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経営者向け 飲食店 開業準備

飲食店の開業|物件より先に決めるべきこと

飲食店開業の正しい順序

飲食店を開業しようと決めたとき、最初に物件探しを始める方は少なくありません。しかし、飲食店経営の専門家は口を揃えてこう言います。「物件を先に決めてはいけない」。2025年の飲食店倒産は過去最多の900件超(帝国データバンク調べ)。失敗する店と成功する店の分かれ目は、開業前の「行動の順序」にあります。

なぜ「物件から決める」と失敗するのか

物件を先に決める開業者は、典型的にこんな流れで進みます。

失敗パターン:物件起点の開業

  1. 「家賃は月○○万円まで」と予算の上限を決める
  2. 予算内で出せる物件を探す
  3. 見つかった物件の広さに合わせて、メニューや設備を「後付け」で決める
  4. 必要な機器が入らない、動線が非効率、回転率が上がらない
  5. 売上は出るのに利益が残らない構造が固定化する

この流れの最大の問題は、「器(物件)に合わせて中身(オペレーション)を妥協する」ことです。

たとえば、家賃を抑えるために10坪の物件を選んだ結果、必要な調理機器が入らず手作業が増え、スタッフの動線も狭くなり、提供スピードが落ちる。狭い店舗で無理にオペレーションを回そうとすると、回転効率が下がり、結果として家賃は安いのに利益が出ないという状態に陥ります。

逆に、「良い立地だから」と身の丈に合わない高い家賃の物件を選んでしまうケースも同様に危険です。いずれも物件が先、オペレーションが後という順序が問題の根本にあります。

専門家が教える「正しい開業の順序」

飲食店経営の支援に携わる専門家が推奨する開業ステップは、多くの方のイメージとは異なります。

成功する開業の3ステップ

  1. 数字のシミュレーション
    銀行や物件を見に行く前に、飲食店に詳しい専門家と一緒に事業の数字を徹底的に検証する。売上見込み・原価率・人件費・損益分岐点を明確にする
  2. オペレーションと設備の確定
    最小の人数で最大の回転率を出すために必要な「機器」と「動線」を先に設計する。何が必要で、どれくらいのスペースが要るかを確定させる
  3. 物件の選定(オペレーションからの逆算)
    確定したオペレーションが無理なく収まる物件を探す。広さ・形状・設備条件が先に決まっているので、物件選びの基準が明確になる

この順序のポイントは、物件の広さや家賃ありきではなく、「必要なオペレーション」から逆算して物件を決めることです。

「狭い物件=低コスト」の落とし穴

「家賃を抑えたい」という気持ちから、できるだけ狭い(=安い)物件を選ぶ方がいます。しかし、狭すぎる物件には大きなリスクがあります。

問題 経営への影響
必要な調理機器が置けない 手作業が増え、品質のバラつき・廃棄ロスが発生
厨房の動線が狭すぎる スタッフの動きが制限され、提供スピードが低下
客席数が足りない 回転率を上げても売上の上限が低い
在庫スペースがない 頻繁な仕入れが必要になり、配送コスト・手間が増加

重要なのは「広い・狭い」ではありません。必要なオペレーションを無理なく回せる広さかどうかです。オペレーションに必要な面積を先に確定させ、その面積で借りられるエリア・物件を探す。この順序を守れば、「狭すぎて効率が落ちる」「広すぎて家賃が重い」のどちらも避けられます。

なぜ「最初に専門家に相談する」のか

「まずは自分で調べて、ある程度固まってから相談しよう」。多くの開業希望者がそう考えます。しかし専門家は「何も決まっていない段階で来てほしい」と言います。

その理由は明確です。物件を決めてから相談に来ると、すでに「変えられない制約」が生まれています。物件の契約後であれば家賃は動かせず、内装工事が始まっていれば設備配置の自由度も限られます。制約がない状態だからこそ、最適な設計ができるのです。

「早すぎる相談」は存在しない

  • 自己資金が少なくても大丈夫 — 専門家と事業計画を練れば、自己資金が少なくても1,000万円以上の融資を受けた事例は多い
  • 業態が決まっていなくても大丈夫 — 数字のシミュレーションを通じて、最適な業態が見えてくることもある
  • 開業時期が未定でも大丈夫 — 準備期間の全体像が分かれば、逆算してスケジュールを組める

「最初から相談してくれれば助けられたのに」――専門家が最も悔しさを感じるのは、物件を決め、内装工事を終え、資金が底をつきかけた段階で初めて相談に来るケースです。その時点では、打てる手が極端に限られてしまいます。

相談先はどこ? 無料で使える支援機関

「専門家に相談」と言っても、いきなり高額なコンサルタントに依頼する必要はありません。無料で相談できる公的な支援機関があります。

飲食店に特化した専門家(飲食店コンサルタント)への相談は有料のケースが多いですが、開業前の初回相談を無料で受け付けている事業者もあります。まずは公的機関で基礎を固め、必要に応じて専門家の力を借りるのが効率的です。

まとめ

  • 物件を先に決めると、オペレーションを物件に合わせて妥協することになり、利益が出ない構造が固定化する
  • 正しい順序は「数字のシミュレーション → オペレーション・設備の確定 → 物件選定」
  • 狭すぎる物件は必要な機器が置けず回転効率が落ちる。広さではなく「必要なオペレーションが回せるか」で判断する
  • 何も決まっていない段階で専門家に相談するのがベスト。制約がないからこそ最適設計ができる
  • よろず支援拠点・商工会議所・日本政策金融公庫など、無料の相談先を活用する

この記事を書いた人

松田信介
松田 信介 Shinsuke Matsuda

X-HACK Inc. 代表取締役 / PARKLoT CTO

Microsoft for Startups Founders Hub 採択

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