労働環境整備加算・処遇改善加算と補助金|給与引き上げ・待遇改善で使える支援制度完全ガイド2025-2026
少子高齢化の進行とともに介護人材不足が深刻化するなか、2024年6月の介護報酬改定では従来の3加算が「介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。さらに2026年6月には令和8年度介護報酬改定(期中改定)が施行され、訪問看護・訪問リハビリテーション等への対象拡大や新区分(Ⅰロ・Ⅱロ)の創設が実現しています。事業所にとって制度を正確に把握することが給与引き上げと人材確保の鍵となります。本記事では加算の仕組み・申請フロー・注意点を具体的な数値とともに整理し、あわせて活用できる関連補助金・助成金もまとめて解説します。
1. 介護職員等処遇改善加算とは
2024年6月の介護報酬改定により、①介護職員処遇改善加算、②介護職員等特定処遇改善加算、③介護職員等ベースアップ等支援加算の3加算が「介護職員等処遇改善加算」へ一本化されました。加算ごとに分散していた算定要件・申請書類が統合されたことで、事業所の事務負担が軽減されています。
制度の目的は介護職員の賃金水準を引き上げ、業界全体の人材確保・定着を促すことです。介護報酬は公定価格であるため事業所単独では賃金を上げにくい構造があり、加算によって財源を確保する仕組みとなっています。
加算率は2024年度の改定で引き上げられており、最も大きな訪問介護では2.1ポイント増となりました。処遇改善加算(Ⅰ)を算定する訪問介護事業所は合計24.5%の加算率を適用できます。また事業所は介護職員に対して2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップを行うことが求められています。
| 加算区分 | 特養の加算率 | 主な要件水準 |
|---|---|---|
| 新加算(Ⅰ) | 14.0% | キャリアパス要件・職場環境等要件をすべて充足 |
| 新加算(Ⅱ) | 13.6% | 一部要件を充足 |
| 新加算(Ⅲ) | 11.3% | 基本要件を充足 |
| 新加算(Ⅳ) | 9.0% | 最低限の要件を充足 |
加算率はサービス種別で異なります
上表は特別養護老人ホーム(特養)の数値です。訪問介護(Ⅰ)は24.5%など、サービス類型によって加算率が異なります。自事業所の算定率は厚生労働省公表の一覧表で必ず確認してください。2. 対象サービスと対象職員
介護職員等処遇改善加算はすべての介護サービスが算定できるわけではありません。基準上、介護職員が配置されていないサービスは対象外です。
従来加算算定の対象外だったサービス(2026年5月まで)
- (介護予防)訪問看護
- (介護予防)訪問リハビリテーション
- (介護予防)福祉用具貸与・特定福祉用具販売
- (介護予防)居宅療養管理指導
- 居宅介護支援・介護予防支援
2026年6月から対象が大幅に拡大(施行済み)
令和8年度介護報酬改定(期中改定)により、2026年6月から訪問看護(加算率1.8%)・訪問リハビリテーション(同1.5%)・居宅介護支援/介護予防支援(同2.1%)等が新たに加算算定の対象となりました。PT・OT・STを含む介護従事者全体が賃金改善の対象に拡大されています。新たに対象となるサービスは、令和8年度の特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用、または社会福祉連携推進法人への所属等)を満たすことで算定できます。対象職員については「介護職員への配分を基本とし、とくに経験・技能のある職員に重点的に配分する。ただし事業所内で柔軟な配分を認める」というルールが統一されています。パートや派遣職員も加算の対象であり、雇用形態は問いません。
3. 2025年度から強化された職場環境等要件
2025年度より「職場環境等要件」が正式に適用されました。6区分の取り組みのうち、加算Ⅰ・Ⅱは2区分以上、加算Ⅲ・Ⅳは1区分以上の実施が必要です。
| 加算区分 | 必要な取り組み数 | 情報公表 |
|---|---|---|
| 加算Ⅰ・Ⅱ | 6区分から2つ以上 | 介護サービス情報公表制度またはHPで公開必須 |
| 加算Ⅲ・Ⅳ | 6区分から1つ以上 | 公表推奨 |
加算ⅠまたはⅡを算定する場合、取り組み内容を介護サービスの情報公表制度の「事業所の特色」欄に記載する必要があります。情報公表の対象外事業所であっても、自社ウェブサイト等で外部から確認できる形での公開が求められます。
経過措置・緩和措置の扱いに注意
2025年度は「年度中に要件整備を行うと誓約する」ことで職場環境等要件を満たすとみなす経過措置や、「介護人材確保・職場環境改善等事業」(2024年度補正予算事業)への申請を要件充足とみなす取り扱いがありました。2026年度(令和8年度)は6月施行の期中改定にあわせて、新たに対象となるサービス向けの特例要件など別の緩和措置が設けられています。自事業所に適用される取り扱いは、厚生労働省の最新通知と自治体の案内で必ず確認してください。4. 申請フローと提出期限
処遇改善加算の申請は、原則として毎年度「処遇改善計画書」と「体制届」を提出することで行います。以下に基本的なスケジュールの考え方を示します(2025年度の例。具体的な期限は年度・自治体により異なります)。
| 対象期間 | 提出期限 | 提出書類 |
|---|---|---|
| 2025年4・5月分算定 | 2025年4月15日まで | 処遇改善計画書、体制届(区分変更の場合) |
| 2025年6月分以降算定 | 算定月の前々月末日まで | 処遇改善計画書、体制届(新規・区分変更の場合) |
| 実績報告書 | 各自治体の指定期限 | 実績報告書(2年間保存義務あり) |
- 加算区分を決定し、要件充足状況を確認する
- 処遇改善計画書を作成(厚生労働省・自治体HPで様式を入手)
- 新規取得または区分変更の場合は体制届を添付
- 都道府県・市区町村の指定窓口(または電子申請)に提出
- 年度末に実績報告書を提出・2年間保存
なお2026年度(令和8年度)は、6月施行の期中改定に伴い4〜5月分と6月分以降で加算区分・算定率・届出様式が異なります。改定後の区分での届出期限は自治体ごとに案内されているため、所管窓口の最新情報に従って手続きを進めてください。
期限超過は加算不認定のリスクがあります
計画書の提出期限を守らなかった場合、処遇改善加算の算定が認められない可能性があります。近年は実地指導で書類の不備が指摘されるケースが増加しており、期限管理と書類整備は経営上の重要課題です。5. 賃金改善の要件と配分ルール
加算の算定には以下の3要件をすべて満たす賃金改善が必要です(基準年度等の細部は年度により異なります)。要件を満たせない場合、不正請求として加算額の全額返還や行政処分となる可能性があります。
- 翌年度への繰越額を除く処遇改善関連加算の全額以上の賃金改善を行うこと
- 基準年度と比べて増加した加算額以上の新たな賃金改善を行うこと
- 処遇改善加算はあくまで既存賃金への「上乗せ」であり、現行賃金を引き下げて加算で補填することは不可
配分に際しては、全職員への賃金改善、経験・資格・職務内容に応じた配分、透明性の確保が求められます。指導監査では就業規則・賃金規程の内容確認(キャリアパス要件Ⅰ)と、研修計画の策定・実施状況(キャリアパス要件Ⅱ)が特に指摘されやすい項目です。
賃金引き下げ後の加算活用は不正請求に該当します
処遇改善加算は「現在の賃金に上乗せして賃上げを行う」ための制度です。現行賃金を削減したうえで加算分で穴埋めする運用は制度の趣旨に反し、行政処分の対象となります。6. 介護人材確保・職場環境改善等補助金(2024年度補正予算)
処遇改善加算の取得に加え、生産性向上に向けた取り組みを行っている事業所を対象に、職場環境改善または人件費改善に必要な費用を補助する制度です。補助額は「基準月(原則2024年12月)の介護総報酬 × サービス類型別交付率」で算定されます。
対象は処遇改善加算Ⅰ〜Ⅳを算定し、所定の要件を満たした介護サービス事業所です。単なる賃上げ支援にとどまらず、人材の定着や現場の生産性向上を総合的に支援することが狙いとされています。
対象経費と対象外経費
| 対象となる経費 | 対象外の経費 |
|---|---|
| 人件費の改善に必要な費用、介護助手等補助スタッフの確保費用など | ICT機器・介護ロボット等のハードウェア購入費、介護職員の直接採用コスト(求人募集費) |
東京都の例では、令和7年4月15日(火)までに「介護人材確保・職場環境改善等事業計画書」を都知事に提出する必要がありました。本事業(2024年度補正予算分)の申請受付はすでに終了しています。
令和7年度補正予算でも後継の賃上げ支援事業が実施
令和7年度補正予算では、後継として「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が実施されています。2025年12月〜2026年5月分の賃上げ相当額を補助するもので、基準月(原則令和6年12月等)に処遇改善加算Ⅰ〜Ⅳを算定していること等が要件です。訪問看護やケアマネジャー等も対象に含まれる点が特徴で、申請期間・様式は都道府県ごとに異なるため、各自治体の公式ページで最新の受付状況を確認してください。7. 介護以外でも使える関連助成金
介護職員等処遇改善加算と組み合わせて活用できる厚生労働省・中小企業庁の支援制度を紹介します。
① 業務改善助成金
賃金引き上げを行う中小企業・小規模事業者を対象に、設備投資や業務プロセス改善の費用を助成します。2026年度(令和8年度)は通年募集から短期集中型に変更され、交付申請の受付は2026年9月1日に開始、締切は申請事業場の都道府県の地域別最低賃金発効日の前日または2026年11月30日のいずれか早い日です。賃金引上げコースは従来の4コースから50円・70円・90円の3コースに再編され、助成上限は引上げ額・労働者数・事業場規模に応じて最大600万円(事業主単位でも年間600万円が上限)とされています。助成率の区分も事業場内最低賃金1,050円を基準に見直されているため、最新の交付要綱で確認してください。
みなし大企業は対象外(2025年度から)
2025年度の制度改正により、大企業の子会社等にあたる「みなし大企業」は業務改善助成金の対象外となりました。発行株式総数・出資価格の2分の1以上を同一の大企業が所有している場合等が該当します。② キャリアアップ助成金
非正規雇用から正規雇用への転換や賃上げを支援する制度です。正社員化コースは中小企業で第1期40万円+第2期40万円の最大80万円(第2期の満額受給は重点支援対象者の正社員化が条件)。2026年度(令和8年度)には、正社員転換制度の概要や転換実績を自社サイト等で公表した場合に1事業所あたり20万円(大企業15万円)を加算する「情報公表加算」が新設されました。「賃金規定等改定コース」は4区分で、中小企業の場合、賃金引き上げ率3〜4%未満で4万円、4〜6%未満で5万円、6%以上で7万円が支給されます。なお「社会保険適用時処遇改善コース」(年収の壁対策)は令和7年度末で廃止されています。
③ 働き方改革推進支援助成金
労働環境の改善や働き方改革を推進する中小企業を対象とした助成制度です。時間外労働の上限規制対応や労働生産性向上のための設備・システム導入を支援します。
| 制度名 | 対象 | 主な支援内容 | 所管 |
|---|---|---|---|
| 業務改善助成金 | 中小企業・小規模事業者 | 設備投資・業務改善費用の助成(2026年度は最大600万円、9月1日受付開始) | 厚生労働省 |
| キャリアアップ助成金 | 非正規雇用者を抱える事業主 | 正社員化で中小企業最大80万円/人、賃金規定等改定で最大7万円/人 | 厚生労働省 |
| 働き方改革推進支援助成金 | 中小企業 | 労働環境改善・設備導入費用の助成 | 厚生労働省 |
| 介護人材確保・職場環境改善等補助金 | 処遇改善加算Ⅰ〜Ⅳ算定事業所 | 職場環境改善・人件費改善費用の補助 | 都道府県(国補助) |
これらの制度は重複して申請できる場合があります。自事業所の状況に応じて複数制度の活用を検討することが、限られた経営資源を効果的に活用するうえで重要です。 補助金を検索して組み合わせを確認する
8. 2026年度(令和8年度)改定の主なポイント
令和8年度介護報酬改定(期中改定、改定率+2.03%)が確定し、処遇改善加算に関する以下の見直しが2026年6月に施行されています。
- 対象の拡大:介護職員のみ→介護従事者(PT・OT・ST等のリハビリ専門職を含む)へ拡大
- 新規サービスへの対象拡大:訪問看護(加算率1.8%)・訪問リハビリテーション(同1.5%)・居宅介護支援/介護予防支援(同2.1%)等が2026年6月から算定可能に
- 上乗せ区分の新設:生産性向上・協働化に取り組む事業者向けに加算ⅠロおよびⅡロを設定(訪問介護では最大28.7%の加算率)
- 算定率の見直し:区分ごとの加算率が改定
- 届出スケジュール:2026年4〜5月分と6月分以降で区分・算定率・届出期限が異なるため、時期に応じた対応が必要
新たに対象となった事業所は特例要件を確認
訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援など、2026年6月から新たに加算算定が可能になったサービスの事業所は、令和8年度の特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用、または社会福祉連携推進法人への所属等)の充足とあわせて、キャリアパス要件・職場環境等要件の整備を進めることが算定の前提となります。詳細は厚生労働省の令和8年度介護報酬改定資料で確認してください。まとめ:2025〜2026年度の処遇改善・補助金活用ポイント
- ✅ 2024年6月に3加算が「介護職員等処遇改善加算」へ一本化。事務負担が軽減され、申請しやすくなった
- ✅ 訪問介護(Ⅰ)の加算率は24.5%。事業所は2024年度+2.5%・2025年度+2.0%のベースアップが求められる
- ✅ 2025年度から職場環境等要件が正式適用。加算Ⅰ・Ⅱは6区分から2つ以上の取り組みが必要
- ✅ 処遇改善計画書の提出期限は厳守。遅延は加算不認定・返還リスクにつながる
- ✅ 業務改善助成金(2026年度は9月1日受付開始の短期集中型・最大600万円)・キャリアアップ助成金等の関連制度と組み合わせることで支援効果が高まる
- ✅ 2026年6月施行の期中改定(改定率+2.03%)で訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援等へ対象拡大。新対象の事業所は特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用等)を確認する
- ✅ 令和7年度補正予算の「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」(2025年12月〜2026年5月分の賃上げ相当額を補助)は都道府県ごとに申請期間が異なるため早めに確認する
- ✅ 賃金改善はあくまで既存賃金への上乗せ。引き下げ後の補填は不正請求に該当する
参考情報
本記事の作成にあたり、以下の公的機関の情報を参照しました。制度の詳細・最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算」 https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00073.html
- 厚生労働省「賃上げ支援助成金パッケージ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/package_00007.html
- 中小企業庁「賃上げ・最低賃金対応支援特設サイト」 https://www.chusho.meti.go.jp/chingin/index.html
- 東京都「令和7年度介護人材確保・職場環境改善等事業」 https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/shokubakankyo_hojokin_r7
- 埼玉県「令和7年度介護人材確保・職場環境改善等補助金」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0603/kaigo-net/r7kaigozinzaikakuhotouhozyokin.html
- 公益財団法人介護労働安定センター https://www.kaigo-center.or.jp/
※ 本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細・最新情報は必ず各機関の公式サイトおよび所管の都道府県窓口でご確認ください。
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