本文へ移動

公開 · 更新

専門料理店の倒産が過去最多――イタリアン・韓国料理店の経営者が今からできること

専門料理店の倒産が過去最多――イタリアン・韓国料理店の経営者が今すぐ打てる3つの手

⚡忙しい人向けの30秒まとめ

  • ✓ 倒産85件のうち89.4%が5人未満の小規模店で、ほぼ全件が破産。「打つ手を知らないまま潰れている」状態を避けるには今すぐ動く必要がある。
  • ✓ インバウンド4,268万人だが飲食店の74.6%が取り込めていない。Googleマップの多言語化と写真充実(費用ゼロ)が最速の集客改善策。

数字で見る「専門料理店の危機」

東京商工リサーチ(2026年3月28日発表)のデータから、専門料理店の倒産状況を確認します。

指標 数値 補足
2025年度の倒産件数 85件 4〜2月時点、1988年度以降最多
販売不振による倒産 69件(81.1%) 「客が来ない」が圧倒的最多
物価高による倒産 16件 前年度5件から3倍増
人手不足による倒産 10件 前年度4件から2.5倍増
従業員5人未満の割合 89.4% 76件が小規模店
破産の割合 97.6% 83件が破産、民事再生はわずか1件

飲食業全体でも2025年の倒産は1,002件と、30年間で初めて1,000件を超えました(東京商工リサーチ調べ)。中でも専門料理店は、和食店やラーメン店とは異なる構造的な問題を抱えています。

注目すべきポイント:倒産した店の約9割が従業員5人未満の小規模店で、ほぼ全件が破産です。つまり「手遅れになってから潰れる」のではなく、「打つ手を知らないまま潰れている」可能性があります。

なぜ専門料理店だけが苦しいのか――3つの構造的要因

ラーメン店や寿司店も厳しい環境にありますが、イタリアン・韓国料理・フレンチなどの専門料理店には、業態固有の3つの弱点があります。

要因1:輸入食材への依存度が高い

本場の味を再現するために、オリーブオイル・チーズ・パスタ・唐辛子・ナンプラーなど輸入食材が不可欠です。オリーブオイルの小売価格は2022年の約588円から2025年には約1,620円と2.7倍以上に高騰(日本オリーブ調べ)。円安(2020年の1ユーロ約120円→2024年の160円台)と欧州での生産コスト上昇が重なり、仕入れ原価を大きく押し上げています。

和食店は国産食材に切り替える余地がありますが、専門料理店は「その国の食材でなければ味が変わる」というジレンマを抱えています。

要因2:インバウンド4,268万人の恩恵が届かない

2025年の訪日外国人は4,268万人で過去最多を記録し、飲食への消費額は全体の21.9%を占めます(観光庁「訪日外国人消費動向調査2025年暦年(速報)」)。しかし、訪日客が「日本で食べたい料理」は寿司・天ぷら・ラーメンなどの和食が中心です。わざわざ日本に来てイタリアンやフレンチを選ぶ旅行者は限られます。

つまり、インバウンド需要は過去最高なのに、その恩恵が専門料理店にはほぼ届いていないのです。

要因3:価格転嫁の壁が高い

2025年の消費者物価上昇率は3.1%(日本経済新聞、2026年1月報道)。食品価格は全体を上回るペースで上昇していますが、専門料理店は「ちょっと高くてもおいしい料理を食べる」という付加価値で勝負してきた業態です。値上げをすれば客が離れ、据え置けば利益が消えるという板挟みに陥っています。

打ち手:インバウンド客を「自分の店」に引き込む

訪日客が和食を好むのは事実ですが、裏を返せば「日本で食べる本場のイタリアン」は差別化ポイントになります。実際、ベジタリアンやハラール対応の選択肢として、専門料理店が選ばれるケースも増えています。

すぐできる3つのインバウンド対策

  • • 多言語メニュー:英語・中国語・韓国語の写真付きメニューを用意する(無料翻訳ツールでも可)
  • • Google マップ最適化:店舗情報を多言語で登録し、写真を充実させる(費用ゼロ)
  • • キャッシュレス決済:Alipay・WeChat Pay・クレジットカード対応で機会損失を防ぐ

逆転の発想:「和食に客を取られている」と嘆くのではなく、「和食に飽きた訪日リピーター」や「母国の料理が恋しい在日外国人」をターゲットにするのも一つの戦略です。韓国料理店なら在日韓国人コミュニティ、イタリアンなら在日欧米人のランチ需要など、セグメントを絞ることで集客コストを下げられます。

打ち手:省力化投資で固定費を下げる

人手不足倒産が前年度の2.5倍に急増しているように、人件費の問題は深刻です。「人を雇えない」なら「人がいなくても回る仕組み」を作る必要があります。

経営者が今日から始めるアクション

  • ✓ 原価率を再計算する:輸入食材の現在価格で原価率を出し直し、メニュー別の収益性を把握する
  • ✓ Google マップの店舗情報を多言語化:今日からゼロ円で始められるインバウンド対策

この記事を書いた人

松田信介
松田 信介 Shinsuke Matsuda

X-HACK Inc. 代表取締役 / PARKLoT CTO

Microsoft for Startups Founders Hub 採択

あわせて読みたい

ニュース ·

長期金利3%台、固定金利・変動金利は今後どうなる?――日銀・米国・中国から読む上昇要因と低下要因、割れるアナリスト予想

日本の10年国債利回りは2026年10月に3%台で推移し、フラット35は3.830%、日銀の政策金利は1.25%になりました。固定金利は国債利回り、変動金利は日銀の政策金利に連動するという仕組みを押さえたうえで、米FRBの利上げと米長期金利5%台、物価が上向き始めた一方で金利は1.6%台にとどまる中国の動きとの関係を整理します。上昇要因と低下要因、日銀の利上げペースや長期金利のピークで分かれるアナリストの見方を両論併記し、借入のある経営者が今やっておくべきことをまとめます。

ニュース ·

Anthropicが1億ドルで「FDE」1万人育成へ――FDEとは何か、なぜAI時代に必要なのか

Anthropicは2026年10月2日、1億ドルを投じて2027年末までに1万人のFDEを育成する「Claude Frontier Academy」を発表しました。FDE(Forward Deployed Engineer)とは顧客の現場に入り込んでAIを業務に組み込むエンジニアのことで、Anthropicは自社の認定名を「Frontier Deployed Engineer」としています。OpenAIの40億ドル超の導入専門会社など各社の動き、生成AIの試行の約95%が利益につながっていないとする調査、日本企業の85.1%がDX推進人材不足という現状から、なぜ今FDEが必要なのかを整理し、中小企業が自社で「FDE的な役割」を持つための行動をまとめます。

ニュース ·

AIが核融合の「59年来の予想」を覆す数式を発見――GPT-6 Astra Pro論文の中身と、経営者が学べる「AIとの分業」

2026年9月、核融合の3次元プラズマ平衡をめぐるHarold Gradの1967年の予想に反する解を示した論文が2本、相次いでarXivに公開されました。米メリーランド大学のLandreman氏は謝辞で「解はGPT-6 Astra Proで発見した」と明記し、数学者チームもGPT・Claude系モデルで細部の計算とLean検証を進めています。SNSの説明を論文原文で確かめ、実際に分かったこと・分かっていないこと、AIと専門家の分業から中小企業が学べる4つの行動を整理します。