という単純な話ではないからです。ザッカーバーグはサービスの成長に全神経を注ぎ、サベリンは会社のお金を守ろうとした。それぞれが自分なりに正しいと思う行動を取った結果、両者は決定的に決裂しました。

急成長する事業では、判断のスピードが何よりも優先されがちです。ザッカーバーグから見れば、ニューヨークで広告営業にこだわり、口座を凍結したサベリンは「会社の足を引っ張る存在」に映ったのかもしれません。サベリンから見れば、西海岸で投資家とパーティーに明け暮れるパーカーらは「事業を遊びにする危険な連中」に見えたはずです。同じ会社を見ているのに、見えている景色がまったく違ったのです。

その溝を埋めるはずの「最初の合意」が、口約束やあいまいな書面しかなかった。だからこそ、いざ対立したときに守ってくれるルールがなく、力関係と資本の論理だけが残った——映画はそう示唆しています。創業期の高揚感のなかで後回しにされがちな「持分と権限の取り決め」が、いかに重いかを突きつける作品です。

(出典: IMDb「The Social Network - Plot」TechCrunch「Peter Thiel on Saverin」

5. 中小企業経営者が学べること

『ソーシャル・ネットワーク』が描いたトラブルは、シリコンバレーの大企業に限った話ではありません。仲間と会社を立ち上げる中小企業・スタートアップにこそ、生々しく当てはまります。

  • 創業時の資本政策を最初に決める — 誰が何%持つのか、追加出資や新株発行のルールはどうするのか。「あとで話し合えばいい」と先送りした結果が、サベリンの希薄化でした。会社が小さいうちにこそ、持分設計を真剣に詰めておくべきです
  • 株主間契約(創業者株主間契約)を書面で結ぶ — 退任時の株式の扱い、希薄化への対応、意思決定のルールを文書化する。口約束は、対立した瞬間に無力になります。専門家(弁護士・中小企業診断士)のチェックを受けた契約書こそが、後の自分と仲間を守ります
  • お金の権限を一人に集中させない — サベリンによる口座凍結が決裂の引き金になったように、資金の管理権限が偏ると、信頼が崩れたとき事業そのものが止まります。承認フローや複数人での管理を仕組みに組み込みましょう
  • 外部資本を入れる前に「希薄化の影響」を理解する — 出資を受ければ持株比率は必ず下がります。誰の持分がどれだけ薄まるのか、議決権はどう変わるのか。資金調達は資本政策とセットで考えるものです
  • 急成長ほど合意の言語化が要る — スピードを優先するほど、認識のズレは大きくなります。意思決定の場に全員を巻き込み、決めたことを記録に残す。それが「見えている景色」をそろえる最善策です

なお、創業期は資金が乏しく、契約書の作成や専門家への相談、設備投資にコストをかけにくいものです。こうした負担を軽くするために、国や自治体は創業支援の補助金を用意しています。資本政策や事業計画を固める過程で、こうした制度を活用する手もあります。

6. 創業期に使える補助金

仲間と会社を立ち上げ、軌道に乗せるまでの初期投資を後押しする制度を紹介します。最新の公募状況は公式情報で必ずご確認ください。

小規模事業者持続化補助金(創業型)

補助上限額 最大250万円
対象者 創業後一定期間内の小規模事業者(創業前の準備でも対象になる枠あり)
対象経費 店舗改装、広告掲載、Webサイト制作、展示会出展など

(出典: 小規模事業者持続化補助金 公式サイト

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)

補助上限額 枠により750万円〜数千万円
対象 中小企業・小規模事業者・個人事業主・スタートアップ
活用例 革新的サービス開発、試作品開発、生産プロセス改善

(出典: ものづくり補助金総合サイト

自治体の創業支援補助金・特定創業支援等事業

多くの市区町村が、産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」や独自の創業補助金を実施しています。会社設立の登録免許税の軽減、専門家相談、創業セミナーなどとセットで使えるケースがあり、株主間契約や事業計画づくりの相談先としても役立ちます。お住まいの自治体名と「創業支援」で検索してみてください。

(出典: 中小企業庁「地域・創業」

まとめ

『ソーシャル・ネットワーク』は、世界を変えたサービスの誕生譚であると同時に、創業者間の合意をおろそかにした代償を描いた教訓の物語です。最初の1,000ドルを出した親友が、持株を希薄化され会社から押し出されていく——その経緯は、規模を問わずあらゆる起業に潜むリスクを映し出しています。

誰が何%持つのか、新株発行や退任時の株式をどう扱うのか、お金の権限を誰に与えるのか。これらを事業が小さいうちに書面で決めておくこと。それが、急成長したときに仲間を失わないための備えになります。資本政策と株主間契約は、後回しにしてよいものではありません。

創業期の事業計画づくりや初期投資には、国や自治体の補助金が活用できます。映画の教訓を胸に、足元の制度設計から固めていきましょう。

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この記事を書いた人

松田信介
松田 信介 Shinsuke Matsuda

X-HACK Inc. 代表取締役 / PARKLoT CTO

Microsoft for Startups Founders Hub 採択

X-HACK Inc. 代表取締役。システムコンサルタントとして中小企業の基幹システム構築・業務設計に携わったのち、自ら起業。小規模ビジネスの立ち上げから黒字化までを複数回経験し、採用・資金調達・補助金申請の実務にも精通。「補助金さがすAI」の開発・運営を通じて、経営者が本当に必要とする情報を現場目線で発信しています。

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