兼業・副業で起業する場合の補助金・助成金|本業継続時の申請要件と注意点完全ガイド
会社員として本業を継続しながら副業・兼業で事業を立ち上げるケースが増えるなか、公的な補助金・助成金を活用したいと考える事業者は多い。しかし「副業でも申請できるのか」「開業届は必要か」「本業の勤め先に影響はないか」といった疑問を持つ人がほとんどだ。本記事では、兼業・副業での起業時に活用できる主要な補助金・助成金について、対象要件・補助額・採択率・申請上の注意点を2026年度の最新情報に基づいて整理する。
補助金・助成金の基本的な違いと主要制度一覧
補助金と助成金は、どちらも返済不要の公的資金支援だが、仕組みが根本的に異なる。補助金は予算・件数に上限があり、申請事業が審査で採択される必要がある。一方、助成金は要件を満たせば原則として交付される。兼業・副業起業者が対象となり得る主要制度は以下のとおりだ。
| 制度名 | 種別 | 管轄 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 補助金 | 経済産業省(中小企業庁) | 小規模事業者の販路開拓・業務効率化 |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 補助金 | 経済産業省 | ITツール導入による生産性向上 |
| 中小企業新事業進出補助金 | 補助金 | 経済産業省 | 新領域への事業進出支援(2025年新設) |
| キャリアアップ助成金 | 助成金 | 厚生労働省 | 非正規雇用労働者の処遇改善 |
| 業務改善助成金 | 助成金 | 厚生労働省 | 設備投資を通じた最低賃金引上げ |
| 副業・兼業支援補助金 | 補助金 | 経済産業省 | 副業人材の送り出し・受け入れ企業支援 |
兼業・副業起業者が最も活用しやすいのは「小規模事業者持続化補助金」だ。ただし、申請には一定の要件を満たす必要がある。詳細は次のセクションで確認する。
兼業・副業起業者が満たすべき申請要件
補助金申請にあたり、兼業・副業起業者が最初に確認すべきは「事業所得」として認められているかどうかだ。
雑所得では申請不可
開業届を提出していない副業の所得は「雑所得」に区分される。小規模事業者持続化補助金をはじめ多くの補助金は、確定申告上で「事業所得」として計上されていることが前提条件となる。開業届を税務署に提出し、個人事業主として事業を行う状態にすることが補助金申請の出発点だ。小規模事業者持続化補助金の主な申請要件
- 開業届を提出済みで、申請日時点で事業を開始していること(申請日後の開業予定者は対象外)
- 常時使用する従業員数が、商業・サービス業(宿泊・娯楽業を除く)は5人以下、製造業等その他の業種は20人以下であること
- 確定申告において事業所得が計上されていること(雑所得のみの場合は対象外)
- 商工会または商工会議所による経営計画の確認・支援を受けていること
申請時点での事業開始が必須
開業届上の開業日が申請日よりも後の場合、または申請日時点で実際に事業を開始していない場合は補助対象外となる。補助金申請の準備と並行して、早期に開業届を提出しておく必要がある。本業継続時の法律・就業規則上の確認事項
法律上、民間企業の労働者が副業を行うことは原則として自由だ。ただし公務員は国家公務員法および地方公務員法により原則禁止されており、補助金申請以前に副業自体が制限される。
就業規則の事前確認が不可欠
民間企業でも、勤務先の就業規則によって副業が制限・禁止されている場合がある。規定を無視して副業を行った場合、懲戒処分の対象となる可能性がある。補助金申請の前に、就業規則における副業の許可・申請要否を必ず確認すること。主要補助金の補助額・補助率・対象経費
兼業・副業起業者が活用できる代表的な補助金の補助額・補助率・対象経費を整理する。
| 制度名 | 補助上限 | 補助率 | 主な対象経費 |
|---|---|---|---|
| 持続化補助金(通常枠) | 50万円 (特例活用で最大250万円) |
2/3 (赤字事業者は3/4) |
広報費・ウェブサイト関連費・展示会出展費・機械装置等費・委託・外注費 等 |
| 持続化補助金(創業型) | 200万円 (特例活用で最大250万円) |
2/3 | 通常枠と同様。創業1年以内かつ特定創業支援等事業受講が条件 |
| デジタル化・AI導入補助金(セキュリティ対策推進枠) | 5万円〜100万円 | 1/2以内 | ITツール(ソフトウェア・クラウドサービス等) |
| デジタル化・AI導入補助金(通常枠) | 最大450万円 | 1/2〜4/5 | 業務効率化・DX推進に資するITツール |
創業型は「創業1年以内」が条件
小規模事業者持続化補助金の創業型は、第3回公募より対象が「創業3年以内」から「創業1年以内」に厳格化された。副業から本格起業を目指す事業者は、創業直後のタイミングで申請を検討する必要がある。なお補助金はすべて後払い方式であり、採択・交付決定後に自己資金で先払いし、事業完了後に補助金が入金される仕組みだ。早急な資金需要がある場合は、金融機関の融資と組み合わせることを検討する必要がある。
採択率・実績データ(2024〜2025年度)
補助金申請を検討するうえで、実際の採択率は重要な判断材料となる。主要制度の採択率を以下に整理する。
| 制度・回次 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 持続化補助金 第17回(一般型・通常枠) | 23,365件 | 11,928件 | 51.0% |
| 持続化補助金 第16回(一般型・通常枠) | — | — | 37.2% |
| 持続化補助金 創業型 第1回 | — | — | 37.9% |
| デジタル化・AI導入補助金(通常枠) | — | — | 70%超(回によって異なる) |
| デジタル化・AI導入補助金(インボイス枠) | — | — | 平均90%超 |
| 持続化補助金(災害支援枠) | — | — | 毎回8割超 |
持続化補助金の通常枠は、回によって採択率が3〜9割と大きく変動する。第17回の51.0%は前回(37.2%)から大幅改善しているが、創業型は同第1回で37.9%と厳しめの水準だ。採択率だけでなく、事業計画の質が採否を左右する点は変わらない。
申請フロー|事前準備から入金までの流れ
小規模事業者持続化補助金を例に、兼業・副業起業者が踏むべき申請フローを示す。
- 開業届の提出:税務署に開業届を提出し、個人事業主として事業所得を計上できる状態にする。青色申告承認申請書も同時に提出することで、経営の透明性が評価されやすくなる。
- 就業規則の確認:勤務先の就業規則で副業の可否・申請手続きを確認する。
- 商工会・商工会議所への相談:持続化補助金は地域の商工会・商工会議所が窓口だ。会員でなくても相談・申請受付に応じている。経営計画の確認・支援を受けることが申請要件に含まれる。
- 経営計画・事業計画書の作成:「販路開拓」を中心とした具体的な計画を策定する。2026年度は「経営計画づくり」の重点化が継続されており、計画の質が採否に直結する。
- 見積書の取得:2025年度以降、採択から交付決定の間に見積書等の提出が必須化された。補助対象経費について、適正な価格が証明できる見積書を事前に準備する。
- 申請書類の提出:必要書類をすべて揃えて提出する。事務局から不備の連絡は原則として来ないため、提出時点で完全な状態にする必要がある。
- 採択・交付決定の通知:採択後、交付決定通知が届いてから補助対象経費の支出が可能となる。
- 事業実施・実績報告:補助事業を実施し、完了後に実績報告書を提出する。
- 補助金の入金:実績報告の審査を経て、補助金が入金される。
2026年の申請スケジュール(一般型・第19回)
- 公募要領公開:2026年1月28日(水)
- 申請受付開始:2026年3月6日(金)
- 申請受付締切:2026年4月30日(木)
採択率を高めるための申請上の注意点
兼業・副業起業者が補助金申請で注意すべきポイントを以下に示す。
①「販路開拓」を計画の柱に据える
小規模事業者持続化補助金の目的は「販路開拓等の取組」支援であり、この点が計画の柱になっていない場合は不採択リスクが高まる。新規顧客獲得の具体的な手段・ターゲット・スケジュールを明示することが求められる。
②補助対象外経費を計上しない
計上されている経費の大半が補助対象外の場合、「補助事業の円滑な実施が困難」として不採択・採択取消になると公式に明記されている。補助対象経費の範囲を事前に公募要領で確認し、対象外経費を誤って計上しないよう注意が必要だ。
③副業申請における事業継続性のアピール
副業での申請に対して、審査担当者が「真剣度が低い」と判断する可能性がある。特に本業収入が副業収入を大きく上回る場合、事業の継続性が疑われやすい。事業計画書内で、副業としての位置づけではなく独立した事業としての継続意思と具体的な成長計画を明確に示すことが有効だ。
④提出書類の完全性を事前に確認
書類不備は審査対象外となる
申請後に事務局から書類不備の連絡は原則として来ない。提出時点で完全な状態にすることが大前提であり、書類チェックリストを活用して漏れがないか必ず確認する。⑤青色申告による経営透明性の担保
青色申告は、帳簿に基づいて正確な収支を申告する制度だ。補助金申請時に「経営の透明性」として評価されやすくなるほか、青色申告特別控除(最大65万円)といった税務上のメリットも得られる。開業届と同時に青色申告承認申請書を提出することを検討する。
⑥見積書の事前取得
2025年度以降、価格の妥当性確認のため見積書の提出が必須化されている。2026年も同様の運用が継続される見通しだ。補助対象経費ごとに、複数の事業者から見積書を取得しておくことが望ましい。
2025〜2026年度の制度改正・最新動向
制度は毎年改定される。2025〜2026年度において特に注目すべき変更点を整理する。
| 変更内容 | 詳細 |
|---|---|
| 申請枠の整理(持続化補助金) | 「卒業枠」「後継者支援枠」を廃止。2026年も「通常枠」「創業型」「共同・協業型」「ビジネスコミュニティ型」の4類型で運用 |
| 創業型の対象要件厳格化 | 第3回公募より「創業3年以内」→「創業1年以内」に変更 |
| IT導入補助金の名称変更 | 2026年度より「デジタル化・AI導入補助金」に改称。AI活用ツールが補助対象に拡充 |
| 中小企業新事業進出補助金の新設 | 2025年より新設。中小企業の新領域への事業進出に伴う投資を支援 |
| 見積書提出の義務化 | 2025年度より採択後の交付決定前に見積書等の提出が必須化。2026年も継続 |
| 経営計画重視の方針継続 | 2026年度も「政策の原点回帰」として経営計画づくりを最重点化する方針が継続 |
2026年度も制度継続が見込まれる
2025年(令和7年度)補正予算において、小規模事業者持続化補助金は「中小企業生産性革命推進事業」の枠組みに含まれており、2026年度も制度が継続される見通しだ。申請スケジュールや枠組みの詳細は、公募要領公開時(2026年1月28日予定)に確認する。その他の活用可能な関連支援制度
持続化補助金以外にも、兼業・副業起業者が活用できる支援制度は複数存在する。事業の状況に応じて組み合わせを検討する。
- デジタル化・AI導入補助金: 業務効率化やDX推進のためのITツール(ソフトウェア・クラウドサービス等)の導入費用を補助。フードデリバリー等の副業個人事業主にも活用実績がある。採択率は通常枠で70%超、インボイス枠では平均90%超と高水準。
- 業務改善助成金: 生産性向上につながる設備投資を行い、事業場内の最低賃金を一定額引き上げた場合に設備投資費用の一部を助成。従業員を雇用した段階で検討できる。
- 中小企業省力化投資補助金: 人手不足解消・生産性向上を目的とした省力化・自動化機器の導入を支援。製品カタログに掲載された機器が対象となる。
- 副業・兼業支援補助金(経済産業省): 2023年4月より公募開始。副業を認める企業または副業として人材を受け入れる企業が申請対象。個人事業主本人ではなく、副業を受け入れる事業者側の補助金である点に注意。
- 地方自治体の創業支援補助金: 各都道府県・市区町村が独自に設ける創業支援・販路拡大補助金。店舗開設時の備品購入費・地域特産品の販売促進費用等が対象となるケースもある。居住地・事業所所在地の商工会・商工会議所に相談することで最新情報を得られる。
- 人材開発支援助成金: 従業員を雇用して教育訓練を計画的に実施する場合に、事業主を対象として支給される。事業拡大時に検討できる制度だ。
利用可能な補助金・助成金は補助金検索からも探すことができる。事業の業種・規模・所在地に応じて絞り込み検索が可能だ。
まとめ
- 開業届の提出が前提条件: 副業の所得が「雑所得」に区分されている場合は補助金申請不可。税務署に開業届を提出し「事業所得」として計上できる状態にすることが最初のステップ。
- 就業規則の確認を先に行う: 法律上は民間企業の副業は原則自由だが、勤務先の就業規則で制限・禁止されている場合がある。公務員は原則として副業禁止。補助金申請の前に必ず確認する。
- 持続化補助金(通常枠)の採択率は第17回で51.0%: 応募23,365件に対して11,928件が採択。商工会・商工会議所のサポートを活用した経営計画の質が採否を左右する。
- 創業型は「創業1年以内」に厳格化: 第3回より対象が創業3年以内から1年以内に変更。補助上限は最大200万円(特例活用で250万円)。
- 補助金はすべて後払い: 採択・交付決定後に自己資金で先払いし、事業完了後に補助金が入金される。早急な資金需要には金融機関の融資との組み合わせが必要。
- 2026年の申請受付締切は2026年4月30日(第19回): 公募要領は2026年1月28日公開、申請受付開始は同年3月6日。スケジュールを逆算して準備を進める。
- 書類不備は審査対象外: 提出後の不備連絡は原則なし。提出時点での完全性が採択の前提条件となる。
参考情報
本記事の作成にあたり、以下の公的機関・情報源を参照した。
- 小規模事業者持続化補助金(全国商工会連合会): https://www.jizokuka-portal.info/
- 小規模事業者持続化補助金<創業型>: https://r6.jizokukahojokin.info/sogyo/
- デジタル化・AI導入補助金2026(中小企業基盤整備機構): https://it-shien.smrj.go.jp/
- 中小企業庁: https://www.chusho.meti.go.jp/
- ミラサポplus(経済産業省): https://mirasapo-plus.go.jp/
- J-Net21・創業者向け補助金情報(中小機構): https://j-net21.smrj.go.jp/support/covid-19/sogyo.html
- 全国商工会連合会: https://www.shokokai.or.jp/
- 日本商工会議所: https://www.jcci.or.jp/
補助金・助成金の要件・スケジュールは年度ごとに変更される。最新の公募要領は各公式サイトで確認すること。また、補助金・助成金ガイド一覧では、業種・目的別の関連記事を掲載している。
関連コンテンツ
親族企業の事業承継で使える補助金・助成金|株式譲渡・相続対策の資金調達ガイド
親族企業の事業承継で使える補助金・助成金|株式譲渡・相続対策の資金調達ガイドについて詳しく解説します。
詳しく見る →人材育成助成金|訓練経費・賃金助成の種類と申請方法【2025-2026年度版】
人材育成助成金|訓練経費・賃金助成の種類と申請方法【2025-2026年度版】について詳しく解説します。
詳しく見る →ものづくり補助金と事業再構築補助金の採択率比較|2025年度の最新動向と申請戦略
ものづくり補助金と事業再構築補助金の採択率比較|2025年度の最新動向と申請戦略について詳しく解説します。
詳しく見る →自治体版ものづくり補助金・地域産業振興補助金|県庁・市役所独自の補助制度完全ガイド2025-2026
自治体版ものづくり補助金・地域産業振興補助金|県庁・市役所独自の補助制度完全ガイド2025-2026について詳しく解説します。
詳しく見る →あなたに合った補助金を探してみましょう
補助金を検索する無料会員登録でAI検索が使えます
無料会員登録この記事をシェア