ものづくり補助金と事業再構築補助金の違い|どちらを申請すべき?
中小企業が活用できる代表的な補助金として「ものづくり補助金」と「事業再構築補助金」があります。どちらも数千万円規模の補助を受けられる制度ですが、目的・対象経費・補助率・申請要件は大きく異なります。本記事では両制度を多角的に比較し、自社の状況に応じてどちらを選ぶべきかを具体的なデータをもとに解説します。なお、2025〜2026年度にかけて両制度とも再編が予定されているため、最新動向もあわせて確認してください。
1. 制度の目的・概要
両補助金は名称が似ていますが、支援の方向性は根本的に異なります。一言で表すと、既存事業を強化するならものづくり補助金、新たな事業に踏み出すなら事業再構築補助金です。
| 項目 | ものづくり補助金 | 事業再構築補助金 |
|---|---|---|
| 正式名称 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 事業再構築補助金 |
| 目的 | 革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善による生産性向上 | ポストコロナ時代の経済変化に対応するための事業再構築・構造転換 |
| 対象事業 | 既存事業の強化・生産性向上 | 業種転換・新規事業・事業転換など |
| 予算規模 | 約1,000億円 | 約1兆円(約10倍) |
予算規模は事業再構築補助金がものづくり補助金の約10倍と大きく、それだけ多くの事業者が活用できる制度となっています。
2. 対象者・申請要件
両補助金とも中小企業・個人事業主が主な対象ですが、対象範囲と要件に違いがあります。
| 項目 | ものづくり補助金 | 事業再構築補助金 |
|---|---|---|
| 対象法人 | 中小企業・小規模事業者・個人事業主・企業組合・社会福祉法人等 | 中小企業・中堅企業(資本金10億円未満)・個人事業主等 |
| 本社所在地 | 日本国内 | 日本国内 |
| 従業員要件 | 第21次より最低1名の給与支給従業員が必要(0名は申請不可) | 各枠の要件に準ずる |
| 認定支援機関 | 不要(社内で事業計画策定可) | 必要(認定支援機関との連携必須) |
| 賃上げペナルティ | あり(未達時に制裁措置) | なし |
中堅企業はものづくり補助金の対象外
資本金10億円未満でも中小企業の規模を超える「中堅企業」は、ものづくり補助金の対象外となります。中堅企業が大型補助金を活用したい場合は、事業再構築補助金(または後継の新事業進出補助金)が選択肢となります。ものづくり補助金の賃上げペナルティに注意
ものづくり補助金には賃上げ目標の達成が求められ、未達の場合は一定期間(未達報告から1年半以内)に申請したものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などの採択率が下がるペナルティがあります。事業再構築補助金にはこのペナルティ規定はありません。3. 補助額・補助率・対象経費
補助額・補助率・対象経費の違いは申請先を選ぶうえで最も重要な判断材料です。
| 項目 | ものづくり補助金 | 事業再構築補助金 |
|---|---|---|
| 通常枠 補助上限 | 最大1,250万円(上限4,000万円の枠あり) | 成長分野進出枠(通常)3,000万円 GX進出類型:中小5,000万円・中堅1億円 |
| 補助率(中小企業) | 1/2(小規模事業者は2/3) | 1/2〜3/4(枠・類型により異なる) |
| 収益納付 | 求められない | 一定条件で発生する場合あり |
| 設備費 | ◎ 対象 | ◎ 対象 |
| 建物費 | ✕ 対象外 | ◎ 対象 |
| 広告宣伝費・販売促進費 | ✕ 対象外 | ◎ 対象 |
| 研修費 | ✕ 対象外 | ◎ 対象 |
| 事前着手申請 | ✕ なし | △ 第13回以降は廃止 |
建物費・広告費・研修費が必要な場合は事業再構築補助金一択
店舗・工場の建築、新事業の広告展開、従業員研修を補助対象に含めたい場合、ものづくり補助金ではこれらは補助対象外です。必然的に事業再構築補助金(または新事業進出補助金)を選択することになります。小規模事業者(常時使用する労働者数20名以下、商業・サービス業は5名以下)に該当する場合、ものづくり補助金では補助率が2/3に引き上げられるため、設備投資が中心の案件であればものづくり補助金の方が経済的に有利なケースがあります。
4. 採択率・実績データ
採択率の観点では、ものづくり補助金の方が高い傾向にあります。
| 補助金 | 回次・条件 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 第19次 | — | — | 31.8% |
| ものづくり補助金 | 第20次 | — | — | 33.6% |
| ものづくり補助金 | 第21次 | — | — | 34.1% |
| ものづくり補助金 | 第13次(一般型) | 3,261件 | 1,903件 | 58.35% |
| 事業再構築補助金 | 第5次(全体) | 21,035件 | 9,707件 | 46.1% |
| 事業再構築補助金 | 第5次(中小通常枠) | — | — | 39.8% |
| 事業再構築補助金 | 第8次(全体) | 12,591件 | 6,456件 | 51.3% |
ものづくり補助金は近年30%台前半での推移が定着しており、採択ハードルは決して低くありません。一方、事業再構築補助金も40〜50%台で推移しており、クオリティの高い事業計画書があれば採択は十分狙えます。採択率だけで判断するのではなく、自社の事業内容に合った補助金を選ぶことが最優先です。
5. 申請フロー・スケジュール
申請手続きの複雑さにも違いがあります。
ものづくり補助金の申請フロー
- 公募要領の確認
- GビズIDプライムアカウントの取得
- 必要書類の準備(事業計画書・決算書等)
- 電子申請システム(jGrants)へのログイン・内容入力
- 必要書類の添付・システム上での自動チェック・送信
- 外部有識者による審査(申請締切から約2か月後に採択通知)
事業再構築補助金(第13回)のスケジュール
- 公募開始:2025年1月10日(金)
- 申請締切:2025年3月26日(水)18:00
- 採択発表:2025年6月下旬〜7月上旬頃
事業再構築補助金:第13回より事前着手が完全廃止
第13回公募から、事前着手はいかなる理由があっても一切認められなくなりました。交付決定を受けた日付以降に契約(発注)を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したもののみが補助対象経費となります。過去の慣例で事前に発注・支払いを行うと補助対象外になるため注意が必要です。認定支援機関の関与が必要かどうかも重要な違い
ものづくり補助金は社内で事業計画を策定できますが、事業再構築補助金は認定支援機関(税理士・金融機関・商工会議所等)の確認・連携が必須です。認定支援機関のサポートを得るには一定の時間と費用がかかる点を考慮してください。6. 申請のコツ・注意点
ものづくり補助金のポイント
- 審査項目(革新性・優位性・実現可能性・適格性等)は公募要領に明記されており、事業計画書の作成前に必ず確認する必要があります。
- 補助申請金額が一定額以上の事業者はオンライン口頭審査が実施されます。個人事業主本人または法人代表者が1人で臨む必要があるため、経営者自身が事業計画を深く理解していることが前提となります。
- 設備投資の規模が企業の財務体力に見合っていない「過剰投資」「不適切投資」は審査で厳しくチェックされ、不採択の主要因となります。
- 過去3年以内に交付決定を2回以上受けている場合は再申請が不可。1回の場合は減点措置の対象となります。
事業再構築補助金のポイント
- 採択率を左右するのは「事業計画書」の質です。事業再構築の必要性・有望な事業テーマ・具体的な事業計画の3点がわかりやすく記載されているかが審査の肝となります。
- 賃上げ計画を盛り込んで申請する必要があります。未達の場合、その後のものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金の採択率にも影響が出ます。
- 既存顧客への販売ではなく新市場・新顧客の開拓が前提となるため、ものづくり補助金と比べて事業リスクは高くなります。
7. どちらを選ぶべきか:判断チャート
以下の判断基準をもとに、自社の状況に照らし合わせて選択してください。
| 状況・条件 | 推奨する補助金 | 理由 |
|---|---|---|
| 既存事業の設備投資・生産性向上 | ものづくり補助金 | 目的・対象経費が合致 |
| 業種転換・新規事業への参入 | 事業再構築補助金 | 事業再構築が要件の中核 |
| 建物建設・広告宣伝費・研修費が必要 | 事業再構築補助金 | ものづくり補助金では対象外 |
| 小規模事業者(製造業等20名以下)で設備投資 | ものづくり補助金 | 補助率2/3で有利 |
| 中堅企業(中小企業規模超・資本金10億円未満) | 事業再構築補助金 | ものづくり補助金の対象外 |
| 高額補助(5,000万円超)が必要 | 事業再構築補助金 | GX進出類型で最大1億円 |
| 既存顧客向けの改良・改善が中心 | ものづくり補助金 | リスクが低く事業成功確率が高い |
| 認定支援機関へのアクセスが難しい | ものづくり補助金 | 認定支援機関が不要 |
2つの補助金の併用も可能
複数の事業を展開している場合、事業Aでものづくり補助金、事業Bで事業再構築補助金をそれぞれ申請・採択されれば、両方の補助金を受け取ることができます。ただし、同一事業での重複申請はできません。8. 2025〜2026年度の最新動向
両補助金とも、2025〜2026年度にかけて大きな制度変更が予定されています。申請を検討する際は最新の公募要領を必ず確認してください。
ものづくり補助金:新事業進出補助金との統合へ
ものづくり補助金と新事業進出補助金が「新事業進出・ものづくり補助金(仮称)」として統合される方向で検討が進んでいます。中小企業省力化投資補助金も含めたパッケージとして、総額2,960億円規模の支援策として再編される予定です。令和7年度補正予算では「稼ぐ力の抜本的強化」「大胆な生産性向上投資」が重点課題として掲げられており、GX・DX関連投資への補助率優遇や賃上げ事業者への加点強化が想定されます。
事業再構築補助金:新事業進出補助金が後継に
事業再構築補助金はコロナ禍の経済変化に対応するために創設された制度ですが、2024年度以降は「中小企業新事業進出補助金」がその役割を引き継ぐ形となっています。新事業進出補助金は「中小企業・小規模事業者の成長につながる新事業進出・事業転換を重点的に支援」する制度で、補助上限は従業員数に応じて最大9,000万円(従業員20名以下でも2,500万円)です。
制度変更に注意:申請前に必ず最新情報を確認
両補助金の制度・公募要領は年度や公募回次によって変更されます。補助上限額・補助率・対象経費・申請要件が変わる可能性があるため、申請前には必ず各公式サイトで最新の公募要領を確認してください。まとめ:ものづくり補助金 vs 事業再構築補助金
- • 目的の違い:ものづくり補助金は既存事業の生産性向上、事業再構築補助金(新事業進出補助金)は新規事業・事業転換を支援する制度です。
- • 対象経費の違い:建物費・広告宣伝費・研修費が必要な場合は事業再構築補助金しか選択肢がありません。設備投資中心であればものづくり補助金が適しています。
- • 補助額の違い:高額補助(5,000万円超)が必要な場合は事業再構築補助金(GX進出類型で最大1億円)が有利です。
- • 補助率の違い:小規模事業者はものづくり補助金で2/3の補助率が適用され、設備投資であれば経済的に有利な場合があります。
- • 採択率:直近の数値ではものづくり補助金30〜34%台、事業再構築補助金40〜51%台で推移。採択率だけで選択せず、事業内容との適合性を最優先にしてください。
- • 申請要件:事業再構築補助金は認定支援機関の関与が必須で申請要件が厳しい。ものづくり補助金は賃上げペナルティに注意が必要です。
- • 2026年度以降:両制度とも再編が予定されており、申請前に最新の公募要領を必ず確認してください。
- • 併用:異なる事業で両方の補助金を同時に申請・受給することは可能です。
参考情報
本記事の作成にあたり、以下の公的機関・情報源を参照しました。
-
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公式サイト(ものづくり補助金総合サイト)
https://portal.monodukuri-hojo.jp/ -
事業再構築補助金 事務局公式サイト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/ -
ミラサポplus(経済産業省 中小企業庁)
https://mirasapo-plus.go.jp/ -
jGrants(電子申請システム)
https://www.jgrants.go.jp/ -
GビズID(補助金申請アカウント)
https://gbiz-id.go.jp/
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