本文へ移動

公開 · 更新

創業ストーリー 経営者向け

ウォーレン・バフェット|11歳で株を買い、90代でもマクドナルドの朝食を食べる男

ウォーレン・バフェット|11歳で株を買い、90代でもマクドナルドの朝食を食べる男

1942年、11歳のウォーレン・バフェットは姉のドリスと一緒に、1株38ドル25セントでシティーズ・サービス優先株を3株購入しました。株価は27ドルまで下落し、彼はパニックに陥りながらも40ドルで売却。わずか5ドルの利益。しかしその株はのちに202ドルまで上昇します。11歳の少年はこの日、生涯忘れない教訓を得ました——「忍耐」。そして90代になった今も、毎朝オマハのマクドナルドで3ドル17セントの朝食を食べ、1958年に3万1,500ドルで買った同じ家に住み続けています。

オマハの少年——6歳のガム売りから始まった「お金の冒険」

ウォーレン・エドワード・バフェットは1930年8月30日、ネブラスカ州オマハで生まれました。父ハワードは株式ブローカーで、のちに下院議員を務めた人物です。幼い頃から数字に異常な興味を示し、近所の家のポーチに座って行き交う車のナンバープレートの数字を暗記するのが遊びでした。

6歳のとき、バフェットは祖父の食料品店でチューインガムを1パック25セントで仕入れ、近所を一軒一軒回って1枚ずつ5セントで売り歩きました。1パック5枚入りなので、売り切れば25セントが25セントに——つまり利益はわずか2セント。それでも、自分の手で稼いだお金を数える快感に取り憑かれます。

やがてコカ・コーラの6本パックを25セントで祖父の店から仕入れ、1本5セントで近所に売る商売も始めました。利益率は同じく薄利でしたが、「安く仕入れて高く売る」という商売の原理を体で覚えていきます。

(出典: Britannica「Warren Buffett」、Wikipedia「Warren Buffett」)

11歳の初株式投資——忍耐を学んだ5ドルの利益

1942年3月11日、11歳のバフェットは姉ドリスと共にシティーズ・サービス優先株を1株38ドル25セントで3株購入しました。合計114ドル75セント——ガム売り、コーラ売り、新聞配達で貯めたお金です。

しかし買った直後から株価は下落を始め、27ドルまで暴落。姉からは「毎日損が増えている」と責められます。11歳の少年にとって、これは途方もないプレッシャーでした。

株価が40ドルに戻ったところでバフェットは売却。1株あたり5ドル、合計約15ドルの利益。しかし、その後シティーズ・サービスの株価は202ドルまで上昇しました。

もし持ち続けていれば、利益は500ドル以上。11歳のバフェットはこの経験から3つの教訓を得たと、のちに繰り返し語っています。第一に、買値にこだわるな。第二に、小さな利益に飛びつくな。第三に、他人の金を預かると判断が歪む(姉のプレッシャーで売ってしまった)。

(出典: CNBC「How Warren Buffett made his first stock trade at 11」)

ピンボール帝国から投資パートナーシップへ

13歳から14歳にかけて、バフェットはワシントンD.C.でワシントン・ポスト紙の配達員として働きました。月収175ドル——当時の教師の給与を上回る金額です。14歳で初めて確定申告を行い、自転車35ドルと腕時計修理費10.50ドルを業務経費として控除した逸話は有名です。

17歳のとき、友人ドン・ダンリーと共に中古のピンボールマシンを25ドルで購入し、地元の理髪店に設置しました。初日の売上は4ドル。1週間で元手の25ドルを回収。バフェットはすぐに追加のマシンを買い、ワシントンD.C.中の理髪店にピンボールを展開していきます。最終的にこのビジネスを1,000ドル以上で売却しました。

20歳までに貯金は5,000ドル(現在の価値で約5万3,000ドル)に達しています。

1951年、バフェットはコロンビア大学ビジネススクールでベンジャミン・グレアムに師事しました。「バリュー投資の父」と呼ばれるグレアムの下で、「企業の本質的価値より安く買う」という投資哲学を叩き込まれます。

1956年5月5日、25歳のバフェットはオマハに戻り、バフェット・アソシエイツ・リミテッドを設立。7人の投資家から10万5,100ドルを集め、自身の出資はわずか100ドル。運用報酬はゼロ、利益の年率6%を超えた分の25%だけを受け取るという、投資家に極めて有利な条件を提示しました。結果は年平均複利リターン31.6%。市場を圧倒するパフォーマンスでした。

(出典: Wikipedia「Warren Buffett」、PBS「Buffett Timeline」)

バークシャー・ハサウェイ——怒りで買った繊維会社が1兆ドル企業に

1962年、バフェットはニューイングランドの斜陽繊維会社バークシャー・ハサウェイの株を1株7ドル50セントで買い始めました。当時の経営者シーベリー・スタントンが口約束の自社株買い価格を引き下げたことに怒り、経営権を握るために買い増しを続けます。1965年、ついに支配権を獲得。

バフェット自身がのちに「人生最大の過ち」と呼んだこの買収は、しかし結果的に史上最高の投資物語を生むことになります。

1965年から2023年までのバークシャー・ハサウェイの年平均複利成長率(CAGR)は19.8%。同期間のS&P 500の10.2%を大きく上回り続けました。1965年に1万ドルを投資していれば、2023年には約4億ドルになっている計算です。

繊維事業は1985年に閉鎖しましたが、バフェットはバークシャーを保険・エネルギー・鉄道・食品など多角的な事業持株会社に変貌させました。コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、アップルなどへの長期投資でも知られています。

そして、バフェットの生活は何も変わりませんでした。1958年に3万1,500ドルで購入したオマハの家に今も住み、毎朝マクドナルドで朝食を食べます。市場が好調な日はベーコンエッグチーズビスケット(3ドル17セント)、不調な日はソーセージパティ。毎日チェリーコークを含むコカ・コーラを5缶以上飲む習慣も変わりません。

(出典: Wikipedia「Berkshire Hathaway」、CNBC「Buffett's Annual Letter」)

中小企業経営者が学べること

  • 忍耐が最大のリターンを生む — 11歳の初取引で学んだ「早すぎる利益確定」の教訓を、バフェットは90年以上実践し続けています。事業も投資も、短期の変動に振り回されず長期で考える姿勢が複利効果を生みます
  • 報酬体系で信頼を勝ち取る — パートナーシップ設立時、自己資金はわずか100ドル。代わりに「利益が出なければ報酬ゼロ」という条件で投資家の信頼を獲得しました。リスクを自分が負う姿勢は、資金調達の最大の武器です
  • コストを変えない規律 — 億万長者になっても同じ家、同じ朝食、同じ生活。売上が伸びたときに生活コストを上げないことが、事業の安全余裕(マージン・オブ・セーフティ)を守ります
  • 能力の輪(Circle of Competence)を守る — バフェットは自分が理解できない事業には投資しません。ドットコムバブルでIT株を買わず笑われましたが、バブル崩壊後に正しさが証明されました。「わかる領域」で勝負する勇気が重要です
  • 寄付の哲学を事業に活かす — 資産の99%以上を慈善事業に寄付すると宣言し、600億ドル以上を拠出。ビル・ゲイツと共に「ギビング・プレッジ」を創設しました。社会還元の姿勢は、長期的なブランド価値と信頼を築きます

まとめ

ウォーレン・バフェットの「異常な情熱」は、派手さの対極にあります。6歳のガム売りから90代の億万長者まで、やっていることの本質は同じ——「安く仕入れて、長く持つ」。1958年に買った家に住み続け、毎朝同じマクドナルドで3ドル17セントの朝食を食べ、コカ・コーラを5缶飲む。

変わらないことの中にこそ、異常な規律があります。「うまくいっているものを変えない」という忍耐は、最も地味で、最も再現困難な経営戦略です。あなたの事業で「60年間変えなくてもいいもの」は何ですか? それを見つけたとき、バフェットの投資哲学はあなたのものになります。

この記事を書いた人

松田信介
松田 信介 Shinsuke Matsuda

X-HACK Inc. 代表取締役 / PARKLoT CTO

Microsoft for Startups Founders Hub 採択

あわせて読みたい

コラム ·

ChatGPTを全社導入しても「AI導入」は終わっていない――ツール配布とAIネイティブな組織の間にある段差

帝国データバンクの2026年3月調査では生成AIを活用する企業の86.7%が「効果あり」と答えましたが、用途の最多は文章の作成・要約でした。PwCの6カ国調査では日本の推進度は米国並みの87%なのに、期待を大きく上回る効果は9%(米国38%)。McKinseyやHBRのデータもあわせ、ChatGPTやClaudeの契約で「AI導入が進んだ」と感じてしまう理由と、業務・役割・確認の仕組みをAI前提で組み直す「AIネイティブな組織」への段差を整理し、電話窓口を例に最初の一歩を考えます。

コラム ·

中小企業のシステム導入、最多の失敗は「遅延」ではなく「後出しコスト」――3つの原因は発注側の“空席”に行き着く

btobeeが2026年7月に公表した中小企業経営者・役員300人の調査では、システム導入企業の53.2%が失敗やトラブルを経験し、最多は後出しコストによる予算超過(40.0%)、遅延は33.3%でした。JUASの規模別データや海外の大規模IT調査と比べながら、なぜ中小企業では「遅れる」より「膨らむ」のか、人材不足・目的の共有不足・PM不在という3つの原因に共通する欠落は何かを整理し、契約前に決めておくべきことをまとめます。

コラム ·

刃物を渡されたロボットは、危険な指示にどれだけ「ノー」と言えるか──最新ベンチマークが示した現実

独立評価団体Robocurveが2026年9月に公開したベンチマーク「RoboHarm」によれば、OpenAIのGPT-6 Astraは危険な指示100回中97回でロボットアームを動かし60回完遂、安全上の拒否はわずか2回でした。AnthropicのClaude Fable 5.1は刺傷タスクは全拒否した一方、他4タスクは一度も拒否せず34回完遂。生データまで遡って検証し、ロボット・AIエージェント導入時に経営者が確認すべき安全性のポイントを整理します。