事業承継・M&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金)完全ガイド
事業承継・M&A補助金(旧称:事業承継・引継ぎ補助金)は、中小企業・小規模事業者が事業承継やM&Aに際して行う設備投資・専門家活用・経営統合等の費用を国が補助する制度です。経済産業省・中小企業庁が所管し、令和6年度補正予算より名称変更と制度再編が行われました。本記事では、4つの支援枠の概要・補助額・申請要件・採択率データ・注意点を第14次公募(2026年2月27日〜4月3日)の最新情報をもとに解説します。
制度の概要と背景
日本の中小企業では経営者の高齢化と後継者不足が深刻な問題となっており、中小企業庁の資料によると2025年時点で経営者が70歳以上の中小企業は約245万社にのぼり、そのうち約127万社で後継者が未定とされています。優れた技術・サービスを持ちながら後継者不足を理由に廃業する「黒字廃業」を防ぎ、経営資源を次世代へ引き継ぐことを目的として本補助金が設けられています。
令和7年度(令和6年度補正)より名称が「事業承継・引継ぎ補助金」から「事業承継・M&A補助金」に変更され、第12次公募(2025年8月)から現行の4枠構成に再編されました。申請はすべて電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」経由で行い、利用にはgBizIDプライムアカウントが必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 事業承継・M&A補助金(旧:事業承継・引継ぎ補助金) |
| 管轄省庁 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 位置づけ | 中小企業生産性革命推進事業の一つ |
| 申請方式 | 電子申請(jGrants)のみ |
| 現行の枠構成 | 事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業・再チャレンジ枠 |
対象となる事業者
中小企業基本法第2条に準じた中小企業者等が対象です。主要業種ごとの基準は以下のとおりで、資本金・従業員数のいずれか一方を満たすことが条件です。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
対象外となる主なケース
- 発行済株式の2分の1以上を同一の大企業が保有する「みなし大企業」
- 公募申請時点で個人事業の開業届・青色申告承認申請書の提出から5年未満の個人事業主
- 公募申請時点で3期分の決算・申告が完了していない法人
- 公序良俗に反する事業や社会通念上不適切と判断される事業
4つの支援枠の内容
① 事業承継促進枠
5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している事業者が対象で、設備投資・店舗改築工事等の費用を補助します。現経営者と後継者が共同で作成した「事業承継計画書」の提出が必須です。一定の賃上げ(事業場内最低賃金を申請時比+50円以上引き上げ)を実施する場合、補助上限額が800万円から1,000万円に引き上げられます。
② 専門家活用枠
M&Aによる経営資源の譲渡(売り手)または譲受(買い手)を行う事業者を対象とした枠で、FA・仲介業者等の専門家費用を補助します。補助対象となる専門家は「M&A支援機関登録制度」に登録された機関に限られます。買い手支援類型では通常最大800万円(一定要件を満たす場合は最大2,000万円)、売り手支援類型では最大800万円が上限です。
③ PMI推進枠
PMI(Post Merger Integration)とはM&A成立後の経営・業務・企業文化等の統合作業を指します。M&Aのクロージング日から1年以内にPMIに取り組む買い手企業が対象で、「専門家活用類型」と「事業統合投資類型」の2類型で構成されます。第12次公募から新設された枠です。
④ 廃業・再チャレンジ枠
M&Aによる事業譲渡が成立しなかった事業者が既存事業を廃業し、新たな事業活動や社会貢献等に挑戦する場合の費用を最大150万円補助します。他の3枠との併用申請が可能です。
補助上限額・補助率一覧(第14次公募)
| 枠・類型 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 最大800万円(賃上げ要件達成で最大1,000万円) | 中小企業1/2、小規模2/3 |
| 専門家活用枠(買い手) | 最大800万円(100億企業要件で最大2,000万円) | 通常2/3(特例適用部分は1/2〜1/3) |
| 専門家活用枠(売り手) | 最大800万円 | 原則1/2(赤字等の場合2/3) |
| PMI推進枠 | 類型により異なる | 1/2〜2/3 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 最大150万円 | 1/2〜2/3 |
※補助金は後払い(精算払い)のため、一時的に全額を自己負担してから申請・精算する仕組みです。
申請の流れ
-
gBizIDプライムアカウントの取得(公募開始の2〜3週間前まで)
電子申請システム「jGrants」の利用に必須。アカウント発行には通常2週間以上かかるため、公募開始を待たず早期に手続きを開始する必要があります。 -
申請書類の準備
事業計画書の作成、補助対象経費の見積書(原則2者以上から取得)、決算書・確定申告書等の整備。事業承継促進枠では「事業承継計画書」、専門家活用枠では登録M&A支援機関との契約書類も必要です。 -
jGrantsで電子申請
申請期間内にjGrantsへログインし、必要書類一式をアップロードして提出します。 -
審査・採択発表
事務局および審査委員会が書類審査を行い、採否を全申請者に通知します。 -
交付決定後に事業実施(契約・発注)
交付決定通知を受け取る前の契約・支払いは補助対象外となります。第14次公募では事前着手制度が原則廃止されているため、この点は特に注意が必要です。 -
実績報告・補助金交付
補助事業完了後15日以内(または事務局指定期限内)に実績報告書を提出。書類検査・実地検査を経て補助額が確定し、精算払いで補助金が交付されます。
第14次公募スケジュール
| フェーズ | 時期 |
|---|---|
| 公募申請期間 | 2026年2月27日(金)〜2026年4月3日(金)17:00 |
| 採択発表 | 2026年5月中旬(予定) |
| 交付決定 | 2026年6月上旬以降 |
| 事業実施期間 | 交付決定日〜2027年6月上旬 |
| 補助金交付(順次) | 2027年1月下旬以降 |
直近の採択実績
直近3回の採択実績は以下のとおりです。全体の採択率はおおむね60〜61%で安定して推移しています。
| 公募回 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 第11次(専門家活用枠のみ) | 590件 | 359件 | 約60.8% |
| 第12次(全4枠) | 742件 | 453件 | 約61.1% |
| 第13次(全4枠) | 481件 | 293件 | 約60.9% |
※第12次公募の内訳:事業承継促進枠 152件採択/専門家活用枠 266件採択/PMI推進枠 34件採択/廃業・再チャレンジ枠 1件採択。採択率は全体を通じて安定していますが、書類不備や要件不適合による不採択も一定数発生しています。
採択に向けた主なポイントと注意事項
採択に向けたポイント
- gBizIDプライムの早期取得:発行に2週間以上かかるため、公募開始を待たず手続きを開始する必要があります。
- 事業計画書の具体性:現実的な数値・データに基づき、地域貢献・雇用維持といった社会的意義を明示することが重要視されます。見栄えを優先した過大な計画は審査でマイナス評価になります。
- 加点事由の積極活用:くるみん認定・健康経営優良法人の認定・サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用・賃上げ表明(事業場内最低賃金+30円以上)などが加点対象です。
- 相見積の取得:補助対象経費については原則2者以上から見積を取得する必要があります。
- 登録M&A支援機関の確認(専門家活用枠):補助対象となる専門家費用は「M&A支援機関登録制度」登録業者へ支払うものに限られます。事前に登録状況を確認してください。
主な注意事項・よくある失敗
- 交付決定前の契約・支払いは補助対象外:第14次公募では事前着手制度が原則廃止されています。採択後・交付決定通知受領後に契約・発注を行う必要があります。
- 枠の選択ミス:自社の状況に合わない枠で申請すると対象外と判断されます。親族内承継か第三者承継(M&A)か、売り手か買い手かを正確に確認してください。
- 書類不備:必要書類の添付漏れや様式の誤りは不採択の直接的な原因となります。公募要領に記載された提出書類チェックリストを必ず確認してください。
- 妥当性のない経費計上:補助上限額に合わせて必要性の低い経費を積み上げた申請は審査で否定的に評価されます。
関連する支援制度・税制
事業承継・M&A補助金と合わせて活用できる主な支援制度・税制は以下のとおりです。
| 支援策 | 内容 |
|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 全国47都道府県設置。親族内承継・M&Aマッチング・事業承継計画書作成支援等を原則無料で提供 |
| M&A支援機関登録制度 | 補助対象となるFA・仲介業者を検索可能。専門家活用枠の利用時に必須 |
| 事業承継税制(法人・個人版) | 法人版:株式に係る贈与税・相続税がゼロ。個人版:事業用資産に係る贈与税・相続税がゼロ |
| 経営力向上計画(M&A税制) | 株式取得によるM&A実施時に取得価額の一定割合を準備金として損金算入可能(令和9年3月31日まで) |
| 経営者保証解除の支援 | 事業承継時の経営者保証なし承継を促進するための総合的対策 |
まとめ
- 事業承継・M&A補助金は令和6年度補正より名称変更・4枠へ再編。補助上限は最大2,000万円(専門家活用枠・特例時)。
- 直近3回の採択率は60〜61%で推移。書類不備・要件不適合を排除した上での丁寧な準備が採択への近道。
- 第14次公募の申請締め切りは2026年4月3日(金)17:00。gBizIDプライム未取得の場合は取得に2週間以上かかるため即時対応が必要。
- 第14次公募より事前着手制度が原則廃止。交付決定前の契約・支払いは補助対象外。
- 専門家活用枠を利用する場合、M&A支援機関登録制度への登録業者であることを事前に確認する必要あり。
- 廃業・再チャレンジ枠(最大150万円)は他の3枠と併用申請が可能。
参考情報
- 事業承継・M&A補助金 公式サイト(令和7年度): https://shoukei-mahojokin.go.jp/r7h/
- 中小企業庁 第14次公募 公募要領: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260130001.html
- 中小企業庁 事業承継の支援策: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/business_succession_support_measures.html
- 中小機構 補助金活用ナビ「事業承継・引継ぎ補助金」: https://seisansei.smrj.go.jp/subsidy_guide/subsidy_info/succession_subsidy.html
- ミラサポplus「中小企業庁担当者に聞く」: https://mirasapo-plus.go.jp/hint/29717/
※本記事は2026年3月時点の情報に基づいています。補助金制度は随時変更されるため、申請にあたっては必ず最新の公募要領および公式サイトをご確認ください。
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