ナフサ危機から1ヶ月、代替調達は倍増も値上げラッシュは加速——中小企業が今すべき3つのこと
2026年4月のTOTOユニットバス受注停止から約1ヶ月。出光丸のホルムズ海峡通過、非中東ナフサ調達の倍増など、供給不安が和らぐ兆しが見え始めています。しかし、ポリエチレンは3割超の値上げ、包装資材コストの上昇が食品値上げに波及し、帝国データバンクは「6月以降、値上げラッシュ再燃」を警告。供給は戻りつつあるが、コスト高は加速する——この「ねじれ」に中小企業はどう対応すべきか、最新データとともに整理します。
この1ヶ月で変わったこと
ホルムズ海峡危機が表面化した3月末から約1ヶ月。政府・企業の対応により、「量」の確保は進みつつあります。
TOTO、4月20日から受注を段階的に再開
4月13日にシステムバス・ユニットバスの全シリーズで新規受注を停止したTOTOは、4月20日から段階的に受注を再開しました。経産省の働きかけにより、素材在庫のある製品から順次出荷する体制に切り替えています。ただし、納期は通常より遅延しており、全製品が正常化したわけではありません。
出光丸がホルムズ海峡を通過
4月28〜29日、日本関連の大型タンカー「IDEMITSU MARU」がイラン当局の許可を得てホルムズ海峡を通過しました。サウジアラビア産原油200万バレルを積載し、名古屋港へ向かっています。2月28日の米イスラエル軍事作戦以降、日本向けタンカーが直接海峡を通過したのは初めてです。
非中東ナフサの調達を倍増
三井化学や三菱ケミカルなどの化学メーカーは、米国やアジアからの代替調達を加速。非中東産ナフサの到着量は約45万kl/月から約90万kl/月へ倍増する見通しです。高市首相は4月30日、「川中製品在庫を活用できる期間を半年以上に延伸した」「ナフサ由来の化学製品の供給は、年を越えて継続できる見込み」と発表しました。
| 項目 | 4月上旬 | 5月現在 |
|---|---|---|
| TOTO受注 | 全面停止 | 段階的に再開(納期遅延あり) |
| ホルムズ海峡通航 | 日量8.4隻(平時109.3隻) | 一部通航再開(出光丸通過) |
| 非中東ナフサ調達 | 約45万kl/月 | 約90万kl/月(倍増) |
| 国内在庫見通し | 2〜3週間分 | 半年以上継続可能 |
変わっていないこと——値上げラッシュの加速
供給不安が和らぐ一方で、コスト高は解消していません。むしろ、この1ヶ月で値上げの波はさらに広がっています。
ポリエチレン 3割超の値上げ
旭化成は3月31日、ポリエチレン全製品について1kgあたり120円以上の値上げを発表。5月下旬からは3割超の値上げが本格化します。発泡ポリスチレンシート(食品トレー原料)も4月下旬出荷分から同額の値上げです。
包装資材コスト、7割の食品値上げに影響
帝国データバンクの調査によると、2026年5月の飲食料品値上げは70品目にとどまりましたが、値上げ要因として「包装・資材」を挙げた企業は69.9%に達し、2023年以降の最高ペースで推移しています。TOPPANホールディングスも4月21日以降、食品・日用品メーカーに包装材の値上げを打診しており、仕入れ値は2〜3割増となっています。
6月以降、値上げラッシュ再燃の見通し
帝国データバンクは「早ければ今夏中、遅くとも秋ごろに広範囲な値上げラッシュ再燃の可能性が高い」と警告しています。ナフサ不足の影響は原料→樹脂→包装材→食品の順に川下へ波及するため、タイムラグを伴って消費者・中小事業者に到達します。
注意:代替調達は進んでいますが、喜望峰ルート経由では輸送日数が+14日、燃料コストは1.5倍に。量は確保できても、価格は元に戻りません。「供給回復=値段が下がる」ではない点に注意が必要です。
代替ナフサの成分問題
Bloombergの報道によれば、米国やアジアから調達するナフサは中東産と成分が異なり、既存のナフサ分解装置に最適化されていない場合があります。量は確保できても、特定の石油化学製品の生産には制約が残る「目詰まり」が続いています。
家計と中小企業への影響
野村総合研究所(NRI)の試算では、ナフサ由来の日用品値上げによる家計負担の増加は年間1.8〜2.6万円程度と見込まれています。中小企業にとっては、さらに深刻です。
| 影響を受ける業種 | 具体的な影響 | コスト増の目安 |
|---|---|---|
| 食品製造・加工 | 包装資材(トレー・フィルム)の値上げ | 仕入れ値2〜3割増 |
| 飲食店 | テイクアウト容器・ラップ・手袋の値上げ | 月数千〜数万円増 |
| 建設・リフォーム | 断熱材・塩ビ管・接着剤・塗料の値上げ・納期遅延 | 資材費1〜3割増 |
| 小売・EC | 梱包資材(段ボール内貼り・緩衝材)の値上げ | 1出荷あたり数円〜数十円増 |
| 製造業全般 | 樹脂部品・合成ゴム・溶剤の調達困難 | 原料費3割以上増 |
中小企業が今すべき3つのアクション
1. 仕入れ先との価格交渉を先手で行う
値上げは6月以降に本格化する見通しです。「通知が来てから対応する」のではなく、今のうちに主要仕入れ先との価格交渉や代替品の検討を始めてください。包装資材であれば、紙製容器やバイオプラスチックへの切り替えもコスト次第では選択肢になります。
2. 価格転嫁の準備をする
原材料コストの上昇分を自社で吸収し続けることは困難です。政府の「価格転嫁対策パッケージ」では、公正取引委員会が価格転嫁を拒否する発注企業への指導を強化しています。自社の原価構成を数字で示し、取引先に対して根拠のある価格改定の提案ができるよう準備しましょう。
3. 補助金を活用して省力化・省エネ投資
コスト増に対して、補助金を活用した設備投資で中長期的なコスト構造を改善する手もあります。包装ラインの自動化、省エネ設備の導入、ITによる在庫管理の効率化は、いずれも対象となりうる投資です。
活用できる補助金・支援策
| 制度名 | 補助上限 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 省力化投資補助金 | 最大1,500万円 | 包装ラインの自動化、省人化設備の導入 |
| ものづくり補助金 | 最大3,500万円 | 代替素材を使った製品開発、設備更新 |
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 最大450万円 | 在庫管理・発注最適化のシステム導入 |
| 省エネ補助金 | 最大1億円 | 高効率空調・LED照明でエネルギーコスト削減 |
| 持続化補助金 | 最大250万円 | 新たな販路開拓、価格改定に伴う販促 |
まとめ
- ✓ 供給面は改善傾向——TOTO受注再開、非中東ナフサ調達倍増、出光丸がホルムズ海峡通過
- ✓ しかし値上げは加速——ポリエチレン3割高、包装資材値上げが食品価格に波及、6月以降に本格化
- ✓ 代替ルートの輸送コスト増(+14日・燃料1.5倍)と成分不適合の問題は未解決
- ✓ 中小企業は「仕入れ先との先手交渉」「価格転嫁の準備」「補助金を活用した省力化投資」の3点を今すぐ着手
- ✓ 帝国データバンクは「早ければ今夏、遅くとも秋に広範囲な値上げラッシュ再燃」を警告——先回りの対策が不可欠
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