ソフトウェア業の「小規模事業者」は従業員5人以下|ものづくり補助金で見落としやすい業種分類の落とし穴
「うちはIT企業だから、小規模事業者の基準は従業員20人以下だろう」——そう思っていませんか? 実は、ものづくり補助金ではソフトウェア業は「サービス業」に分類され、小規模事業者の基準は従業員5人以下です。この判定を誤ると、補助率が2/3から1/2に変わります。第23次公募要領(2026年2月6日公表、公募期間〜5月8日)をもとに、正しい判定方法を解説します。
なぜ「20人以下」と誤解しやすいのか
誤解の原因は、公募要領本文の定義表にあります。小規模企業者・小規模事業者の定義は、以下の3区分だけで記載されています。
| 製造業、その他 | 常時使用する従業員 20人以下 |
|---|---|
| 商業・サービス業 | 常時使用する従業員 5人以下 |
| 宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員 20人以下 |
この表に「ソフトウェア業」の行はありません。一方、同じ公募要領の中小企業者の定義表には「ソフトウェア業又は情報処理サービス業」が製造業と同水準(資本金3億円以下・従業員300人以下)で別枠記載されています。
ここが落とし穴です。中小企業者の定義では製造業並みの扱いを受けるため、「小規模事業者も製造業その他=20人以下だろう」と思い込みやすいのです。しかし実際の分類は異なります。
別紙2が答えを持っている
公募要領の脚注(※5)は、「業種については日本標準産業分類第14回改訂に伴う中小企業の範囲の取扱いに準拠します。別紙2も併せてご参照ください」と記載しています。
この別紙2(業種分類について)が決定的な資料です。小規模企業者の定義について、日本標準産業分類の中分類レベルで業種を明示的にマッピングしています。
- 「サービス業(5人以下)」の欄 — 大分類G(情報通信業)のうち、中分類39「情報サービス業」が明記
- ソフトウェア業(受託開発、組込み、パッケージ等)は中分類39に属する
- したがって「商業・サービス業」区分=従業員5人以下が適用される
ただし、情報通信業(大分類G)のすべてがサービス業に分類されるわけではありません。
| 情報サービス業(中分類39) | サービス業 → 5人以下 |
|---|---|
| 通信業(中分類37) | 製造業その他 → 20人以下 |
| インターネット附随サービス業(中分類40) | 製造業その他 → 20人以下 |
同じ「情報通信業」の中でも中分類によって扱いが異なります。自社がどの中分類に該当するかの確認が必要です。
なぜこのような「ねじれ」が生じているのか
この制度上の矛盾には、歴史的な経緯があります。
中小企業基本法が制定された1963年当時、「ソフトウェア業」は事実上存在しませんでした。情報サービス業は旧日本標準産業分類の大分類L「サービス業」に含まれており、「サービス業=5人以下」という基準はその時代に設定されたものです。
その後、2002年の第11回改訂で情報サービス業は新設された大分類G「情報通信業」に移動されました。しかし中小企業庁は「中小企業政策における中小企業者の範囲については見直さず、従前のとおり取り扱う」と通知。産業分類上は「情報通信業」に移動しても、中小企業基本法上は引き続き「サービス業」として扱われることになりました。
一方、中小企業者の定義については中小企業等経営強化法の政令による特例が設けられ、「ソフトウェア業・情報処理サービス業」は資本金3億円以下・従業員300人以下に拡大されました。しかしこの特例は小規模事業者の定義には適用されていません。
つまり、中小企業者としては製造業並みの特例を受けるのに、小規模事業者の判定ではサービス業のままという二重構造が半世紀以上続いているのです。
「5人以下」は実態に合っているのか
率直に言えば、この基準は現代のソフトウェア業の実態と大きくかけ離れています。
小売業で従業員5人といえば、町の個人商店のイメージです。一方、ソフトウェア開発会社の従業員5人は、年間売上が1億円を超えることも珍しくありません。エンジニア1人あたりの年間売上が1,500万円以上という業界で、小売店と同じ基準で「小規模かどうか」を判定するのは、会社の規模感・資本力・競争環境がまったく異なるものを同一の尺度で測っている状態です。
この問題は補助金実務の現場でも長年指摘されてきました。IT企業が補助金申請時に業種区分で不利になるケースが繰り返し問題になっていますが、制度改正には至っていないのが現状です。
ただし、現行制度で申請する以上、「おかしいから20人以下で計算する」というわけにはいきません。公募要領の別紙2に基づいて正しく判定する必要があります。
補助率への影響と実務上の注意点
この業種分類は、ものづくり補助金の補助率に直結します。
| 小規模事業者(5人以下) | 補助率 2/3 |
|---|---|
| 中小企業者(6人以上) | 補助率 1/2 |
たとえば補助対象経費が1,000万円の場合、小規模事業者なら約667万円、中小企業者なら500万円と、約167万円の差が出ます。
申請時に押さえるべきポイントは以下の通りです。
- ソフトウェア業で補助率2/3を受けるには従業員5人以下が必要 — 6人以上20人以下の会社は小規模事業者に該当せず、補助率は1/2
- 採択後も基準は適用される — 交付決定前や補助事業実施期間中に5人を超えた場合、補助率は1/2に変更
- 「常時使用する従業員」の範囲 — 日雇労働者、2か月以内の期間雇用者、試用期間中の者、役員は含まれない
- 中小企業者の資格と小規模事業者の判定は別基準 — 申請資格(資本金3億円以下または従業員300人以下)と小規模判定(5人以下)を混同しないこと
まとめ
- ソフトウェア業(中分類39・情報サービス業)は「サービス業」に分類 — 小規模事業者の基準は従業員5人以下
- 「情報通信業だから20人以下」は誤り — 公募要領の別紙2で明確に区分されている
- 中小企業者としては特例扱い(300人以下) — しかし小規模事業者の定義にはこの特例が適用されない
- 補助率に直結 — 小規模事業者(5人以下)は2/3、それ以外の中小企業者は1/2
ネット上では「IT業=製造業その他=20人以下」という情報も散見されますが、公式の業種分類表とは整合しません。ものづくり補助金の申請にあたっては、必ず公募要領の別紙2を確認し、自社の業種区分を正しく把握したうえで補助率の判定を行いましょう。
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