決済代行大手「全東信」が破産、負債1259億円で今年最大――加盟店20万店を襲う「売上金が戻らない」危機
⚡忙しい人向けの30秒まとめ
- ✓ クレジットカード決済代行の全東信(大阪市)が2026年7月6日、大阪地裁に自己破産を申請し破産手続開始決定。負債は約1259億円で今年最大の倒産。加盟店は2018年時点で20万店超に及ぶ。
- ✓ カード売上をカード会社より先に立て替え入金する「早期決済」が主力だったが、コロナ禍の飲食店不振と2024年に発覚した不正な加盟店契約問題による信用不安で行き詰まった。破産手続開始までの未入金売上は「破産債権」となり、全額回収は極めて困難。
- ✓ 影響を受けた店舗はまず未入金額の確定と決済手段の切り替えを急ぎ、資金繰りは日本政策金融公庫のセーフティネット貸付等に相談を。外食団体はセーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)の適用を国に要請している。
クレジットカード決済代行の株式会社全東信(大阪市中央区)が2026年7月6日、大阪地方裁判所に自己破産を申請し、同日破産手続開始決定を受けました。負債総額は約1,259億円で、今年最大の倒産です。加盟店は2018年時点で20万店超。飲食店を中心に「カード決済が使えない」「立て替えてもらうはずの売上金が入ってこない」という二重の打撃が全国に広がっています。何が起きたのか、影響を受けた事業者は何をすべきか、使える公的支援とあわせて整理します。
何が起きたか――今年最大、負債1259億円の破産
東京商工リサーチ・帝国データバンクによると、全東信は2026年7月6日に大阪地裁へ自己破産を申請し、同日、破産手続開始決定を受けました。負債総額は2025年3月期決算時点で約1,259億2,900万円。2026年に入って最大の倒産で、負債1,000億円を超える大型倒産としても約7カ月ぶりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 株式会社全東信(大阪市中央区) |
| 創業・設立 | 1987年5月創業、2006年9月設立(資本金45億円) |
| 破産申請 | 2026年7月6日 大阪地裁(同日、破産手続開始決定) |
| 負債総額 | 約1,259億2,900万円(2025年3月期決算時点) |
| 加盟店数 | 2018年9月時点で20万店超(飲食店・小売店・美容室・宿泊施設など) |
| 売上高 | 2020年3月期 約82億円 |
サービスは突然停止し、同社の決済端末を使っていた店舗ではクレジットカード決済ができなくなりました。報道では、貼り紙で「現金のみ」の対応を告知する飲食店の姿が伝えられており、「死活問題」との声も上がっています。
全東信とはどんな会社か――「早期入金」で飲食店を支えた決済代行
全東信の主力は、飲食店などの加盟店に代わってクレジットカード会社との契約・請求事務を担う決済代行に、独自の「早期決済(立替払い)」を組み合わせたサービスでした。通常、カード売上が店舗に入金されるまでは締め日から数週間かかりますが、同社はカード会社からの入金を待たずに売上代金を先に立て替えて店舗へ入金し、その対価として手数料を得ていました。業界初とされる週2回・月6回の早期入金が特徴です。
日銭商売でありながら仕入れや人件費の支払いが先行しがちな飲食店にとって、「カード売上がすぐ現金になる」仕組みは資金繰りの命綱でした。だからこそ、その担い手が倒れた影響は大きく、単なる「決済手段の停止」にとどまらない打撃になっています。
なぜ破産したのか――コロナ禍の傷と信用不安
破綻の背景には、大きく2つの要因があります。
1つ目はコロナ禍による飲食店の不振です。主要顧客である飲食店が休業・時短営業を強いられたことでカード決済の取扱高が落ち込み、同社は営業損益で大きな赤字を計上しました。コロナ禍の影響が和らいだ後も、過年度に積み上がった金融債務が重く、財務の健全化には至りませんでした。
2つ目は信用不安です。2024年には、悪質な「ぼったくり店」の摘発に関連して、審査が不十分なまま加盟店契約を結んでいたとされる問題が明るみに出て、同社の幹部社員が警視庁に書類送検される事態となりました。決済代行はカード会社と加盟店の間に立つ「信用」を商売にするビジネスであるだけに、このダメージは深刻で、経営悪化に拍車をかけました。
立替払いというビジネスモデル自体、常に多額の運転資金を必要とします。取扱高の減少と信用不安で資金調達の道が細れば行き詰まる――そのリスクが現実になった形です。
加盟店への影響――未入金の売上は「破産債権」に
影響を受けた店舗が直面するのは、次の2つの問題です。
- ① 未入金の売上金が戻らないおそれ――破産手続開始までに立替入金されていなかったカード売上は「破産債権」となり、破産手続きの中で配当を待つしかありません。全額回収は極めて困難で、配当があっても時間がかかります。
- ② カード決済が使えない――同社経由の決済端末は停止し、別の決済代行会社と契約し直すまでカード払いを受けられません。客単価の高い店ほど機会損失が膨らみます。
カード売上を当てにして仕入れ代金や家賃、給与の支払いを予定していた店舗では、入金の途絶がそのまま資金ショートにつながりかねません。連鎖倒産への警戒も強まっており、外食業界団体は国に対し、後述するセーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)の適用を要請しています。
注意:破産管財人には印藤弘二弁護士(はばたき綜合法律事務所)が選任されています。債権の届け出などの手続きは、破産管財人室(06-4704-4681、受付10:00〜17:00)からの案内に従ってください。「未入金分を回収してあげる」などと持ちかける業者や、審査なしの高利貸しには絶対に応じないでください。
影響を受けた事業者が今すぐやるべき5つの対応
- ① 未入金額を確定させる――売上伝票・決済データを整理し、全東信からの入金が途絶えている金額を洗い出します。破産債権の届け出や融資相談の基礎資料になります。
- ② 代替の決済手段を確保する――別の決済代行会社への切り替えを急ぎます。全東信の破産を受けて加盟店の受け入れを表明している事業者もあり、審査を急いでもらえるケースがあります。切り替えまでの間はQRコード決済など導入が速い手段でしのぐのも一手です。
- ③ 資金繰り表を作り直す――未入金分を「入ってこないもの」として今後3カ月の資金繰りを見直し、不足が見えたら早めに手を打ちます。
- ④ 金融機関・公的機関に早めに相談する――日本政策金融公庫や取引銀行、商工会議所へ。資金繰りが厳しくなってからでは選択肢が狭まります。
- ⑤ 関係書類を保管する――全東信との契約書・入金明細・売上データは、債権届け出や税務処理(貸倒れの処理など)で必要になります。
資金繰りに使える公的支援制度
取引先の倒産で資金繰りが悪化した中小企業向けには、次のような公的支援があります。
| 制度 | 内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| セーフティネット貸付 (経営環境変化対応資金) |
社会的・経済的環境の変化で一時的に業況が悪化した事業者向けの融資。取引先倒産による資金繰り悪化も対象 | 日本政策金融公庫 |
| セーフティネット保証1号 (連鎖倒産防止) |
大型倒産先に売掛金債権等を持つ中小企業の借入を信用保証協会が100%保証。全東信は7月9日時点で未指定だが、外食業界団体が適用を要請しており、国の指定動向に注目 | 市区町村で認定 → 信用保証協会 |
| 中小企業活性化協議会 | 収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援を専門家が無料でサポート。資金繰り相談の入り口として有効 | 各都道府県に設置 |
| 経営相談窓口 | 資金繰り・経営全般の相談、専門家派遣など | 商工会議所・商工会、よろず支援拠点 |
セーフティネット保証1号は、破産等の法的整理を申請した大型倒産先が国に指定されると使えるようになる制度で、指定先への売掛金等が50万円以上ある(または取引依存度20%以上の)中小企業が対象です。全東信が指定されるかどうかで使える支援が変わるため、中小企業庁の発表を継続的に確認してください。
決済手段の切り替えに使える補助金
決済端末の入れ替えやレジ・会計システムの刷新には、補助金が活用できる場合があります。
| 補助金 | 対象になりうる経費 |
|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | POSレジ・券売機・決済連携機能を含む会計ソフトなどの導入費。インボイス対応型のレジ・受発注システムは補助率が手厚い |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓とあわせて行う店舗のキャッシュレス環境整備など(従業員5人以下の商業・サービス業等が対象) |
| 自治体独自のキャッシュレス導入支援 | 決済端末の導入費・手数料を独自に補助する自治体あり。所在地の自治体の制度を確認 |
補助金は「申請から入金まで時間がかかる」点に注意が必要です。目の前の資金繰りは融資・保証制度でつなぎ、決済環境の再構築や店舗投資の場面で補助金を組み合わせるのが現実的です。お住まいの地域や業種で使える制度は、補助金さがすAIで検索できます。
教訓:決済インフラの「一社依存」を見直す
今回の破綻が突きつけたのは、「売上金の通り道」も倒産リスクと無縁ではないという事実です。キャッシュレス化が進むほど、売上の多くは決済代行会社という「他社の財布」を経由して手元に届きます。その会社が倒れれば、通過中のお金は自分のものであっても簡単には戻りません。
- 決済手段を複線化する――カード・QR・電子マネーを別系統の事業者に分け、1社停止でも売上が立つ体制にする
- 入金サイクルと滞留額を把握する――「決済会社の中に常にいくら滞留しているか」を月次で確認し、リスクの大きさを認識しておく
- 取引先・サービス提供元の信用情報に気を配る――報道や信用調査会社の情報で異変の兆しを早めにつかむ
早期入金サービスは資金繰りの助けになる一方、「立替を前提に回す経営」は提供元の破綻に脆いという側面もあります。手元資金に余裕を持たせる王道の備えこそが、こうした突発的な事態への最大の防御になります。
まとめ:経営者がすべきアクション
- ✓ 未入金額を今すぐ確定させる――売上データを整理し、破産管財人からの案内(06-4704-4681)に備える
- ✓ 決済手段の切り替えを急ぐ――代替の決済代行やQR決済でカード離れによる機会損失を最小化する
- ✓ 資金繰りは公的支援に早めに相談する――日本政策金融公庫のセーフティネット貸付、中小企業活性化協議会など。ヤミ金・怪しい回収業者には絶対に頼らない
- ✓ セーフティネット保証1号の指定動向を確認する――指定されれば信用保証協会の100%保証付き融資が使える
- ✓ 決済の一社依存を見直す――複数系統の決済手段と手元資金の厚みで、次の「まさか」に備える
参考資料
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