人材育成助成金|訓練経費・賃金助成の種類と申請方法【2025-2026年度版】
人材開発支援助成金は、雇用する労働者に職務関連の専門知識・技能を習得させる職業訓練を実施した事業主に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する厚生労働省管轄の制度です。令和8年度(2026年度)の概算要求額は539億円と大規模な予算が確保されており、コースによっては1億円を上限とする助成が受けられます。本記事では、対象者・コース別助成額・申請フロー・最新の改正内容を具体的な数値とともに整理します。
制度概要
人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に対して計画的な職業訓練を実施した場合に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を補填する制度です。目的は企業の人材育成効率化であり、厚生労働省が管轄します。
令和8年度(2026年度)の概算要求額は539億円で、引き続き大規模な予算が確保されています。補助金とは異なり、要件を満たしたうえで正しい手順で申請すれば原則として受給できる「権利型」の給付制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金 |
| 管轄省庁 | 厚生労働省 |
| 令和8年度概算要求額 | 539億円 |
| 給付方式 | 訓練終了後の支給申請(後払い) |
| 採択方式 | 要件審査型(採択枠・倍率なし) |
対象者・受給要件
対象となる事業者は大企業・中小企業・事業主団体・中小建設事業主団体の事業主です。助成対象となる労働者は、原則として雇用保険の被保険者である正規雇用の従業員となります。
主な受給要件(3つの基本条件)
- 雇用保険の適用事業所であること
- 支給審査への協力(書類提出・照会への対応)
- 期間内(訓練終了翌日から2か月以内)に申請すること
計画届提出に必要な前提条件
- 職業能力開発推進者を選任していること
- 訓練計画書を作成し、対象労働者に内容を周知していること
- 雇用保険適用事業所であること
非正規雇用者を訓練する場合は別の制度を活用
パートやアルバイト、派遣労働者などの非正規雇用労働者が対象の場合は「キャリアアップ助成金」が該当します。人材開発支援助成金と併用も可能です。コース別の上限額と助成率
人材開発支援助成金は複数のコースで構成されており、1事業者1年度あたりの上限額はコースごとに異なります。
| コース名 | 上限額(1事業者1年度) |
|---|---|
| 人材育成支援コース | 1,000万円 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 定額30万円(賃金・資格等手当要件充足時は36万円) |
| 人への投資促進コース(成長分野等人材訓練以外) | 2,500万円(自発的職業能力開発訓練は300万円) |
| 人への投資促進コース(成長分野等人材訓練) | 1,000万円 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 1億円 |
| 建設労働者認定訓練コース | 合計1,000万円 |
| 建設労働者技能実習コース | 合計500万円 |
人材育成支援コースの助成率(改正前後の比較)
| 区分 | 統合前(一般訓練コース) | 統合後(人材育成支援コース) |
|---|---|---|
| 経費助成率(中小企業) | 30% | 45% |
| 賃金助成額(中小企業) | 380円/時 | 760円/時 |
加算措置について
訓練後に対象労働者全員が以下のいずれかの要件を満たした場合、助成額が加算されます。
- 賃金要件:毎月決まって支払われる賃金が5%以上増加した場合
- 資格等手当要件:訓練修了後に資格手当を支払い、賃金が3%以上増加した場合
申請フロー|計画届から受給までの手順
申請は「計画届の提出 → 訓練の実施 → 支給申請」という3段階で進みます。特に計画届の提出期限は厳守が必要です。
-
計画届の提出(訓練開始日の6か月前〜1か月前)
事業所を管轄する労働局へ訓練計画書を提出します。従来の「1か月前まで」から「6か月前から1か月前」へ期間が拡張されました。 -
訓練の実施
提出した計画内容に沿って訓練を実施します。受講状況・指導内容の記録を必ず残してください。 -
支給申請(訓練終了日の翌日から2か月以内)
期限内に支給申請書類を管轄労働局へ提出します。電子申請(雇用関係助成金ポータル)が推奨されています。
提出方法
- 電子申請:雇用関係助成金ポータル(推奨・2023年4月より対応)
- 郵送:管轄の都道府県労働局
- 窓口持参:管轄の都道府県労働局
主な必要書類
| 種別 | 書類名 |
|---|---|
| 申請関連 | 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号) |
| 申請関連 | 支払方法・受取人住所届(通帳の写し等添付) |
| 申請関連 | 支給申請書(様式第4-1号) |
| 申請関連 | 事業所確認票(中小企業事業主の場合) |
| 助成金額算定 | 賃金助成及びOJT実施助成の内訳(様式第5号) |
| 助成金額算定 | 経費助成の内訳(様式第6-1号) |
申請時の注意点とよくある失敗
人材開発支援助成金は要件を満たすだけでなく、正しい順番で手続きを進め、証拠書類(証憑)を整える必要があります。以下の点に特に注意が必要です。
計画届の提出期限を過ぎると対象外
訓練開始日の1か月前までに計画届を提出しなかった場合、その訓練は助成対象外となります。期限は「訓練開始日の6か月前〜1か月前」です。一度この期限を過ぎると申請不可となるため、訓練スケジュール確定後は速やかに手続きを開始してください。訓練費用は支給申請前に支払い済みであることが必須
助成金は訓練終了後の「後払い」です。訓練費用の支払いが支給申請より前に完了していることが条件となります。資金繰りを踏まえて計画を立てる必要があります。申請前に確認すべきチェックリスト
- 実施する訓練が対象訓練に該当しているか(対象外訓練では助成不可)
- 訓練の実施時間・従業員の雇用形態・年齢・人数が要件を満たしているか
- 計画変更が生じた場合は「計画変更届」を提出期限内に提出しているか
- 有期実習型訓練は手続きの流れが異なるため、事前に労働局へ確認しているか
- 受講記録・出勤簿・賃金台帳など証憑書類の保存体制が整っているか
不正受給に関する行政指摘事例
会計検査院の調査により、企業がリスキリングを訓練機関に外注した際に費用の一部がキックバックされ、支給要件である「全額負担」とは認められない不適切な支給が検査対象の約3割に上ったことが判明しています。訓練費用の全額を自社で負担していることを明確に証明できる体制が必要です。採択率と実績
人材開発支援助成金は、補助金のように採択枠や倍率が設定されていません。受給要件を満たし、正しい手順で書類を提出すれば原則として支給されます。実際に2024年度において「採択率100%・不支給ゼロ(提出案件ベース)」を達成した事例も報告されています。
ただし、以下の場合には不支給となります。
- 書類不備や記載内容の誤り
- 要件を満たしていない訓練を実施した場合
- 不正受給(費用のキックバック等)が確認された場合
- 計画届の提出期限や支給申請期限を過ぎた場合
審査には時間がかかる
人材開発支援助成金は確認事項が多く、他の助成金より審査に時間がかかるとされています。支給が確定するまでの資金繰りを見越した計画が必要です。初回申請の場合は管轄の労働局への事前相談を推奨します。2025〜2026年度の主な改正ポイント
令和8年度(2026年度)に向けて複数のコースで制度改正が予定されています。令和8年3月2日に施行済みの改正も含め、主なポイントを整理します。
| コース | 改正内容 |
|---|---|
| 人材育成支援コース | 45歳以上を対象とした「中高年齢者実習型訓練」を新設予定。OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練が対象。 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 令和8年3月2日より、3年以内の人事配置計画に基づく訓練も助成対象に追加。設備投資助成(訓練で得た知識活用のための機器・設備費用)も新設予定。 |
| 人への投資促進コース | 長期教育訓練休暇中に手当を支給した場合の助成が新設予定。最大67.5万円の助成が見込まれる。 |
| 分割支給申請制度(複数コース) | 令和8年3月2日より、人材育成支援・人への投資促進・事業展開等リスキリング支援コースで分割支給申請が可能に。長期訓練でも途中段階で申請でき、キャッシュフロー負担が軽減。 |
「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」は令和8年度が最終年度
この2コースは令和8年度をもって終了予定です。対象となる訓練を検討している場合は、早期に計画を立てて申請することが求められます。関連する補助金・支援制度
人材開発支援助成金と合わせて活用できる制度や、対象外の場合に検討すべき制度を整理します。
| 制度名 | 対象者 | 主な目的 | 併用可否 |
|---|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 正規雇用労働者(雇用保険被保険者) | 職業訓練による技能・知識向上 | — |
| キャリアアップ助成金 | 非正規雇用労働者(有期・パート・派遣等) | 正規雇用化・処遇改善の推進 | 併用可 |
| DXリスキリング助成金(東京都) | 都内中小企業の従業員 | DX人材育成 | 要確認 |
| 業務改善助成金 | 中小企業・小規模事業者 | 生産性向上・最低賃金引上げ支援 | 要確認 |
多様な雇用形態の従業員を抱える事業者は、人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金を組み合わせることで、正規・非正規双方の従業員の育成・処遇改善を同時に支援できます。補助金の検索はこちらから条件に合った制度を探すことが可能です。
まとめ
- 人材開発支援助成金は厚生労働省管轄の制度で、令和8年度概算要求額は539億円。要件を満たせば原則支給される権利型の給付制度。
- 対象は雇用保険被保険者の正規雇用労働者。非正規雇用者にはキャリアアップ助成金(併用可)。
- コース別上限額は人材育成支援コース1,000万円〜事業展開等リスキリング支援コース1億円まで幅広い。
- 人材育成支援コースの助成率は統合後に経費45%・賃金760円/時へ引上げ済み。
- 申請手順は「計画届(訓練開始6か月前〜1か月前)→ 訓練実施 → 支給申請(終了翌日から2か月以内)」の3段階。期限を過ぎると対象外。
- 令和8年3月2日より、分割支給申請が可能になりキャッシュフロー負担が軽減。
- 「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」は令和8年度が最終年度。
- 訓練費用のキックバック等による不正受給には厳しい対応がなされており、費用の全額自己負担を証明できる体制の整備が必須。
参考情報
- 厚生労働省|人材開発支援助成金 (制度概要・各コースの詳細・申請様式)
- 厚生労働省|人材開発支援助成金 申請書類一覧
- 政府広報オンライン|人材開発支援助成金「人への投資促進コース」
- 雇用関係助成金ポータル(電子申請):2023年4月より電子申請に対応。管轄労働局への持参・郵送より処理が迅速。
制度の詳細や最新の改正内容は厚生労働省の公式サイトおよび管轄の都道府県労働局で確認してください。また、 補助金ガイド一覧 では他の助成金・補助金に関する解説記事も掲載しています。
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