AI導入補助金 vs IT導入補助金 vs ものづくり補助金 — 用途別おすすめ比較
AI導入を検討する中小企業にとって、「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」「ものづくり補助金」「新事業進出補助金」の3制度は最も利用頻度の高い選択肢です。なお、かつて大規模投資の定番だった事業再構築補助金は第13回公募で新規受付を終了し、後継的な位置づけの新事業進出補助金に引き継がれています(2026年6月時点)。補助率・対象経費・審査基準が大きく異なるため、どれを選ぶかで補助額や採択率が変わります。本記事では3制度を7つの観点で比較し、用途別のおすすめを解説します。
3制度の基本スペック比較
まず、3制度の基本スペックを一覧で比較します。なお、本記事では「デジタル化・AI導入補助金」を便宜上「AI導入補助金」と表記します。
| 比較項目 | AI導入補助金 | ものづくり補助金 | 新事業進出補助金 |
|---|---|---|---|
| 正式名称 | デジタル化・AI導入補助金 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 中小企業新事業進出補助金 |
| 所管 | 中小企業庁(中小機構) | 中小企業庁(中小機構) | 中小企業庁(中小機構) |
| 補助上限 | 最大450万円 | 最大2,500万円 大幅賃上げ特例で3,500万円 |
最大7,000万円 大幅賃上げ特例で9,000万円 |
| 補助率 | 1/2〜4/5 | 1/2〜2/3 | 1/2(大幅賃上げ特例で2/3) |
| 採択率 | 約35〜45% | 約37% | 約35% |
| 年間締切回数 | 年複数回(直近:2026年6月15日) | 第23次は受付終了(統合新制度へ移行予定) | 第4回(2026年6月19日締切)で単独公募終了予定 |
| 事業計画書の難易度 | 低〜中 | 中〜高 | 高 |
| 賃上げ要件 | 150万円以上の申請は必須(過去受給者の再申請も賃上げ計画必須) | 必須(1人あたり給与 年平均3.5%以上) | 必須(1人あたり給与 年平均3.5%以上、未達は返還義務あり) |
補助率4/5はAI導入補助金だけ
AI導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)では、小規模事業者のソフトウェア導入で補助率が最大4/5まで引き上げられます。他の2制度の最大補助率は2/3であり、少額投資で補助率を最大化したい場合はAI導入補助金が有利です。対象経費の違い
3制度で補助対象となる経費は大きく異なります。「何に投資するか」によって最適な制度が変わるため、この違いが制度選びの最も重要なポイントです。
| 経費区分 | AI導入補助金 | ものづくり補助金 | 新事業進出補助金 |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア購入費 | ○ | ○ | ○ |
| クラウドサービス利用料 | ○ 最大2年分 |
△ 条件付き |
○ |
| 機械装置・設備費 | × | ○ 主要対象 |
○ |
| 導入関連経費(設定・研修) | ○ | △ | ○ |
| 建物費(改修・新築) | × | × | ○ |
| 外注費・専門家経費 | × | ○ | ○ |
| 広告宣伝費 | × | × | ○ |
ポイント整理
- AI導入補助金: ソフトウェア・クラウド特化。ハードウェアは対象外。導入設定費やカスタマイズ費も補助される
- ものづくり補助金: 機械装置が主要対象。AI搭載の検査装置やロボットなどハードウェアを含む投資に強い
- 新事業進出補助金: 最も対象経費の幅が広い。建物費や広告宣伝費まで補助される。大規模な事業変革向き
AI導入補助金は「登録済みITツール」のみ対象
AI導入補助金で補助対象となるのは、事務局に登録済みのITツールのみです。独自開発のAIシステムやカタログ未登録のサービスは対象外のため、導入したいツールが登録されているか事前に確認してください。一方、ものづくり補助金・新事業進出補助金にはこの制限はありません。審査基準・採択率の比較
3制度は審査で重視されるポイントが異なります。それぞれの審査の特徴を理解し、申請する制度に合った事業計画書を準備しましょう。
AI導入補助金 — 採択率 約35〜45%
「ITツール導入による業務効率化・生産性向上」が審査の中心。具体的な数値目標(「処理時間を○○%削減」等)の記載が重視されます。前身のIT導入補助金2025では採択率が回を追って低下しており(通常枠の最終回は約35.5%)、以前ほど「通りやすい補助金」ではなくなっている点に注意が必要です。
有利な点: IT導入支援事業者が申請をサポートしてくれるため、初めての補助金申請でもハードルが低い。年複数回の締切があり、不採択でも再チャレンジしやすい。
ものづくり補助金 — 採択率 約37%
「革新的な製品・サービスの開発または生産プロセスの改善」が要件。技術の新規性・独自性と、それによる付加価値向上を説得力をもって示す必要があります。直近の第22次公募の採択率は約37.5%でした。
注意点: 賃上げ要件(1人あたり給与支給総額の年平均3.5%以上増加)が基本要件として必須。既存技術の単純導入では「革新性なし」と判断される可能性があるため、自社にとっての新規性・改善効果を具体的に記載する必要があります。
新事業進出補助金 — 採択率 約35%
「新事業進出指針」に該当する新規事業への進出が前提。付加価値額の年平均成長率4.0%以上、1人あたり給与の年平均3.5%以上増加、事業場内最低賃金(地域別最低賃金+30円以上)などの要件があり、賃上げ要件は未達の場合に返還義務があります。直近の採択率は第1回約37%・第2回約35%です。
注意点: 3制度中で最も審査が厳しく、事業計画書のボリュームも大きい。資金調達に関する金融機関要件もあるため、申請までの準備期間を多めに見積もること。
申請の手軽さ比較
「どの制度が申請しやすいか」も重要な判断材料です。特に初めて補助金を申請する場合、手続きの複雑さは制度選びに影響します。
| 項目 | AI導入補助金 | ものづくり補助金 | 新事業進出補助金 |
|---|---|---|---|
| 事業計画書の分量 | 数ページ程度 | 10〜15ページ | 15〜25ページ |
| 準備期間の目安 | 2〜4週間 | 1〜2ヶ月 | 2〜3ヶ月 |
| 申請サポート | IT導入支援事業者が伴走 | 自力(コンサル利用可) | 自力(金融機関との調整が必要な場合あり) |
| GビズID | 必須 | 必須 | 必須 |
| 実績報告の負担 | 中程度 | 高い | 高い |
| 総合的な手軽さ | 手軽 | 標準 | 負担大 |
用途別おすすめ制度
「何を導入するか」によって最適な制度は変わります。以下に典型的な導入パターン別のおすすめを整理しました。
AIチャットボット・顧客対応の自動化
クラウド型のAIチャットボットサービスや、AI搭載のCRM・問い合わせ管理システムの導入。
→ AI導入補助金がベスト
理由: ソフトウェア・クラウド特化で手続きが簡易。IT導入支援事業者のサポートも受けられる。
AI-OCR・帳票処理の自動化
請求書・領収書の自動読取、経理業務のAI自動化ツール導入。
→ AI導入補助金がベスト
理由: 登録済みITツールが豊富。インボイス枠との組み合わせも可能。
AI外観検査・品質管理システム
製造ラインへのAIカメラ・画像認識システムの設置。ハードウェア(カメラ・センサー)とソフトウェアの両方が必要。
→ ものづくり補助金がベスト
理由: 機械装置費が主要対象。設備投資を含む場合、AI導入補助金では対象外になる経費もカバーできる。
AIロボット・製造ラインの自動化
AI搭載の協働ロボット、自動搬送装置(AGV/AMR)の導入。
→ ものづくり補助金がベスト
理由: 高額な設備投資に対応(従業員規模に応じて最大2,500万円)。「革新的な生産プロセスの改善」として審査でも評価されやすい。
AIを活用した新規事業の立ち上げ
AI技術を活用した新サービス開発、既存事業からAI関連ビジネスへの進出。
→ 新事業進出補助金がベスト
理由: 最大7,000万円の補助上限。設備・システム・建物・広告まで幅広い経費が対象。新事業進出の要件に合致しやすい。第4回公募は2026年6月19日締切。
AI需要予測・在庫最適化
小売・飲食業でのAI需要予測ツール、自動発注システムの導入。
→ AI導入補助金がベスト(クラウド型の場合)
理由: SaaS型の需要予測ツールであればAI導入補助金で十分。ハードウェア(POS連携機器等)も必要な場合はものづくり補助金を検討。
併用戦略
対象経費が異なれば、複数の補助金を併用して自己負担を最小化できる場合があります。ただし、同一経費への重複受給は禁止されているため、経費の区分けが重要です。
有効な併用パターン
パターン1: AI導入補助金 + ものづくり補助金
AI搭載設備(ハード)→ ものづくり補助金、運用するクラウドサービス(ソフト)→ AI導入補助金
パターン2: AI導入補助金 + 人材開発支援助成金
AIツール導入費 → AI導入補助金、従業員のAI研修費 → 人材開発支援助成金
パターン3: ものづくり補助金 + 自治体独自補助金
AI設備投資 → ものづくり補助金、追加のDX推進経費 → 都道府県のDX支援制度
併用時の注意
・同一経費に対する重複受給は不正受給となります・補助金ごとに「他の補助金との併用不可」の規定がある場合があります
・併用する場合は必ず各制度の公募要領を確認し、経費の明確な区分けを行ってください
・詳しくはIT導入 × ものづくり補助金の併用戦略をご覧ください
よくある質問
Q. AI導入補助金とIT導入補助金は別の制度ですか?
いいえ、同じ制度です。2026年1月に「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されました。本記事では便宜上「AI導入補助金」と略称しています。
Q. 3つの補助金を併用できますか?
同一経費への重複受給は不可ですが、対象経費が異なれば併用可能です。例えばAI搭載設備をものづくり補助金で、運用するクラウドサービスをAI導入補助金で申請する組み合わせが考えられます。
Q. 初めての補助金申請にはどれがおすすめですか?
AI導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)がおすすめです。IT導入支援事業者が申請をサポートしてくれるため、初めてでも比較的スムーズに申請できます。採択率は直近の実績で約35〜45%です。
Q. ソフトウェアとハードウェアの両方を導入したい場合は?
ものづくり補助金であればソフトウェアとハードウェアの両方を対象経費に含められます。あるいは、ハードウェアをものづくり補助金で、ソフトウェアをAI導入補助金で申請する併用戦略も有効です。
まとめ:3制度の選び方
- ・AIソフト・クラウドサービスの導入 → AI導入補助金(手軽・サポート付き・最大450万円)
- ・AI搭載の設備・機械の導入 → ものづくり補助金(ハード対応・最大2,500万円)
- ・AIで新規事業を立ち上げ → 新事業進出補助金(大規模投資・最大7,000万円。事業再構築補助金の後継)
- ・初めての補助金申請ならAI導入補助金から。IT導入支援事業者が伴走してくれる
- ・対象経費が異なれば併用も可能。ハード×ソフトで制度を分けて補助額を最大化
- ・どの制度もGビズIDプライムが必須。発行に2〜3週間かかるため早めに準備を
- ・迷ったらAI導入に使える補助金まとめで5制度を横断比較してください
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