保育園・託児所の開業で使える補助金・助成金【2025-2026年度版】
保育園・託児所の開業には多額の初期費用がかかる一方、施設形態に応じた複数の補助金・助成金制度が整備されています。認可保育園、小規模認可保育園、企業主導型保育施設、認可外保育所(託児所)では利用できる制度が大きく異なります。本記事では2025〜2026年度の最新情報をもとに、各制度の補助額・補助率・申請フローを体系的に整理しています。
1. 施設形態別:利用できる補助金の全体像
保育施設の開業で利用できる補助金は、施設の認可区分によって根本的に異なります。認可を受けた施設ほど手厚い公的補助が得られますが、開設要件や審査が厳しくなります。まず自施設がどの区分に該当するかを確認することが最初のステップです。
| 施設形態 | 主な補助金 | 開設までの期間 | 設置主体 |
|---|---|---|---|
| 認可保育園 | 保育所等整備交付金、処遇改善加算、月額運営補助金など | 2〜3年 | 社会福祉法人・学校法人等 |
| 小規模認可保育園(地域型) | 保育所等整備交付金、改修費等支援事業 | 4〜5ヶ月 | 個人・法人可 |
| 企業主導型保育施設 | 整備費助成金、運営費助成金 | 施設規模による | 企業(法人) |
| 認可外保育所・託児所 | IT導入補助金、キャリアアップ助成金など限定的 | 比較的短期 | 個人・法人可 |
認可外施設は補助が限定的
認可外保育所・託児所は、厚生労働省の定める基準を満たしていない施設のため、認可施設と比較して助成金・補助金の支給が大幅に制限されます。開業時に資金調達を重視する場合は、認可取得の可能性を先に検討することを推奨します。2. 保育所等整備交付金(就学前教育・保育施設整備交付金)
保育所等整備交付金は、保育所・小規模保育事業所の新設・改修・整備に要する費用を補助する国の主要制度です。防音壁の整備や防犯対策強化にかかる費用も対象となります。令和4年度予算は453億円、令和3年度補正予算241億円が計上されています。
補助率
| 区分 | 国 | 市区町村 | 申請者負担 |
|---|---|---|---|
| 通常 | 1/2 | 1/4 | 1/4 |
| 新子育て安心プラン参加等一定要件を満たす場合 | 2/3 | 1/12 | 1/4 |
設置主体要件
保育所等整備交付金の申請者は、社会福祉法人・日本赤十字社・公益社団法人・公益財団法人・学校法人に限定されます(保育所および認定こども園については公立を除く)。個人事業主や一般の株式会社は対象外となるため注意が必要です。
保育所等改修費等支援事業(賃貸物件向け)
賃貸物件で保育所を設置する場合や、認可外施設から認可へ移行する際の改修費を補助する制度です。新設または定員拡大の場合、1施設あたりの補助基準額は以下の通りです。
| 利用定員 | 補助基準額(上限) |
|---|---|
| 19名以下 | 1,500万円 |
| 20名以上59名以下 | 2,700万円 |
| 小規模認可保育園(改修費等) | 3,500万円程度(見込み) |
3. 企業主導型保育事業の助成金
企業主導型保育事業は、平成28年度に創設された制度で、事業主拠出金を財源として従業員向けの保育施設設置を支援するものです。整備費と運営費の両方に助成が受けられる点が特徴です。令和4年度の完了報告審査では運営費4,492件・整備費34件の審査が完了しています。
整備費助成金(工事費)
助成対象と認められた工事費の4分の3が基本助成金となります。定員規模別の上限単価は以下の通りです。
| 定員規模 | 一般地域(上限) | 都市部(上限) |
|---|---|---|
| 定員20名以下 | 7,580万円 | 8,360万円 |
| 定員21〜30名 | 7,950万円 | 8,760万円 |
| 定員31〜40名 | 9,260万円 | 1億190万円 |
工事事務費
設計監理料・通信運搬費・印刷製本費などが対象で、助成額は工事費の2.6%相当額が上限となります。
運営費助成金
子ども1人あたり月額15〜30万円前後が助成されます。月齢・年齢が低いほど助成額が高く設定されており、0歳児は特に手厚い水準になっています。
申請窓口について
企業主導型保育事業の助成金申請は、企業主導型保育事業ポータルサイト(https://www.kigyounaihoiku.jp/)から電子申請で行います。初回利用時には企業IDの登録が必要で、整備費と運営費では申請方法が異なります。運営細則の厳守が必須
企業主導型保育事業の助成金には細かなルールが多数あります。規定を正しく理解せずに運営した場合、助成金の返還を求められるケースもあります。申請前に運営細則を精読し、不明点は公益財団法人児童育成協会(審査機関)へ確認することを推奨します。4. 認可保育園の月額運営補助金
認可保育園は開設後、国・都道府県・市区町村から毎月の運営補助金を受け取ることができます。自治体によって金額は異なりますが、千葉県浦安市の事例では以下のような補助が行われています。
- 保育対策総合支援事業費補助金:基準額3,200万円(国・市が補助)
- 市独自換算額:900万円
- 私立保育所等施設整備費補助金:定員数×280万円
- 月額補助金:月におよそ700万円(施設規模・自治体により異なる)
認可取得後は毎月の補助金収入が安定するため、適切な経営計画のもとで運営すれば経営難に陥るリスクは低い水準に抑えられます。
設立には2〜3年の準備期間が必要
認可保育園の設立は、都道府県知事の認可取得が必要で、開園まで通常2〜3年かかります。一方、定員19名以下の小規模認可保育園(地域型保育事業)であれば4〜5ヶ月での開園が可能で、個人でも申請できます。5. ICT化・業務効率化に関する補助金
2025年度から保育施設のICT化支援が強化されており、開業時・開業後の業務効率化に活用できる補助が整っています。
保育所等におけるICT推進等事業(こども家庭庁)
保育計画・記録、園児の登降園管理、保護者連絡などのICT化を目的とした事業です。補助額は1施設あたり以下の通りです。
| 導入内容 | 補助額(上限) |
|---|---|
| システム導入のみ(機能数による) | 最大20万円〜60万円 |
| システム+端末等(PC・タブレット)の同時購入 | 最大70万円〜100万円 |
IT導入補助金(経済産業省)
認可外保育所を含む中小企業・小規模事業者が対象の補助金です。業務効率化を目的とするITソフトウェア導入費・導入関連費用が対象となります。スマートフォン・タブレット・PCなどのハードウェア単体は補助対象外です。申請はIT導入支援事業者経由で行います。
6. 人材確保・処遇改善に関する助成金
保育士不足が深刻な中、職員の処遇改善・採用支援に特化した助成金も複数存在します。開業後の人材確保コスト削減に直結する制度です。
処遇改善等加算(2025年度から一本化)
従来の「処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲ」は制度が複雑で事務負担が大きかったため、2025年度から一本化されました。1人あたり4万円を超えない範囲で調整が可能になり、特定役職だけでなく若手・中堅・全職員へのベースアップなど、施設の実情に合わせた柔軟な賃金改善が可能です。
キャリアアップ助成金(厚生労働省)
非正規雇用の保育士・スタッフの正社員化や処遇改善に取り組んだ事業主に支給される助成金です。有期雇用・短時間・派遣労働者のキャリアアップを支援するもので、保育所でも広く活用されています。
働き方改革推進支援助成金(都道府県労働局)
時間外労働の削減・年次有給休暇の促進など、職場環境整備に取り組む中小企業事業主が対象です。申請窓口は都道府県労働局となります。
事業所内保育施設設置・運営等支援助成金
過去に助成金を受給した事業主は、6年目〜10年目(連続する5年間を限度)の運営費を受給することができます。助成率は大企業・中小企業ともに1/3です。
7. 申請フローと開業スケジュール
施設形態によって申請先・申請時期・審査内容が異なります。開業予定時期の逆算から準備を始めることが重要です。
認可保育園の申請フロー
- 開業予定地の市区町村保育課・児童福祉担当窓口へ事前相談
- 施設基準・保育士配置要件・運営方針の確認
- 消防署による火災予防・避難経路確認
- 保健所による衛生管理確認
- 申請書類の提出・審査(約2〜3年)
- 都道府県知事による認可・開設
企業主導型保育事業の申請フロー
- 企業主導型保育事業ポータルサイトで企業ID登録
- 整備費申請(着工前に申請が必要)
- 施設完成後、完了報告の提出
- 運営費申請(毎年度、電子申請)
- 公益財団法人児童育成協会による審査・決定
認可外保育所・託児所の届出フロー
児童福祉法により、認可外保育施設を設置した場合は事業開始日から1か月以内に市区町村への届出が義務付けられています。必要書類は自治体によって異なるため、開設前に各自治体窓口への確認が必要です。
| 施設形態 | 申請先 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 認可保育園 | 市区町村保育課 → 都道府県 | 2〜3年 |
| 小規模認可保育園 | 市区町村保育課 | 4〜5ヶ月 |
| 企業主導型保育施設 | 企業主導型保育事業ポータル(電子申請) | 数ヶ月〜1年 |
| 認可外保育所・託児所 | 市区町村(開設後1ヶ月以内に届出) | 比較的短期 |
2026年4月開設を目指す場合
令和8年(2026年)4月開設を目指す場合、原則として令和8年4月が開設期限となります。工期の都合上に間に合わない場合は最大で令和9年4月まで延長可能(入所枠30人以上・50人以上が対象)。各市区町村の募集時期は異なるため、早期に担当窓口へ問い合わせることが重要です。8. 2025〜2026年度の最新動向
保育関連の制度は毎年度改正が行われています。2025〜2026年度に特に注目すべき動向を整理します。
処遇改善加算の一本化(2025年度〜)
従来の処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲが一本化され、1人あたり4万円を超えない範囲での柔軟な賃金改善が可能になりました。事務負担の軽減と、若手・中堅を含む全職員への配分が実現しやすくなっています。
こども誰でも通園制度(2026年度〜全国展開)
親が就労していなくても保育所等を利用できる「こども誰でも通園制度」が2026年度から全国展開されます。利用上限は月10時間、標準利用料は1時間300円とされており、既存施設の稼働率向上につながる可能性があります(こども家庭庁発表)。
保育ICT化補助の継続強化(2025年度)
「保育所等におけるICT推進等事業」が継続実施され、保育業務のデジタル化を支援しています。端末等を同時購入する場合、1施設あたり最大100万円の補助が受けられます。
小規模事業者持続化補助金も活用可能
認可外保育所・託児所を含む小規模事業者は、経済産業省の「小規模事業者持続化補助金」も活用できます。販路開拓や商品・サービスの改良・開発に要する経費の一部が補助対象となります。認可施設では得られない補助の選択肢として検討の余地があります。9. 申請の注意点と資金計画
事業計画書の精度が採択に直結する
補助金の採択は申請内容・予算状況によって変動します。施設の設置目的・地域ニーズ・定員計画・収支計画を具体的に記載した事業計画書の作成が採択率向上につながります。
中長期の経営計画が安定経営の前提
入園した園児は最低2〜3年在籍するため、短期的な収支計画だけでは不十分です。入卒園による園児数変動、保育士の採用・離職、処遇改善加算の見直しなどを織り込んだ3〜5年単位の経営計画を策定することが安定運営の基盤となります。
補助金は原則として後払い・条件付き
多くの補助金・助成金は、費用を先払いした後に申請・受給する仕組みです。開業時の初期費用は自己資金や融資で確保した上で、補助金を受け取ることが基本となります。日本政策金融公庫や自治体の開業融資制度との併用も検討してください。まとめ
- ● 利用できる補助金は施設形態(認可・企業主導型・認可外)によって大きく異なる。認可取得が資金調達面では最も有利。
- ● 保育所等整備交付金は補助率最大2/3。設置主体は社会福祉法人・学校法人等に限定される。
- ● 企業主導型保育事業は整備費(工事費の3/4)+運営費(月額15〜30万円/人)の両面で助成が受けられる。
- ● 小規模認可保育園(定員19名以下)は4〜5ヶ月で開設可能。個人での申請も可能で、改修費補助基準額は約3,500万円。
- ● 2025年度から処遇改善加算が一本化され、職員への配分がより柔軟になった。
- ● ICT化補助金は1施設あたり最大100万円(端末同時購入の場合)。認可外施設も経産省のIT導入補助金を活用できる。
- ● 補助金は後払いが原則。開業初期費用は融資等で確保し、補助金との組み合わせで資金計画を組む必要がある。
- ● 2026年4月開設を目指す場合は今すぐ市区町村の保育課へ問い合わせることが必要。
参考情報
-
・ こども家庭庁 公式サイト(企業主導型保育事業・保育関連予算)
https://www.cfa.go.jp/ -
・ 企業主導型保育事業ポータルサイト(公益財団法人児童育成協会)
https://www.kigyounaihoiku.jp/ -
・ 厚生労働省 事業所内保育施設設置・運営等支援助成金
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/ryouritsu01/dl/hoikupanhu.pdf -
・ 各都道府県・市区町村の保育課(認可保育園の設置・運営情報)
※各自治体の公式ホームページをご参照ください -
・ 保育園認可・企業主導型保育事業手続き代行センター
https://www.hoiku-ninka.com/
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