DX推進補助金(デジタル化・AI導入補助金)2026年度完全ガイド
経済産業省・中小企業庁が所管する「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」は、中小企業・小規模事業者のデジタル化・AI活用による労働生産性向上を支援する制度です。2026年1月に名称が変更され、単なるITツール導入から「AI活用による省人化・省力化」へと重点がシフトしました。本記事では制度の全体像から申請の実務的なポイントまでを整理します。
制度概要と2026年度の主な変更点
デジタル化・AI導入補助金は、ITツール(ソフトウェア・クラウドサービス等)の導入費用を補助することで、中小企業・小規模事業者の業務効率化・DX推進を後押しする補助金です。所管は中小企業庁で、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)のもとに置かれた「中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局」が運営を担っています。
2026年1月23日に「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」へ名称変更が行われました。これに伴い制度の重点も変化しており、従来の業務デジタル化支援に加え、AI(人工知能)を活用した省人化・省力化が強力に推進されるようになっています。
また、2026年度にはものづくり補助金の「DX枠(デジタル枠)」が廃止され、「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」に統合されました。ものづくり補助金でのDX関連申請はこれらの枠で行うことになります。
2026年度の募集スケジュール(2026年6月13日時点)
募集開始:2026年3月30日(月)10:00〜1次締切(全枠共通):2026年5月12日(火)17:00【終了】
直近の締切(全枠共通):2026年6月15日(月)17:00(交付決定は2026年7月23日予定、事業実績報告期限は2027年1月29日17:00予定)
以降も複数回の締切が予定されています(3次締切は2026年7月21日17:00と報じられていますが、確定済みの募集回は公式スケジュールページで確認してください)。
対象者・申請要件
本補助金の対象は中小企業・小規模事業者等で、個人事業主も対象に含まれます。中小企業の規模要件は業種によって異なります。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
申請に際して、以下の事前準備が必要です。
- GビズIDプライムアカウントの取得(法人・個人事業主共通)
- SECURITY ACTION(情報セキュリティ自己宣言)の実施
- 補助額150万円以上を申請する場合は賃上げ計画の策定・従業員への表明が必須
- インボイス登録(未登録事業者は加点対象。ただし実績報告日までに登録完了が条件)
過去受給者の再申請要件が厳格化(2026年度新設)
IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者が再申請する場合、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画の策定・実行と効果報告が必須になりました。事業計画期間中は1人当たり給与支給総額(非常勤含む全従業員)の年平均成長率を3.5%以上とし、交付申請時点で賃金引上げ計画を従業員に表明することが要件です。GビズIDの取得には時間がかかる場合があります
GビズIDプライムアカウントの発行には、書類郵送後2〜3週間程度かかるケースがあります。募集開始後に取得手続きを始めると締切に間に合わない場合があるため、事前に取得しておくことが重要です。補助額・補助率・申請枠の比較
デジタル化・AI導入補助金には複数の申請枠があり、補助額・補助率・対象ツールがそれぞれ異なります。1者あたりの最大補助額は通常枠で450万円です。
| 申請枠 | 補助額 | 補助率 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠(1プロセス以上) | 5万円〜150万円未満 | 1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内) | 業務プロセス改善ITツール全般(AI搭載ツール含む) |
| 通常枠(4プロセス以上) | 150万円〜450万円以下(賃上げ要件必須) | 1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内) | 複数業務プロセス対応ツール |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | ITツールは上限350万円(PC等10万円・レジ等20万円) | ソフトウェアは2/3〜4/5以内(小規模事業者は高率側)、ハードウェアは1/2以内 | インボイス対応会計・受発注・決済ソフト |
| インボイス枠(電子取引類型) | 上限350万円 | 中小企業・小規模事業者2/3以内(その他1/2以内) | 受発注の電子取引システム |
| 複数社連携デジタル化・AI導入枠 | 最大3,000万円(グループ全体・参画事業者数等による) | 経費区分により異なる(基盤導入経費等は3/4以内、小規模事業者4/5以内) | 複数社が連携したデジタル化・AI導入 |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万円〜150万円 | 中小企業1/2以内・小規模事業者2/3以内 | サイバーセキュリティお助け隊サービス(利用料最大2年分) |
セキュリティ対策推進枠では、サイバーセキュリティ相談・監視・初動対応・簡易保険をワンパッケージで提供する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載サービスが補助対象です。
補助金は「後払い」方式
本補助金は交付決定後に事業を実施し、実績報告後に補助金が支払われる「後払い」方式です。一旦は自己資金で費用を立て替える必要があります。また、交付決定前に事業に着手した場合は補助対象外となるため、交付決定通知を受け取ってから発注・契約を行うことが必要です。採択率の実績データ
申請枠ごとの採択率には大きな差があります。過去の実績データを確認することで、戦略的な枠の選択が可能です。
| 申請枠 | 採択率(参考値) | 備考 |
|---|---|---|
| 通常枠(IT導入補助金2025) | 約30.4〜50.7% | 1次50.7%→2次41.1%→3次30.4%→最終6次35.5%と回を追って低下 |
| インボイス枠(インボイス対応類型・同上) | 約40.5〜57.6% | 1次57.6%→最終6次44.9%。通常枠より高めで推移 |
| 2025年最終回(6次)全体 | 約42.5% | 応募10,195者に対し採択4,334者(2025年12月11日発表) |
IT導入補助金2025の通年採択率は約43.8%(第三者集計)と、2024年度の約70%から大幅に低下しており、競争が激化しています。デジタル化・AI導入補助金2026の1次締切(2026年5月12日)分の採択結果は、交付決定予定日が2026年6月18日のため2026年6月13日時点で未発表です。
減点措置の対象となるケース
以下に該当する場合は審査上の減点措置が適用されます。・IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者
・デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠で申請中または交付決定済みの事業者(同一機能ツールは更なる減点)
・IT導入補助金2024または2025で交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと今回導入するプロセスが重複する場合(完全一致は不採択)
申請フロー
申請から補助金受取までの流れは以下の通りです。各ステップで必要な対応を事前に把握しておくことで、スムーズな手続きが可能です。
- 事前準備:GビズIDプライムアカウント取得、SECURITY ACTION宣言実施、(150万円以上申請の場合)賃上げ計画の策定・表明
- IT導入支援事業者の選定:公式サイト(it-shien.smrj.go.jp)掲載の登録支援事業者から選択。支援事業者と共同で申請作業を行う
- 申請書類の準備・提出:事業計画書、予算書、会社概要等を公募要領に基づき準備し、締切までに電子申請
- 採択・交付決定:審査後、採択通知→交付申請→交付決定の順で手続きが進む
- 事業実施:交付決定通知後にITツールの発注・導入を実施(交付決定前の着手は補助対象外)
- 実績報告:事業実績報告書と経費の証拠書類を期日までに提出
- 補助金受取:報告内容確認後、補助金が支払われる
交付決定前の着手は補助対象外
交付決定通知を受け取る前に契約・発注・支払い等を行った場合、その経費は補助対象外となります。採択通知と交付決定通知は別物であり、交付決定通知を受けてから事業に着手する必要があります。採択率を高める申請のポイント
事業計画書の質が採択・不採択の主要な決定要因です。審査では「DXによる事業変革」が重視されており、テクノロジー導入そのものではなく、それによって実現するビジネスモデルや業務プロセスの改善内容が評価されます。
具体的な数値目標の記載
「業務効率化を図る」といった抽象的な表現ではなく、「受注処理時間を40%削減」「顧客対応の平均時間を20分から5分に短縮」など、定量的な目標を設定します。経済産業省の審査データでは、具体的な数値目標を盛り込んだ申請は採択率が約30%上昇するとされています。
賃上げとの連動説明
2026年度は賃上げ要件・従業員処遇改善が採択条件に組み込まれる流れが強化されています。「ITツール導入によって生産性が向上し、その結果として賃金引上げが実現できる」という論理的な説明が求められます。
採択されにくい申請のパターン
- 汎用的な機器導入のみを目的とした申請
- 既存システムの単純バージョンアップ・更新
- 専門用語を多用した審査員に伝わりにくい記述
- 達成可能性が低い非現実的な目標設定
- 課題と導入ツールの関連性が不明確な計画
加点・補助率引き上げのポイント
・インボイス未登録事業者による申請(実績報告日までの登録完了が条件)・最低賃金近傍の事業者(地域別最低賃金+50円以内で雇用する従業員が30%以上等)は通常枠の補助率が2/3以内に引き上げ
・インボイス枠では小規模事業者のソフトウェア補助率が最大4/5
・このほかの加点項目は最新の公募要領で確認してください
関連する補助金・支援制度
DX推進に活用できる補助金・助成金はデジタル化・AI導入補助金だけではありません。事業の内容や規模に応じて、以下の制度との組み合わせや使い分けも検討できます。
| 制度名 | 所管 | 主な対象・特徴 | 補助上限 |
|---|---|---|---|
| ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠) | 中小企業庁 | 革新的製品・サービス開発、生産プロセス改善を伴う設備投資 | — |
| 中小企業省力化投資補助金 | 中小企業庁 | 人手不足解消のための省力化設備・システム導入 | — |
| 小規模事業者持続化補助金 | 中小企業庁 | 従業員5〜20名以下の販路開拓支援 | 通常50万円(最大250万円) |
| 人材開発支援助成金 | 厚生労働省 | DX・AI研修等の職業訓練実施事業主への助成 | 訓練経費・賃金の一部 |
| DXリスキリング助成金(東京都) | 東京しごと財団 | 都内事業者のDX職業訓練経費助成 | — |
| 東京都DX推進支援事業 | 東京都・東京都中小企業振興公社 | 専門アドバイザー派遣+デジタル技術導入費用助成 | 最大3,000万円 |
地方自治体独自の支援制度も充実しています。横浜市のデジタル化推進支援補助金、宮城県の中小企業等デジタル化支援事業、名古屋市の中小企業デジタル活用支援補助金など、各地域での支援制度と組み合わせることで自己負担をさらに軽減できる場合があります。
AI導入に使える補助金を横断比較したい場合はAI導入に使える補助金まとめ【2026年度最新】をご覧ください。ものづくり補助金との使い分けについてはAI導入補助金 vs IT導入補助金 vs ものづくり補助金【比較表付き】で解説しています。
まとめ:DX推進補助金活用の要点
- ・2026年1月に「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」へ名称変更。AI活用による省人化・省力化が新たな重点領域
- ・補助額は通常枠で最大450万円。補助率は基本1/2以内で、最低賃金近傍の事業者は2/3以内に引き上げ(インボイス枠の小規模事業者はソフトウェア最大4/5)
- ・IT導入補助金2025の通年採択率は約43.8%(第三者集計)。2024年度の約70%から大幅に低下しており、事業計画書の質がより重要に
- ・申請前にGビズIDプライムの取得(発行に2〜3週間)とSECURITY ACTION宣言が必須
- ・採択のカギは「課題→ツール→定量的効果」の論理的な事業計画書。「受注処理時間40%削減」などの具体的数値目標が採択率向上に効果的
- ・補助金は後払い方式。交付決定前の着手は補助対象外となるため、スケジュール管理が重要
- ・IT導入補助金2022〜2025の交付決定を受けた事業者の再申請には、3年間の事業計画策定と年平均3.5%以上の賃上げ・表明が必須
- ・インボイス未登録での申請(実績報告日までの登録前提)が加点対象
- ・直近の締切は2026年6月15日(月)17:00(全枠共通)。以降の締切は公式スケジュールページで確認のうえ、準備状況に合わせた申請回の選択が可能
参考情報
-
デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト(中小機構)
https://it-shien.smrj.go.jp/about/ -
中小企業庁 デジタル・IT化支援
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/gijut/index.html -
経済産業省関東経済産業局 DX支援
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/iot_robot/digital_dx/index.html -
IT導入支援事業者登録検索
https://it-shien.smrj.go.jp/ -
ミラサポplus(中小企業向け支援情報)
https://mirasapo-plus.go.jp/ -
東京しごと財団 DXリスキリング助成金
https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/skillup/skill-R7dx-risk.html - その他の補助金情報は 補助金ガイド一覧 からも確認できます。
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